2018年5月30日水曜日

蕎麦猪口Vol4 ちょっとひねってみる 闇ヤキモノ教習(仮

 前回まで、とりあえず自分的にはこんな感じで形を決めていきますってのをやりました。対蕎麦猪口用ってわけですが、それ以外、自分が何か作るときにほぼほぼ前提条件にしていることがありますのでそれも付け加えておきます。番号に意味や軽重はありません。
 1、軽さ、表現的繊細さよりも丈夫さと機能性こそを重視。
 2、実際丈夫かどうかだけでなく丈夫そうに見えることも必要。
 3、なるたけ少ない手数、手順で完成する
 4、安定性があって、ちゃんと安定感があるように見える(無いようには見えない)
 5、滑りにくい等のハンドリングしやすさ。径や反りの向きなども考慮する
 6、小さい子供やお年寄りにも使いやすく、ちょっとぐらい手先の不自由な方にも決定的に使いにくくないように。
 7、だからと言って絶対じゃないし、当然ですがオーダーに関してはオーダー重視です。

 といったあたりです。オリジナリティや個性といったものはとりあえず考えません。まあせっかくならとは思いますけどね。
 ここまでこのHPやこのシリーズで述べてきた肉厚や重量に対する考え方もこのあたりから来ています。年取ったりお子ちゃまは軽い食器だとひっくりかえしちゃうんですよね。死んだばーちゃんが脳溢血でひっくり返ってからは体の右側利かなくなっちゃったんで難儀してました。今でいうユニバーサルデザインのようなカップも使ってましたが、やっぱりいかにもなちょっと特殊な形でして、しかもプラだったんですよね。軽くて握れても操作しにくい。「これじゃ丸出しなんだよねえ」とまあ今思えば悪いわけでも恥ずかしいことでもないんですが本人コンプレックスありました。で、ばーちゃんの旦那、俺がこんな性格になった遺伝子の元の一人と噂される(それは事実だろ)洋画大好きなジーちゃんは要約すると「もっと普通の無いのかよ」という意味の、こんな気軽な記事では書けないような言葉でデザインを罵ってました。しかもフレンチノワール風味に(ここはうそです)

 今回は普通の蕎麦猪口、というわけであまりいじくりようないんですが、基本的に自分が作るもの考えるときに気にしているのは、どうせ出したところでろくでもない俺のデザインセンスを押し出すよりも、何の変哲もなくとも触れやすい扱いやすい丈夫でどっしりしたモノをというのが本線です。

 でも、ちょっとシンプルな円錐台形じゃないものも、この際一気に考えてみましょう。たとえば、よく作ってる変形のカップやお椀があったとして、そのデザインを流用したり、調和を取って同一シリーズ風にしてみたりできるかも。
 センスとチョイスの良い方でしたら、薬味入れやめんつゆ入れ(あれも徳利っていうんですかね??)もセットにできるかも。

 まあ日本のごく普通のご家庭で洋食器ディナーセットみたいにシリーズで一式揃えちゃう方ってどのぐらいいるんでしょうか?デビ夫人とか叶姉妹ぐらいじゃないかな?あ、普通じゃねえか、しかもどっちかっていうと日本人より孔雀に近いですね。

 何言ってるかわからなくなっちゃってますが、要はちょっとひねって凝った形にしてみよう。失敗上等。失敗したら小鉢と言い張る、というオプションを用意してアタックだ。

 私の場合はとりあえず作り出すなんてことはしたことなくて、いつも頭専攻ということで例によって理屈っぽくて身のない仮定と想像をモース警部みたいに繰り返します。

 ひねってみる。小鉢。ということでコールマン、伸身だったらカッシーナなどというネタも他人に通じたことがないので封印しますが、ロクロ引いた後にグネリと変形させるのは好きな手筋。へんてこ感、あんまし観たことない感を増すために三角、四角が候補。六角以上はよくありそうだし。やわらかめに変形させて高台畳付までその形状を保つシルエットで。三角錐台、四角錐台って感じ。角は丸っこくてもいいし、ちょっと削いで稜線を出してもいいかも?

 花形にゆがめる手法。湯呑でちょくちょく使うのでこれもやってみることにしよう。

 丸みの大きい碗形だとどこら辺からどこら辺までが蕎麦猪口に見える限界なのかも確かめてみたいですね。

 思い切って取っ手をつけてみるってのはどうでしょう?マグカップでラーメン食ってるみたい。ノアール系香港映画に出てくる奥さんに逃げられた捜査一課のデカの一人さみしい食事シーンみたいですね(もちろん洗濯物部屋干ししっぱなしのおんぼろアパート)。やっぱり却下かもなあ。

 たまに蕎麦屋で出くわす。蕎麦猪口と薬味入れとめんつゆ入れがぴったり重なるお重スタイルのやつ。考えるのは楽しそうだけどそんなの注文されてません。それと用途が蕎麦一直線になりすぎかも。とりあえず今回は保留。

 何か貼り付けもので加飾するのはスタッキング対応性を著しく落としそう。

 鎬、掘り込み系の装飾は視覚だけでなく、触覚に訴える部分が多く、ハンドリングの安定性を増すので好きですし釉薬もセクシー対応可のつもり。重量配分に問題があった時のセーフティバルブオプションとしてもつかえるか。バリエーションNo1かも。


とまあこんな感じで明日も仕事しながら考えてみて土日に作る予定です。
 

蕎麦猪口Vol3 寸法以外部分を決めよう 闇ヤキモノ教習(仮

 骨格の寸法が決まったところで、その他の部分を考えてみましょう。

 なんでこんなに連投で記事あげてるのか。もうお分かりですね。作ってくれって頼まれたんで頭の中を理屈っぽく整理しているわけです。今日中にとっとと考えて土日にでもさらっと作っちゃいたいんですよね。で、それに付き合ってください。できればいいアイデアくださいと。メモを残しておくって意味もあります。へえ~売れない人ってこうやって無駄なこと考えてんだ~なんて感じでよろしく!

 まず先に見込みについてさらっと。
 個人的に大問題にしてる「見込の底のヘリ問題」というのがありまして・・・
 多少オーバーに書きましたけどこんな感じ。ごくごく一般的に考えると右の方がシャープで目方もバランスも軽くなりますし推奨型かと思います。左はなめらかですがともすると重く感じるし場合によってはへたっぴ臭いと。同じ重量でも底が重いのと口が重いのでは感じ方が違いますよね。
 ただこれは蕎麦猪口である上に万能容器。プリンとかヨーグルトとか茶碗蒸しがヘリに残るのが嫌いなんですよ。残すのはもったいない。ぎりぎりまで頑張るとカリカリチャリチャリみっともないし行儀悪い。最近のちょっと高級っぽいプリンとか自宅で作ると器にくっつき気味になるんだよね~。
え?プリンて焼くの?じゃあこないだ食ったあれ何?ババロア?ムース?
 
 個人的には重量、肉厚に関しては薄きゃいい、軽きゃいい、上手い、エライという風潮には力の限り異議を唱えたいのでね。詳しくここでは語りませんがとりあえず常識の範囲で作れば「同じ土同じ焼成なら薄くて軽いほうが丈夫なんてことは絶対ない」とだけ言っておきます。
 
 とにかく見込のヘリ、これは俺んちのスプーンのRに準ずる形。としておきましょう(頼んでくれた人の家のスプーンじゃないのか?)
作りに気を使って、手首が折れるほど重いなんて結果を回避しつつ、蕎麦猪口の目方ぐらいで音を上げてるようじゃあ鍛え方が足りんということにします。度を越してなければ実重量そのものよりバランスですよバランス。

 ではできるだけ詳細な大雑把な図を描いていきましょう(自己矛盾に満ちた文章)
 自分は実制作と並行させて5種類とか10種類とかデザインを試して、その中から選んだものを微調整しながら複数個つくりってのを繰り返します。
 今日は思考=図面先行で。
ちょっと変化球もありますが3つ書いてみました。
仮に一番右にしたとして…
こんな感じの装飾はどうかな~と貧困な脳みそを振り絞っていきます。
ガラ付け絵付けしたい方は同時進行で考えるんでしょうな

 高台に関しては今回、目方のバランス次第で刳り貫くかどうか一つ作ってから考えればいいかもしれないな。底の厚みとのバランスですね。
 底削りすると、高級感チョットUP、手間ちょっとUP、値段ちょっとUPって感じかな。おっと、しくじり率もちょっとUPしますな。

 使う釉薬等に関して。使いたい釉薬が決まってればそれに合わせた設計で作ればいいんですが、特にない場合、考え方の一つとして以下参考にしてください。
 コーヒーカップや湯飲み茶わんの場合、長い間使ってるとどうしても渋がこびりついたり貫入に染み込んだりしてきますよね。で、まあそんなもんと思ってる方も多いんじゃないかな。蕎麦猪口でそれってどうなんだろう。あんまり気にしたことないですけど。湯呑と比べて使用頻度も低く汁に浸かってる時間も長くないし蕎麦猪口として使うだけなら神経質になる必要なさそうですが・・・
 しかし今回想定している使い道のオールマイティさから考えて汚れっぽい(もしくは汚れが目立つ)のはまずいんじゃないでしょうか?コーヒーも飲めばお茶も飲む。プリンを作ればおかずも入れる。いただきもののお新香なんか入れた日にはしばらく冷蔵庫といったり来たりの可能性もありますね。で、次使うときまたお新香とは限らない。打順もポジションも大谷翔平が裸足で逃げ出すレベルの使いまわされ方を仮定しています(言い過ぎ)
 普通に洗えば落ちる程度の清浄度キープ以上は当たり前、耐酸性なども頭に入れたほうがよさそうです。見込は無貫入の釉薬にします。めんつゆメインでとりあえずオールマイティに無難ということから色味はクリアもしくは白色系が本線かも。
 ラップがかかることを前提にすると外側もオールカサカサマット釉というわけにはいきませんな。
 釉薬から逆算してデザインが決まる場合もありますよね。デザインと釉薬は複雑に絡み合うからなあ~

 以上、加飾、最終的な仕上がりがどうなるかはともかく簡単に骨子をバックスクリーン三連発といった勢いで並べてみました。
 
 ここまですべて「こうするんじゃ!こう作れ!」ということではなくて「設計として私はこう考えました。しかも今回は」ということです。参考になりましたかね?
 この後は実際にナマ体作ってから続き書く予定です。


 最後にパッと見のデザインですが、流行り廃りや売れやすさみたいのがあるようですよ。
 そのうち皆さんの力やアイデア、経験を巧いこと借りつつ「試しに折れ作ってみるから、よく売れそうなものを考えてみてください」みたいなシリーズで上手くいけば俺シメシメというのも企画してるんですが(腐りきってるな!)、とりあえずそういった世の中の風潮に媚びきった日和ったものについて、好むと好まざるとにかかわらず考える必要もあるかもしれませんね。











 こんなのはどうでしょう?
にゃ~

レンコン!

鎬となにかツブツブしたもの

 イエーイ!青マットでバカ売れだぜ!蕎麦がうまーい!
 みたいな

 ネタにしても低クオリティで申し訳ない!
 とっくに水の中に消えてます


蕎麦猪口Vol2 なんとなくの寸法範囲から 闇ヤキモノ教習

 蕎麦猪口を作るのは決まりましたね?決まりましたね?

 では頭の中に蕎麦猪口のシルエットの平均値というか普遍的にだれが見ても蕎麦猪口なんじゃね?ってのをイメージしてみましょう。蕎麦猪口はこの個人的なイメージの振れ幅がものすごく少なそうで助かりますな。グーグルとかいう便利なページで画像検索してみてもいいですよ。どれもこれも大した変わりませんよね。取っ手がついてたり注ぎ口がついてたり平べったかったり、やけに細長かったりしませんよね?間違ってアマゾンで検索しちゃうとしばらく蕎麦猪口ばっかりおすすめされちゃって大変なことになると思います。

 基本的に私は、作ってるもの、あるいは作ろうとしているもののもっとずっと立派な先行品、ってのを見つけて鬱状態になってしまうので画像検索するのはしないですしお勧めもしませんが、蕎麦猪口ならいいんじゃね?寸法や形状、その比率に関してはよっぽどのことがない限りオリジナルもパクリもへったくれもないですよ。多分。

 もちろん新しい形デザインの蕎麦猪口を想像、創造することを否定するつもりは一切なくて、見てみたいですし可能ならば自分でも作りたいですけど、凝ったカップじゃなくて蕎麦猪口である、と認識させるにはかなりの才能と力技が必要なんじゃないかな~と現段階では思ってますし、何より自分にそんな才能ないですのでここでノーガキ垂れられましぇん。(失敗作は山ほどあるよ~)

 
 とりあえずオーソドックスに行こうということで・・・、
 手持ちの資料の中から大体こんな寸法だろう、というのをまとめてみました。
 1、口元 φ70前後~φ80前後(φ=ファイ、直径ね)
 2、底回り φ40前後~φ70前後
 3、高さ 50H~いっても80Hぐらいじゃね?
 というそれほど具体的でないボッソボソの結果になっています。
底部分は口元から畳付までずどんと一息で高台だけぽこっと飛び出してることはほぼないようです。机に置いてある状態じゃあ高台刳り貫いてあるのかべた底なのかわからない。
  
 ざっと骨格寸法を図にしてみました。
この範囲が定番らしいですよ


 ここから先は増して個人的な感覚ですよ。独断と偏見!皆さんも独断と偏見でいってみましょう!間違って「高慢と偏見」にならないように

 数並べたときに揃いものに見える大事な要素であろうと考えてるので角度揃えで調べてみたいと思いました。
 下の図は口径を仮に70φに固定、左から80°、85°、75°、高さを上から80H(径より高い)、65H(ほぼ真四角に見える)、50H(高さの下限と思われる)の9パターン
これより角度が立ってると筒モノっぽさ、寝てると鉢っぽさが強くなるんじゃないですかね?また、一番上、径より高さが上回ると蕎麦猪口感がなくなってるように見えます。
個人的には中段の左二つと下段の右が好きです。

 作り手の好みでどれでもいいんですけど角度の違いでどんなことが発生するかを考えてみます。
 寝てると重ねやすい、小鉢的に使いやすい。立ってるのはその逆かな?
 側面はRのつかない、ほぼほぼ直線的なシルエットになるはずなので寝てるとつかみにくい保持しにくいってのはあると思います。蕎麦食べるときにお茶碗持ちしないですからね。しないですよね?しないって言ってくれ。

 頭の中にある完成形と合わせて確認できましたか?
 完成寸法でボール紙かなんかで作ってみてもいいかも知れませんね。
 ここまでで骨格的な寸法はあらかた決まった、というかイメージできたと思います。

 好きな比率を確認したら好みで大小させてみましょう。窯詰時のツクボーの高さや棚板に綺麗に割り付けられる寸法に合わせるのもアリですね。特にうちの窯は小さいので結構重視してます。その際は前に測った収縮率、割り掛けで生寸法(焼成寸前寸法)から計算します。
 
 もちろん今、寸法を決めたとしてそれは絶対確定の必要はありません。絶対でもいいんですけど手癖の問題もあるし、細かい外面形状のニュアンスや最終的なものは作りながら調整しながら決まってくることが多いんじゃないかな?頭の認識と手の動きのガイドラインとして作用すれば十分だと思います。自分の場合はそうです。で、ある程度決まってからコテを作ってますよ。

 大まかな骨格が決まったらあとは、装飾や、使う(使いたい)釉薬、見込みの処理などが要素として絡み合って決まってくると思います。もしかするとこの辺は初めに決まってるかもね。
 
 成形方法も決まってくると思います。轆轤引き、鋳込み、タタラ巻いて貼って作る、手びねりする。どれでもいいですね。
 簡単で早いので私はロクロにします。というわけでこのシリーズ以下ロクロです。「なんだよお前鋳込みじゃねーのかよ~」って方。いつになるか知りませんが「何?お前ら今時まだロクロ使ってんの?(仮)」というシリーズをぜひやりたいと思ってるのでそれまでお待ちを。寸法形状揃えるだけなら鋳込みが手っ取り早いんですが段取り面倒ですからね。鋳込みはロクロじゃ絶対できない何か、を作るまでとっておきましょう。
 
 
 
 
 

高機能蕎麦猪口を設計してみよう!その1 闇ヤキモノ教習(仮

 皆さん春を感じましたか?気が付いたらとっくに夏になってませんでした?ちょうどいい時期なんて今年なかったんじゃないか?どうなってんだよジャパン!異常気象か?温暖化か?
 なんて毎年まったくおんなじ聞きかじっただけのようなこと繰り返している我が家のも含むその辺の年寄りのようなアバウトな前置きはさておき・・・

 夏=暑い=ダレる=ソーメン=蕎麦猪口
 というのは「夏の第一法則」として誰もがたどり着く実感ですよね。特に若い一人暮らしの男性なんかは毎日毎日ソーメンばっかり食ってると思うんですよ。少なくとも私はそうでした。

 必然的に蕎麦猪口が必要になってくるわけですね。それも毎日毎日。まあソロ男子の場合、蛇口で冷やしたソーメンをまた鍋の中に戻して桃屋のめんつゆダイレクトスプラッシュすれば洗いモノ鍋とザルと箸だけじゃね?という極めて合理的な結論に至るのも経験上確実なんですが、誰も見ていないところで徳を積むのが大事。
「ああ、こんなんだから俺には彼女ができないんだ」という心の声でも、
「お前はまだジェダイには早いぞ」という茶色いガウンを着たオッサンのテレパシーでもなんでもいいので感じていただきたい。
 
 しかも今年からヤキモノ教室に通いだして楽しくやってるというパチーノ(このおせっかいなだけの教習シリーズの仕掛け人、私の友人)が「俺、今度みんなで蕎麦猪口作るんだよ、グヘヘ。なんかかっこいいアイデアない?」なんてこと言ってきてるんですよね。何がグヘヘだよ。

 そんなこんなで(なにが?)とにかく蕎麦猪口を作ろうぜ!ということで、製作技術的な面ではなく、機能性の器を「設計」してみるという観点から考察してみようと思います。 
うちにある蕎麦猪口と当て馬
左から二番目は会津本郷酔月窯の逸品(超丈夫)


 蕎麦猪口は文化生活経験上、ある程度以上形が決まっていて、あんまり珍しい形になると作った本人がどんなに言い張ろうと蕎麦猪口としては理解、認識してもらえなさそうという制約がありそう(たとえば上の写真の一番右)ですから、形のデザイン方面の自由度が低い=理詰めでやれそうな範囲がデカいじゃね?=田舎のるつぼ屋でもノーガキこけそう、という気がします。出来はさておき。(まあしくじったところで使えないってことはなさそーやね)

 で設計です。
 要はどんな出来上がりになるかを考えるってことなんですが、ここではとりあえず寸法や形状の確認から。当然出来上がりのイメージや印象からスタートするわけですが、基本の機能面でのプロファイルを考えるってことに狭めておきます。
 つまり、口径、底径、外壁面の傾斜角度、高台の有無、形状といった目で見ての外の形の部分。
 肉厚、重量と重量配分という質量感(今作った造語ですよ)部分。
 主に見込の釉薬の機能的性質(=耐汚れ性面など)
 あたりですかね。
 かっこいい、素敵!といったガラやしのぎ等の装飾そのものについてってのはとりあえず別口で考えましょう。

 たとえば「ぽってりぷくぷくとした暖かい丸みのある蕎麦猪口です。コックリチョコレート色の釉薬でお化粧しました。チュルチュルお蕎麦タイムに、またプディングなどいれてアフタヌーンティーでほっこり!(注:本当は顔文字タップリ)」なんてのは、その実「なんだかロクロだか手びねりだかわからないような何ともボコボコした厚手の丸っこい茶色いカップ(たぶん畳付部分がすごく小さい)」って全体の印象のみ言葉で誤魔化してるだけなので、こういった表現に一切拒否反応がなかったとしても設計とは言いません。(特定の何かを指しているわけではありませんよ!)

 蕎麦猪口は蕎麦食うだけじゃなくて、ちょっとした小鉢的な使い方、つくりによってはめんつゆの残り以外の飲み物を飲むためのコップ的使い方もしますよね。そこでなるたけ幅広く使えるような設計にしてみましょう。小鉢って言っても蕎麦食ったりしないですけど、蕎麦猪口なら蕎麦も食う。
 つまり名前だけの問題のような気もしますが蕎麦猪口>小鉢、コップという守備範囲なわけです。

 つまり我々は「高機能=蕎麦猪口。最低限必要なのは小鉢でもカップでもなく蕎麦猪口である」という結論に達しているわけです(われわれじゃねーだろ)

 まあ蕎麦猪口をなにかと使いまわす、なんてみんなやってることだけどわざわざイコールを取っ払って「高機能蕎麦猪口」なんて名付ける厚かましさを身につけ、言ったもん勝ち精神で考えてみましょう。先程の「ほっこりなアレ」よりは五十歩百歩の五十歩の方なはずです(だから冗談ですよ!)
 


まずはここから。まあこれガラスですけどね。
たとえばこれだと口つけて飲むには口が開きすぎてる感じです


裏っ側どうしようかねえ~
四角かったりしちゃいけないものか?丸くなきゃいけない理由はあるか?

 例によって無駄口が長すぎてますが、次回から定番であろう寸法形状あたりから設計スタートしてみましょう。
 問題は俺が売れないヤキモノ屋なので真似だけはしないほうがいいですよってことですかね?
 何か作ろうって時にどういう順序で考えるといいだろうか?という思考の実験をスナック感覚で楽しんでいただければと…

2018年5月29日火曜日

ジルコニア円板

 ただの円板です。
 写真は写り方で反射してえらくガリガリに見えますが、ダイヤモンド研磨で平面をざっと出した跡が光っちゃってるだけで、普通に平らです。
  
セラミックス用語辞典のジルコニアの項目だ~


2018年5月28日月曜日

専用加工のセッター、アルミナ高強度品

ここのところセッターが多くなってます。
セッターといっても犬でも宮下選手でもないですよ、という持ちギャグもここでもう何度かやってるので好きな方もいないと思いますし思い切って割愛しますね。

 セッター、匣鉢、サヤ、マッフル、etc・・・それぞれ微妙にニアリーイコールでして(多分)、人によって言い方も違えば思い浮かべてるモノが違ってたり打ち合わせ始めは寝てるところを叩き起こされたシカゴの私立探偵といった感じで探り探り感があったりします。
 特にセッターというのはおそらく何か試料なり焼成物なりをセットするためのもので、今回のように「見るからに焼成容器」というわけでないこともありますね。「なんだよ~、紛らわしいなあタダの板じゃないか~」みたいなこともありますがそんなこと言っても誰も楽しくないですし。
 
 まあ当たり前ですが、言い方名称はユーザーの方に合わせてます。

 というわけでセッター、側面に刳り貫きの穴が開いていて何かイイことができるようになっています。
 



サイズはこのぐらい

焼成容器ひとつとっても出来合いつるっぺたの大型容器ってンじゃなくて実験条件に合わせて、化学的にも形状的にもカスタムの余地はあるものだなあ、と思います。
 「セッターがこうなってたらいいのになあ~」なんてときにはぜひご相談ください。

2018年5月24日木曜日

MOT's at NIMS 技術展示会 ほぼリアル周期律表!

 今日はNIMS(国立研究開発法人 物質・材料研究機構)でのMOT's技術展示会でした。
 なかなかのご来場者数で、個人的にもユーザーの研究者の方々が仲間付で次々来ていただいたんで話が弾んで勉強になったしすごくよかったです。

 ここはもともと金属材料、金属以外の無機材料に関する二つの研究機関が合体したもので材料基礎研究に関する公のトップ機関。タダの気のいいおじさんだとおもってたら、そのスジではイニエスタ級のワールドクラスってこともあるそうで・・・。

 やっぱり物事基礎が大事、数年内に結果=お金?になるようなことばっかりじゃなくて何かニュースになっても話遠すぎてピーンとこないあれやこれが子孫の代に結実して表社会に何かをもたらしたりするわけです。
 
 「近々に経済に結びつかない学部なんか廃止しろ~」とか、ぶっちゃけ心の中で「俺が生きてるうちにはもう関係ないだろ(たとえば原発すぐ動かせとか言ってる人はそれに近いよね)」みたいなみっともないことばっかり言ってないで、こういうエレメンタルな部分にきちんと力=予算を割り振っていただけると人類の、地球の未来を築く礎になり、ぐるっと回ってウチも大変助かりますですよ。

 俺がよぼよぼになった時に「超伝導ビンビン社会目前」ぐらいになってたとしたら、何とかいう合金のおかげで何かが大変すばらしいことになってたとしたら「俺も2センチ5ミリぐらいは貢献した」と話てんこ盛りで曾孫に自慢したいんで・・・

 こんなほぼリアル周期律表が!
 
理科の教科書でおなじみのあれですが、よく見ると…

リアル元素の隗or結晶だったりが入ってる!

常温や大気中でほっとけないのは写真で勘弁、気体はさすがに無しですが・・・

希土類ランタノイドとかアクチノイド(例の表からはみ出してる連中)
それでも石英管に封入したりしてできる限り頑張ってる!
 あなたの使ってた教科書に乗ってなかったりして?

アダマンチウムとかヴィブラニウムはまだ発見されてないそうです。

なんて写真撮り忘れましたよ!
もう片付けの時間になってました!



次回は七月前半予定のJAXA。あの宇宙のJAXAです。
「お帰りハヤブサ」的な便乗映画はいいの一個もなかったですけどね。
 




2018年5月22日火曜日

おすすめ本シリーズ 闇ヤキモノ教習(仮

 去年早いころ買ったんですが、部分的な工程に特化してる本なので以前は紹介しませんでしたが、ロクロの教則本のおすすめを!


 ロクロなんて最低限できてるかすら怪しい俺の紹介なんで話半分でOK!
 まーたロクスッポ読めないくせに、意識高いフリして海外の本(英語)なんですが、これはいい!いろいろいい!

ベン・カーターさんの

Mastering the Potter's Wheel: Techniques, Tips, and Tricks for Potters

Tricksってのがいいねトリックですよ!「ワザ!」って感じですかね。コマやヨーヨー、ボールなどのジャグリング系おもちゃ大好きで、Xゲーム楽しみな俺にはおなじみでイカシタ単語ですな。)

 もともと「ロクロなんてヤキモノ屋の作業の中で最もアスレチック&感覚系なわけで、本読むより理屈を自分なりに考えながら実践でしょ。こういう本高いし」という派で、「世間知らずの俺だから、体を張っておぼえこむ」というユタカ式だったんですよね。(知り合いにわかんない方がいたんで野暮な説明しますと尾崎豊がそう歌ってたんですよ。別にオッサンが気取ったフレーズひねり出したわけじゃありません)もちろん例によって性格通り超理屈っぽくですけど。

 でなんで教本買ったかっていうとそろそろボンクラ1号にちょっとやらせてもいいかな~なんて思ったんですが、そんなわけできちんと教えられないので。
 一言一句読める日本人の本じゃなくてこれを選んだ理由は皿とか茶碗とか言った個別に「○○の作り方」的な感じではい出来た!だけじゃなくて、スキルを磨くエクササイズ例とか考え方的なもの、などが実践的な感じで説明されているように思えたから。もちろんパッと読んだところでほとんど英語わかんないので勝手読みでそう思っただけなんですけどね(あってました)
 まあ日本語の場合はザブザブ読めちゃう分なるほどそうか~なんつってその場で確認読み=ほぼ立ち読みで済ませちゃったっポイ心底賤しい事実も若干あるんですが…(個人的には買う気のない立ち読みは窃盗罪だと思ってます)

 2016年度になんだかそのスジで表彰されてるようで「いい本だぜイエーイ!」「これで決まり!」的なそのスジからの賛辞や推薦文が裏表紙に並んでるし、ダメだとしたら俺の語学力不足。趣味と実益を兼ねた英語の勉強にもなりそうだしいいか!と予算よりだいぶ高いけど買いました。

 以下、この本の内容を出版社とベン(いきなりなれなれしい態度)に訴えられない範囲でお勧めポイントを… 

 まず、著者の見た目がいい。

著者のベンさん。まだお若いんですな。

顔立ちはネブラスカのスーパーマンといった佇まい(アゴとか)

とにかくガタイがよくて見るからに絶対ラインバッカーでしょ。



 イマドキ解説写真がわかりやすいのはもちろんですが・・・ 
とにかく腕っぷしがすごい。
ベンって名前はアゴが割れるんでしょうか?アフレックとか。
一番右の写真とか完全にジャスティスリーグ入り。

 ヤキモノ屋はひじから先の毛が薄くなってる方が多い実感があるんですが、ベンは結構ごわごわです。

 なんと一番始めにヘルス=健康に関するページが割かれてます。
こんな感じに体操まで!腰に来ますからね。
フットボール部のストレッチにしか見えない

 作業姿勢に対してかなり詳しく、体操まで乗ってるのもびっくりでしたが、「この本はロクロの本なのであんまり量多く書けませんけども・・・」と前置きしつつ、危険な釉薬原料、珪肺等の珪酸由来の職業病等についてもかなり早い段階のページで記述されています。しかも医者からのアドバイスつき。

 書籍は内容が売り物なので詳細は書きませんが、「SKILL BUILDING」という、技術構築、腕前磨きとでもいうのかな?これこれこういうやり方の練習方法やっておくとイイですよ!っていうコーナーがちょいちょいあって今説明した技術やモノに対する《理解》がそりゃ絶対深まるよな!という素晴らしいページになってます。

 彼自身を含めた現代アメリカの作家の器の写真がタップリ載っていて、そのバリエーションも理性的で見てるだけで楽しいし、今読んだ部分からの関連性でもなるほどな感じ。
 
 で、なんでバカがそこまでわかるのかっていうと文章が読みやすいんですよ。あんまり平易な単語でくる文章だとDOとかHAVEとかGOTとか意味が幅広すぎてニュアンスがむしろバカにはわかりずらい。「To be or not to be」みたいなのはかえってわかんないですよ。

 ベンの文章は「簡単な構文+見たことない単語」(俺はですが…)で構成されてまして、辞書引くとほぼ限定された意味の単語なのでめんどくさいが非常にわかりやすい、ということになってます。まあ俺は記憶喪失だけじゃなくて記憶力喪失も併発してるのでおんなじ単語何回も辞書引く羽目になってますけどね。
 英語の文章論ずるレベルにはもちろんないんですが、なんとなくでたとえれば中島敦読んでるような感じ。その難しい漢語の意味さえ分かれば非常にすっきりセンテンスみたいな。間違いなくものすごく知的で思索型の体育会系だと思います。見た目だけじゃなくて練習に関する考え方が絶対スポーツやってた人だと思う。時折アメリカーンなとっぴな例えも小気味よく入ってるっス。「さすが外人はうまいこと言う」的な奴。
 
 俺が内容の細かいところどこまでわかってるのかとか、実は間違って読んでるとか、非常に不安ですがいい本ですよ!俺が言わなくても裏表紙にいっぱい書いてありますけど。

 ほかにも、上から下まで一冊ずっと同じ格好(黒T、短パン、アシックス)してるなあ、とか、一日で撮影したのかなあ、とか、靴アシックスじゃん、とか、前掛けと短パンの汚れっぷりから撮影した順序やこの写真だけあわててやりなおしたんじゃね?が想像できるなあとか、フェティッシュな楽しみもありますな。

 アマゾンで調べたらまだ売ってるみたいです。まあ無理して買うことないですけど3000円拾ったら買って損しないと思います。

 出版社は十年一日のごとく似たようなのばっかり作ってないで、こういう本翻訳してくれないかなあ~。本屋で比べられて英語できない男に選んでもらえないってどういうことよ。

 
 それとヤキモノ教室の先生方!「教えアンチョコ」的なおすすめロクロ本あったら紹介してほしいなあ~。商売あがったりかもしれませんけど。


 
 

2018年5月21日月曜日

多孔質のアルミナるつぼ ラボサイズ

定番のアルミナるつぼです。基本的に作ってるものは見た目どれも変わり映えしないコップ型のるつぼがメインなので「あんまりこればっかり・・・」ってのもあって最近作ってもアップしてなかったんですが、読み返してみてもアップする記事のボリュームバランスが若干おかしくなってきてますな(多少は面白いと思うけど)。「お前のHP、何屋だかわかんなくなってきてんじゃねえの?」という心配の声も上がり(一人ですが)・・・

 というわけで、つまんねえかもしれないですけどアルミナのるつぼです。
多孔質で寸法も35×25×高さ50程度と大学のラボでも次々実験するのにちょうどいいのか、あまり切れ目?もなくよく作ってます。

 

口元がちょっとガジガジになっちゃうんですよね。
型の継ぎ目が痛んですり減っちゃうことと、
強度のためにサイズの割に粗い粒子が入ってるので・・・


2018年5月17日木曜日

排泥鋳込み超入門 穴を埋める 闇ヤキモノ教習(仮

 鋳込み成形の仕上げに特有な作業として気泡の穴埋めがあります。ありますっつっても完璧に鋳込んだ結果気泡なんかないよ!ってことも当然ありますし、そこを目指すんですが何かとどっかしら穴ぼこの一つや二つあるものです。見えないんでわかんないし直しようもないんですが閉気孔もありますよ。(やたらありますが多い文章)

 原料スラリーがシャバシャバな場合、たまたま泡立ちやすい原料(ってのもあるんですよ)が入ってる、型の形状からして空気のたまりやすい、巻き込みやすい部分がある等々の理由ですが、原因がわかったら対処しつつ少しでも減らしていくようにするのは当然としても…。

 穴あいちゃったもんはしょうがねえ直すか!というわけで穴の埋め方。

では前回までのおさらい
離型して・・

バリ、口元なんかを仕上げます

この場合はダンチの所で切り飛ばしました。

順番はそんときの都合にもよりますが、口、バリ、穴埋め、面均しの順番でやってることが多いかな?ダメージのでかそうな順に整えていくのが結局「ダメだなこれ」になるまでが早いので無駄仕事しないで済みますね。

 じゃ穴埋めますよ!
用意するのはこれ
穴あきボディ、水とスラリー、スポンジ、写ってないけどハバリ
で肝心なのが筆、面相筆をお勧めしますが、
写真のように使いすぎて過労死寸前の今は面相筆!でもOKです。

 勘の悪い方でも当然お分かりのようにスラリーを吸った筆を穴に突っ込んで埋めるわけですが…

 素地の表から見えてるピンホール、気泡ってのは奥の方が広くなってることが多いんですよね。そのままスラリー埋めようとしても口塞ぐだけだったりしてうまくいきません。
で下図のようにハバリでグリグリして穴を広げます。
こうすることできちんと穴が埋まるようになります。

穴ぼこを

刃物やドリルで広げます(わかりづらくてゴメン

 埋めるときに気を付けるのはボディの乾燥具合とスラリーの濃さの関係。
 基本的にいっぺんに盛るよりも、チョンとつける、水が引いたらチョンとつけてを繰り返して5回ぐらいで埋まりきってちょこっと盛り上がるぐらいがベストです。
 まだ水気の多い時には、濃いスラリー使えますが吸いが悪いので時間がかかります。乾きすぎてると盛ろうとしても上手く付かずにポロっと取れますので水で薄める感じでスラリーを少しづつ少しづつ盛っていくことになります。何も具体的に言ってないのを自分でも知っていつつ、ちょうどいいのはこの中間と言っておきます。何回かやれば要領わかってくると思いますよ。
 乾きすぎないようにだけすればかかる時間はともかく成功率は上がります。


高級な将棋の駒のように埋めてなお盛り上げ気味に

のちスポンジや筆で均します。直ったー!

 自分でいいと思うまで仕上がれば工程終了!乾燥棚に回しましょう。
 あとはお好きなように素焼きして釉掛けして焼成すれば完成です。
 


 急に「入門用のムック本的無責任クソ展開」ですが、まあいいでしょう。

 この生体整形(なんかジャンルSFっぽいな)以降はおなじみの流れです。鋳込み特有で発生する何らかの作業工程はないと思います(実際私は思いついていない)。

 排泥鋳込み入門として素焼き以前の工程、作業に関する説明はこんなもんかな?この先は、何か生じる問題の対処法や、根本のスラリー調整、型の設計の仕方的なものになると思います。

 何か質問やご意見、間違いの指摘などありましたら恥ずかしがらずにメールやコメントお寄せくださ~い。


 この穴埋め工程ですが、気泡がなければそれでいいし、そんなの気にしないでもいいような土、デザインもあると思います。こんな作業なきゃないほうがいいんですが、やり方知らないと直しようもないのでめんどくさいですが試してみてください。理屈自体はどの成形法で作ったものにも応用可能ですし、組み立てモノなどでスラリー接着する時もコツなんかは一緒ですよ。

 みんなが知ってるお世話になってるあの企業の便器や洗面台作ってる現場でも世界最高峰の職人の皆さんが同じことしてますよ!

   



排泥鋳込み超入門 グリーンの整形 闇ヤキモノ教習(仮

 グリーンっていうのは生体(ナマタイ)のことです。あんまり使わないかもしれないですけど。

 と、言うわけで離型して普通に触れる程度に乾いたら整形しましょう。

 作業としては主に…
1、鋳込み口を整える
2、バリ取り、段差消し(割り型の場合)
3、気泡の穴埋め
4、シワとか石膏型由来の傷を消す
鋳込み特有でいうとこのあたりだと思うんですが、もちろんこのほかにも

5、組み立て、パーツ接着、蓋もんなら摺合せ
 等のアッセンブル作業
6、切り落としたり削ったり刳り貫いたり
 といった切削加飾作業
7、化粧掛けの類とか
 等々の通常運行もあり得ますが、今回は上4つの鋳込み特有の仕上げをします。

 道具は自分の場合、
 カッター、ハバリ、ベルリンファイル(過去記事参照)など好きな得物
 筆
 スポンジ
 平らな板
 ウエス(お父さんのいらないメリヤスの肌着が最高、ただし私はおむつライナー)
 水
 スラリー
 ゴムべら
 が必須アイテムかな?
 これにお茶とお好きなBGMがあれば完璧でしょう

まず、カッターで口元周り等に起こりやすい型の欠けや気泡穴からくるいらない凸を切り落とします。
 あとでスポンジで拭き均したりできるので超キッチリでなくてもいいですよ。
 
 次は鋳込み口、今回の場合は思いっきりカップの口元ですね、を整えます。
 しぼったスポンジやウエスで撫でてやればOK程度が理想なんですが、平らを一回出したいときは・・・
こうやって平板の上に水を絞ったウエスを広げて口元をスリスリして面出しします。

 素地に粗粒の多い配合の場合は濡らした板だけで結構です。磁器みたいな粒度の細かいのは布をお勧めします。
 濡らす水気の量ですが、本体の残留含水量等々勘案して上手く見つけてくれい。目安としては乾き気味のときは水気多め、逆は逆です。当たり前ですが、あんまり乾きすぎてるときはビショビショにすると一気に割れるので気を付けましょう。
これが・・・


こうなる

 どんだけ摺るかにもよりますが、一気に無機質な肉厚いっぱいに角ばった平らな口元になりますので、刃物なりスポンジなりを駆使してお好みの形状に仕上げましょう。
 
 もちろんカンナもかかりますので、それでもOK。
ガワ整えるのもできます。
 
 形が決まれば改めてよく絞った筆、スポンジ、ウェスで傷や段差を消しつつ面全体をよく均して完了です。土ものだと砂粒が顔を出したりしがちですのでそういう時はゴムべらでなでつけたりする手もあります。磁器ものだとスポンジや布の目がヤスリ目になり過ぎても面倒ですから素焼き後のペーパーかけに残しとく分があってもいいと思います。

終わったらこうなりまーす
モノが違うのは勘弁

 問題は気泡が入って穴ぼこが空いてる場合ですが、それはまた次回記事にします。二三日の内に。

 スラリーが薄すぎたり、形状、配合によっては穴だらけになる場合があります。あんまりひどい時はもちろんやり直しですが、どうしてもこれを仕上げたい!もしくは練習だ!って方は覚悟をもって気合い入れておきましょう。

 私など五年に三回ぐらいは、「三月のライオン」の零君みたいに「俺にはこれしかないんだよ~ぅ!!やるしかねえんだよ~ぅ!!」つって泣きながら叫びたいことがあります。場合によってはそのぐらいクソ面倒ですよ。