とりあえずアルミナ多孔質のフランジ付きのるつぼをご紹介。
焼造物で言う多孔質というのはシッカリ強度が出るように焼成していながらまだかなりの気孔率、吸水率がある状態のことです。つまり水(液体)が浸みちゃったり漏れちゃったりするわけです。
るつぼん中で溶かした金属溶湯も浸みちゃうんじゃねえの?という心配ですが、その金属の表面張力の関係で基本的には心配ありません。もちろんサラッサラになるようなものだと使えないこともあります。
と、ここで急遽ヤキモノ屋言葉シリーズ。
ヤキモノ屋(工業的、理化学的、伝統的問わず)の口にする言葉の中に「締まる」という頻出ワードがあります。もちろん、能動的な「締める」も含んで。
よく締まってる、よく締めて、締まってない、みたいな感じ。特に窯出しの後なんかは本当によく口にします。締まり過ぎ!というのもあるのがまた厄介で・・・。
「アマイ」とか「ユルイ」が反対語かな(ちがうかも)?別にこれは栃ノ心のマワシの話じゃないですからね。
このへん、単に日本語としても和言葉でものすごく基本ワードなところからも察せられるように、あんまり具体的な言葉じゃない気がします。
おそらく大きく二つの意味があると考えてるんですよね。
『締まる』これ皆さん(本職アマチュア問いません)どういう意味で使ってますか?
この辺意識してもしなくても、そんなにやること変わったり致命的な影響出るわけじゃないんですが、ちょっと整理してみたいとおもいます。
1・十分に密度が上がってる(高い)、上げる(高める)こと
成形密度の場合も焼成体の密度の場合も両方あるんですが、この意味で一番多くつかわれると思われます。
つまり、自分の想定通りに気孔率、吸水率が低い、という場合かな。
この場合の「密度」は嵩比重と言い換えてもいいですよね。
2・強度が高い、高めること。
こっちも、成形強度と焼結強度、両方あるんじゃないかと。どっちも程度はあるものの、生ならちょっとぶつけたぐらいで簡単に欠けたりせず、焼いたもんなら思った通り(あるいは以上に)にしっかり強く焼結してる状態。とりあえず以下略。
この場合、反対語には特に「サクイ」ってのが入ってくるかも?サクイってのは俺の個人の思い込みかも知れませんが、「サクサクしてる」って表現の変化形ではないかと。単に弱いってだけじゃなくて、なんつうんでしょうね?ウエハース感というか…。
「サクイ」ももしかしたらそのうちやります(笑
窯出ししました~モノ手に取って~「よく締まってるね~」
よくある光景だと思うんですが、どっちの意味で言ってるの?みたいな。
もちろんたーだ話す場合は二ついっぺんでいいわけですけど・・・
また、『焼き締まらない土』みたいな表現をしますが、これは『サチるまで焼いても密度の上がらない土(吸水しちゃうような)』であるとともに『難焼結性でしっかり固くくっつかない土』の場合もありそう。
両方の特性を兼ね備えた場合もありますし(いわゆる道具土とか志野とか萩とか用のパサパサ系、それこそサクイ土とか)、片一方しか当てはまらない場合もあります。こっちは陶磁器系でもありそうですが一般化しにくいなあ。例えば今回紹介した多孔質るつぼや高SKの発泡耐火レンガとかはガッチリ焼結してるのに気孔率数10%ですし、窒化硼素やなんかは水も漏らさないけど簡単に削ったり折ったりできます。
で、その言葉使ってる本人の頭の中では区分して話してるつもりでも会話してる二人の間(特に先生と生徒やベテランとルーキー)の間では・・・
A・齟齬る、
あるいは
B・齟齬ってることに気づかない、
ややもすると
C・そもそも具体的に意識してるわけでないので齟齬りようがない、
なんて状態になったりならなかったりしがちかも。
『締まる』
大きくこの二つの意味があるんじゃないかと思っています。
で、ここからが個人的に常々思ってる疑問。成型時の1=密度を上げる、に関することで…
3・その『締める』本当に「密度」が上がってるんですか?問題
というのがあります。
『締める』問題は、ロクロ成形の際によく使われる『締める』について。
口元締めろ!とか、底をよ~く締めろ!みたいな。
あれって本当に該当部位の密度を上げてるんですかね?
違うんじゃね?何十年も同じこと言ってバカなの?とか言いたいわけじゃ全然ないです。純粋に知りたい!!
特に、山から次々切り離す連続式?(この用語もわかんないので教えてください)の場合における見込みの底!
型に詰めてるわけでもなく、押し込んだ向こう側に壁もないのに密度なんてそんなに差があるほどあがんのかな?そりゃ多少は違うのかもしんないけど土が動いてるだけの感触しかねえし。
もちろん土の種類や状態(特に水分含有量かな?)で全然違うとは思うんだけども…
昔実験的に試したことはあるんですが、比重的に有意と思えるほどの差は見つけられなかったんですよ。でも何回もしっかり『(締める)カッコつき』をすると、S字型の切れが出にくかったりと、ハッキリ違うっぽいのが体験的には正しいじゃないですか?この辺、因果関係はわかってる気がするけど理論的納得ができないというか…俺が下手でバカなだけかもしれんけど。
これは問題意識の当事者が一人で実験したところで「サクイ」(さっきのとは違う意味)が無意識に発露しやすいと見えて難しいです。
被験者には具体的な目的は不明なハーフブラインドテストをやってみたいので。
クループ活動してる方、教室で生徒や受講生を抱えてらっしゃる先生方に是非実験をお願いしたいです!!
実験方法は簡単に
実験の手順
1・底だけにそこそこ以上にうまい方にそこの広めのお鉢や皿を作ってもらう。いつものように(そこは意識して『締める』はず)複数挽いてもらう。
2・そこそこまではいってない方に同じサイズ感で同じ形状のものを作ってもらう。これもできれば複数。
3・1と同じ方に「底に手をかけない(締めてないように)で」作ってもらう。
4・2と同じ方にもう一回作ってもらいますが、「より締めるを意識して」でもいいし「もっと底の締めは手を抜いて整えるだけ」でもどっちか。2の手つきから判断して指示してみてください。
5・その場の雰囲気に応じて3,4の逆もやってもらう
以上製作工程終了ですが、物自体がうまく出来てる必要はないです。どうせこの後ぶった切りますから。
6・ある程度乾燥させたら、とりあえず先に謝る。特に上手にできちゃってた場合はとにかく謝る。向こうも何が何だかわからないけど謝る。
7・向こうが逆に恐縮するぐらい謝ったら、底の部分を試験片に切り出す。
こんな感じに、試験片(試料)を切り出します。 問題なのは大きさですが、ある程度サイズがないと試験結果の計算が難しくなっちゃうんだよなあ。
まあ30Φぐらいあればよさそうかな。
底は、中心部と高台に近い部分、の最低二か所。多くてもいいです。
あと壁部分のも必ず。
サンプルが誰がどう作った何処の部分かわかるようにマーキングします。
8・ふつうに焼成します。焼造物の隙間にでも入れとこう。
多分素焼きだけでは不十分(高度の焼結、焼成収縮をさせたい)なので本焼きしちゃってください。釉掛けは不要。
9・それぞれ比重試験をする。
10・値を比べる
これでどうでしょう?
面白い結果が出たらぜひぜひ教えてください!!
もちろん、実験する前からご意見、おしかり、アドバイス等々いくらでもお待ちしております!!