2018年6月29日金曜日

排泥鋳込み超入門 離型後、乾燥中の割れ 闇ヤキモノ教習(仮 

 数少ないですが時には結果論でよい場合、というのがあって今回のはそれかなと思うのでそのチョイス、決断に理解はできますが支持はしません。自身完璧に遂行できれば望む結果を確実に得られるのであればアリですけどね。まだ50%人頼みでは後ろ向き過ぎる。
 なんですかね?阿弥陀様のパワーが強いのか他力本願(誤用なのはわかってますよ)になるのもしょうがないのかな?
 非難されるのを覚悟でやる、その覚悟でやってるのをわかっててなお非難する。ってのはミッションインポッシブルでも、チャンピオンズリーグでもよく見る図式。手放しで喜ぶのも無定見に非難するのもやめておきましょう。
 あ、昨日のサッカーの話ってわけではないですよ。特に。
 まあひとつ思うのは、センターバックはレッズじゃなくてアントラーズの選手にしてくれって感じですかね。
 あ、昨日のサッカーの話ってわけじゃないですよ。特に

 とにかく結果オーライなんつって浮かれて検証しないのは最悪で、かの有名なソクラテスはどういう文脈なのかはよく知らないけど「検証の無い人生は生きるに値しない」みたいなことを言っています。彼はプラトンの師匠であり、ジーコがいた頃のセレソンのキャプテンです。髭もじゃでボランチ(って言葉はまだ知らなかった.ディフェンシブハーフ)でかっこよかったけなあ。
  
 ヤキモノっていうのは結果から遡ってどこが悪かったか判断検証して次につなげることでしかなかなか理解納得できないんですよね。ヤキモノに限った話かどうかは知らないんですが。
 でもヤキモノのいいとこはそれをやっていけばほぼ必ず「ちったあよくなる。確度が上がっていく」のを実感できるところ。しくじってもコレはあん時のアレだっツウのがパッとわかるようになるんですよね。なぜなら要素が複雑で玄妙とはいうものの、起こってることは単なる物理や化学的な現象だから。
 そりゃもちろん間違ってることも新しいタイプの問題発生ってこともあるんですけどね。

 で、棚上げされてた「鋳込んで外した成形体が気が付くと割れてた。乾燥中に逝ってるみたいなんだけどこれどういうわけ?」問題。
 これについて経験上こんなパターンありますよ、というのを記してみます。

 まず3つに分けられるんじゃないかと思います。
 A・何もないけど単純に乾燥の段階で割れる。
 B・実は見えないだけですでにクラックがあって乾燥とともに目立って来て発見。
 C・両者の中間というか、形状的、設計上潜在的に後々割れやすい部分や歪があり、それが乾燥中に破れる。

 複合的だったり、そこまでくっきり分けられるケースばかりじゃないと思いますが。

 A・これは極端な状態にならなければ一般陶磁器ではまず起こらないと思います。
  あるとすると、急乾燥過ぎる。ほとんどの場合過温度ですね。200℃の窯に湿気てるうちに突っ込むとか、直接フレイムに当てまくっちゃうとか。水気の気化する圧力。
 あとは偏乾燥、片一方だけに熱風当てるとかですね。これは歪んで切れる。
 原料の一部が水和してるとか、溶剤使ってるとかファインの場合はパターンいくつかありますけどとりあえず粘土物にはほとんど関係なしでしょう。
 
 B・多分一番ありがちで、乾燥したら割れてきた、素焼きしたら割れてきた場合、初めに疑うのがこれかも?特に可塑性の多いのよりは少なめのもののほうが起こりやすい。
 理屈は多分2パターンで、
 1、汚れとか傷等で実はうまく離型しない部分があって、でも他が大方外れてるから勢いで外れるけど、そのときに引っかかったり無理がかかって割れちゃうパターン。
 2、逆テーパーとか、芯で型割りできてないとか、とにかく離型できるはできるけど無理させてる場合。
 3、形状的にイカシてると、離型させるタイミングがシビアな場合があって、いい間を外すとフランジとかトンガリ部分、溝、くびれ部分で切れちゃうことがあります。
 可塑性の大きい場合は隅から、可塑性の小さい場合は面で割れることが多い印象。 

 同じ部分で割れが発生して、でも個体によって割れたり割れなかったりの場合、これが疑われます。
 離形させるタイミングを会得することや、補修、ペーパー掛け、作り直し、最悪ですが設計変更でクリアできそうです。もっと細かく型を割り直す必要もあるかもね。
 第一のコツだけ書いておくと、離型するタイミングは乾燥させすぎないこと。カラカラになっちゃったものを離型させると壊れやすいです。


 C・これも結構厄介かつ一般的ですが、乾燥に気を使えばクリアできそうです。気を使うとか言ってもお茶出したりする必要はないですよ。
 局面ではなく平面をつなぎ合わせて構成された形状で、ピン角がある場合はとくに、また肉が薄かったりすると乾燥中、でもってタチの悪い場合は焼成して100℃も200℃もいかないうちに割れちゃったりもします。ほとんどの場合、入隅があるところから割れますが、これは離型時に機械的な力喰らって割れてる場合と逆に、可塑性が大きい場合は面から、少ない場合は角から割れる印象。

 ここで紹介したパターンです
 
これねこれ

 解決策は、Rを大きくしたりの設計変更をしないんであれば、もう乾燥に気を付けるのが一番です。乾燥はこのブログのどっかに記事がありますし、今後乾燥シリーズも考えていたりいなかったり。乾燥って大事で、単独に本にしても売れないだろけどそれにしても陶芸本では省かれすぎ。これはフォトジェニックなページになりそうもないからそんなんイイや、という本の見た目の問題なのか、監修してる作家だか先生だかの「そんなんトーシロに決められちまったらこっちゃ商売あがったりだよ」という文鳥のトイレレベルの狭いマッスの極秘利権?問題なのかわかりませんけどね。
 超リアルなマリーアントワネット像とか作ってない限り、とりあえず基礎的なことはこの動画観とけばOKです。
作品の乾燥の話

それでもまだ割れる場合は、もう身もザックリ割っちゃって生の内に接着し直しちゃうってのはどうでしょう?


 とにかくこの辺気にして検証続ければなるほどこことここかとわかってくる場合もあります(すべてじゃないのがあれですが・・・)
 なにしろ、「検証の無い人生は…」なのですよ
 でもウッディアレンはソクラテスの言葉を引いた後「検証しても大した違いはないんだけどね」となんかの作品で言ってましたけどね。
 ウッディアレン的「どうせ人生なんてそんなもんだよね~」な達観も同時に身に付くのもヤキモノなんじゃないでしょうか(最後に来て著しく無責任な締め方)

神奈川県のNさん、参考になりましたでしょうか?
 

2018年6月27日水曜日

貫入土って何よ? っつうか貫入って… 闇、ヤキモノ教習(仮

 久しぶりにパチーノから連絡がありまして、貫入について質問を受けました。
 面倒くせえなあと思いつつまあ話を聞くと・・・
「釉薬と素地との収縮率の差が応力を起こして割れる、素地より釉のがより縮んじゃう場合に釉がパキパキ割れるのだ」と型通りに教わったらしく、そのこと自体は理解してるようです。




 理系文系的二元論はどっちですらない私にとって最も聞いててくだらないと思う分類の一つですが、もともとパチーノはバリバリの理系(よく知らないけど仕事もそれっぽい)。どっかの国立大学出てるはずで、成績はかなり良かったんですよね。「処女は英語でいうとバージン。では英語で童貞は?」「答え、ポール・ニューマン」というアウトコース低めのクイズを中学1年生の時に作った実は天才児(でしょ?)。
 その元?天才がわからないという。

「だったら収縮が少ない粘土の方が同じ釉薬だったらヒビるんじゃないの?でもすげえキメ細かくて焼くと小さくなる土がよく貫入する土だっておいてあるんだよ?なに?」
 天才としては、貫入のメカニズムの説明を受けて「なるほど。わかりました~」なんてやっちまった手前、年も顔も知らないけど女性だというその先生に恥ずかしくて聞きにくくなって俺に聞いてくるという。うち震えるほど自意識が邪魔してますなあ。妻子と冷え切ったちったあできる40男の悲しさよ(知らないけど)

 つまりこういうことでした。
 Aという土 収縮率 約10~12% 
 Bという土 収縮率 約14~15%
同じ釉薬をかけてもAは貫入しないのに、Bはスパイダーマンのエンドロールみたいに貫入すると。
釉薬はBより縮む、ってことはAならもっとバキバキ割れるんじゃねえの?
どういうこっちゃと。

 まあこれは勘違いですね。もしかすると先生の説明が不足してたのかも。
 先生の言ってる収縮ってのは「素地と釉、各素材の熱膨張係数(熱膨張率)による収縮」
 パチーノはそれを焼成収縮とごっちゃにしちゃったわけですね。

 メッチャ大雑把に説明すると(細かい部分の突っ込み禁止)、
 焼成収縮は最高温度までで縮み終わっちゃってるわけです。とします。釉もとろけた、と(ここにも同じことは起こってるんだけどアモルファスになっちゃってるのでまあほぼ液体に近いと考えてください)。
 で便宜上釉も素地もそれぞれまあ均一な固溶体になったとして、板と板を張り合わせた状態になってるとします。「とします」が多いですけどまあいいとします。
 釉には釉の、素地には素地の熱膨張係数があり、それにしたがって常温より体積が膨張してます。で降温するにしたがってそれぞれの熱膨張係数通りに縮んでくるとその差が応力となって釉薬にヒビが入ると。(状態や組み合わせによっては壊れたり剥がれたり)

 熱膨張曲線も含めてここまで説明してやるとやつは「あ、なーる」と、昔から変わらぬボンクラ少年のような返事をしてくれました。わかってもらえてよかったよかった。的に幕を閉じたんですが…





 でもはっきり言ってこんな通り一遍の説明で貫入ってわかんないですよね?
 少なくとも自分は理屈は分かっても実感しきれないというか、納得できないところが多すぎる。何がわかんないかを説明できないほどわかんない。パチーノの勘違いも笑えないし、説明してやったところで自分自身はこれでよかったのかと。
 小学生に証明抜きの公式を教えたり、学会の最前線とはもしかすると違うかもしれない教科書上とりあえずの回答を解説しなくちゃいけない授業中の先生のような気分(なったことないけど、多分)。
 俺だってわかってないですよ貫入。

 この土だとどうなった?どうなるんだ?ってのを繰り返して結果的にデータを積み重ねる以外ないです。
 こないだのビアカップとかでたまに紹介してるのは化粧土の乾燥焼成の収縮を利用した貫入装飾です。ファインの原料をたくさん混ぜてるんで「粒子が細かい=収縮大きい」んでしょうな(推測)


右はノーマルな貫入、左は焼成収縮差を利用した貫入(要は化粧土のひび割れ

かなりざんねんな貫入。一本だけスジはいるってなんやねん

 好きなんですよね貫入。ファインの場合も割れちゃったときに「貫入しちゃった。テヘ」的な使い方皆さんしてますよ。撤退じゃなくて転進的なアレですけど(笑

 実は「○○貫入土」ってのは使ったことないんですよね。普段の俺の買い先にそんなのないから。そんなに貫入するんでしょうか?
 うちの釉薬にはいまだかつて貫入したことのない釉薬。というのがあります。
 
 これはしょうがねえ、「貫入する土VS貫入しない釉薬」の決戦も近いうちにやらねばなるまい。もし俺の釉薬が勝ったら皆さんに釉薬の調合教えますね(エラそう)

 赤津貫入土ってのが名前もカッコいいし最初の標的にしてみるか。



 貫入も記事書きながらいろいろ切り取り方でネタになるなあと思いました。
 と、言うわけで「いやん。久しぶりに使ったらまたまたダダ漏れ~。まーた重湯につけなくっちゃ」的なのもそのうち記事にしますね~。
 

MOT's技術展示会 7月は…二連発

 上旬に高エネルギー加速器研究機構(KEK)
 下旬に宇宙航空研究開発機構 (JAXA)
 と二連発。

 本日は強風でしかも猛暑の中KEKへ横断幕の設置してきました


 高エネルギー加速器研究機構と名称がやたら具体的な割にはそれが何の研究なのか素人にはさっぱりわからないと仲間内では有名ですが、パンフレット読んでも話を聞いても結局簡単に説明できませんので、ご興味のある方はKEKホームページで確認してみてください。
 KEK職員研究員の皆さんは是非当日ご来場くださ~い。
 
 

2018年6月26日火曜日

無事でした

 とくに紹介できる製品が今日焼き上がったわけじゃないんですが、「異音」の顛末だけ記しておくと、まるっきり無事でした。じゃあなんだったんだあの音。
 こんなもん焼いてたらそりゃビビるよなあという、画像は残念ながらお見せできません。チクショー!!

 これでバックリ割れてたり粉々になってればただ今子供たちに大人気「ざんねんなやきもの事典」に掲載されてるところでしたよ。
このカップの裏のバツ印が情けない
カミサン検品落第!
うちの箸立てになってるという…

尻尾が切れちゃってムヒとか消しゴム入れられてるし

巨大クレーター
恐竜絶滅の引き金になったといわれています。

この扱いもひどい!


さっきググってみたらまだこのネタネット上にないらしいよ。
尻馬に乗っただけの心底ざんねんなダジャレだが遊ぶなら今の内だぜ!


恥はみんなでかきましょう!

すべての作り手の皆さんの心に刺さるざんねんなやきもの大募集中!

2018年6月22日金曜日

いおん

 一人で仕事をしているんですが、予期せぬ異音が聞こえることがあります(予期できたら異音じゃないか)、まあ別に仕事してなくてもありますけどね。
 耳なじみのあるのは、ピーンピーンとどっかで釉に貫入してる音。ミシとかパキとか柱が割れたか軋んだりする音もありますね。カサカサいうのは虫かネズミかな。グシャグシャの書類がずれた音。鳥だか近所の猫だかが工場の周りで遊んでる音。この辺は正解じゃない場合もあるとしてまあいいんですよね。
ピンピン常習犯

 よくわかんない異音が怖いです(よくわかったら異音じゃないか)
 これが運転中の窯の方から聞こえたような気がした時は特に怖い。
 ボンッとかパコンとか破裂したような音は、やばい。経験上破裂は昇温時、比較的低温のあぶり段階で起こります。300°400℃ぐらいまで。もしかして逝ったか? 大きくて肉の厚いものが破裂します。くっそーあれでも乾燥足りんかったか?あげるの速くないはずだけどなあ~。過去に3回ぐらいあります。

 ゴトリとなにか重たいモノが崩れたっポイ音もやばい。棚倒れたのか?るつぼひっくり返ったのかな?なんで? もちろん実際、崩落事故!なんてことは過去に三回ぐらいですが・・・
 
 降温中はピキーンといういかにも《今何かが割れました!》的な音も怖い。
 もし本焼成後にパックリ割れて出てきたら切り口、特に角を見てください。冷め割れなのか、昇温中なのか(潜在的に割れてたとかも)がわかります。

 今朝、理由は言いませんが結構寝ぼけた状態で仕事を始めて変な音が窯からしたような気がしました。異音、怖っ!!デカくて重たいモノ(特注の炉材)が入ってるし!温度的にはキープ終わって窯切れたあと。タイミング的に理由はなんだろうか?周りの異常はないしやっぱり窯内なのかな?不明。

 とにかく取り出せるまで窯の温度が下がる明日にならないと、中がどうなってるのかわかりません。この間できることといえば、
 1、何もないであろうと普通に仕事する。
 2、壊れてる場合を想定して、製品の作り足しをしておく。
   場合によってはヒータの発注までか?明日土日だし。
 この状態は窯屋にはしょっちゅうある話で、「シュレーディンガーの皿」といわれています。まあだからと言って自分の場合は、型と原料の準備を確認しておくだけなんですが。
 
 
 土日のどっちかで小学生の娘の用事でつくばイオンに行くんですが、仕事はやりたいときにやりたいようにをモットーとする私にとって土日も平日もないんで調子狂うんですね、土日付き合うと、逆に(←わがまま極まりない男)。でまたうっかりイオンなんていくと半日つぶれる上に男が行ってもひとっつも面白くない。どいつもこいつも大した用事もないくせに(多分)大込みの中ウロウロしてるし、ゾンビがなぜかやたらとショッピングモールとかデパートに集まるのはきっとこれのメタファーでしょ。
 どこの田舎に行っても地方色の無い変わり映えのしない姿でドカンとあらわれて変わり映えのしない男つまんなラインナップで俺を辟易させるイオンこわ!映画館だけで十分です。ちなみにイオンの映画館で観た一番怖いものは実写版シンデレラで継母を嬉々として演じるケイトブランシェット様かな?(さっきWOWWOWでやってたので思い出した)

 イオンといえば、個人的には独力で理解が追い付かない理科の限界でして、電荷だのイオンが出てくるあたりから先は一人で教科書読んでても全然脳の深いところに定着しません。この辺、それなり以上の理解の上に実践できれば解膠材の選択やなんかでかなり無駄玉撃たなくて済みそうなんだけどなあ。
 レベルがはるかに違うとはいえユーザーの研究者の方もちょっと専門から外れたことに関しては「難しくてわかんないんだよね~」なんてことよく言いますし、俺程度じゃしょうがねえかと。どんな変化球でも弾き返してヒットを量産してる西武の秋山も、腕に蚊が止まった程度の接触でクリスティアーノ・ロナウドが4M以上すっ転ぶのをノーファールと見切る審判も別に物理学の天才ってわけじゃなさそうだし(可能性はゼロじゃないけど)
 
 で、先日のイノウエ動画で「ニガリを釉薬に添加して沈殿のやばいのを抑えてみよう!」という、未経験のものにとってはものすごく助かる実験&人柱っぷりに心打たれ、しかも俺と同じくイオンの電荷交換のあたりでギブリ気味になってるのを聞いて(失礼!)、やっぱり勉強してるんだなあと、緩んだ褌を引き締める気分になりました。



 折を見てこの辺の勉強もたまにはしとくと新しい理解の道筋が自分なりにできたりして楽しいんだよね(間違ってそうなことも多いけど)。ガラスの靴だけ真夜中過ぎても消えない理由がついに解明できるかもしれないよ。


 どっちもやらなかった俺から子供たちに言わしてもらうと(どうせこんな文読んじゃいねえだろうが)、学校行くのも勉強するのもちゃんとやっとけよと。荷物になるわけじゃなし、科学も数学も、無駄無駄言われてる微積分ですら必ず実生活&仕事で役に立つ。あと何より学校の勉強頑張ることほど簡単で身になる頑張るってないんだよね~。大人にならねえとわかんないんだけど。
 
 塩化マグネシウムは俺も成形バインダー+焼結助剤として固体のもの使ってるんで釉薬にも使いまわしてみようかと。おかげさまでちょっと試してみたいこと思い付きました。
 
 

 
それにつけても、あしたの窯出しが恐ろしや!イオンこわい


  

2018年6月21日木曜日

カルシアのるつぼ 水和崩壊画像

 梅雨時期ですがカルシアの緻密質のるつぼ
 CaOです。一般陶磁器やってる方には石灰石、炭酸カルシウムCaCO3でおなじみですが、あれも単味で焼くと炭酸ガスが抜けてCaOになるわけです。
 このCaOは、高温でアルミナやシリカと激しく反応して溶けあいます。その性質を利用して釉薬の主要成分として、「溶かす役割。媒溶材」なんて説明されてるんですが、理屈っぽいオジサンとしては「オレ(石灰)から見ればアルミナシリカに溶かされてんだよ!俺のが融点めちゃ高いんですけど?なんでアルミナシリカ視点?」という声が聞こえないこともないですな。割合も少ないし、石灰使わない釉薬はあってもアルミナシリカの入ってないのはまずないので、説明上わかりやすいのかな?長石やカオリンをもっと溶解させるために添加ってことですね。




 例によって説明すると、カルシアは簡単にいうと生石灰ですので空気中の湿気を吸って水和=消化=湿気る、します。石膏の場合は「風邪ひく」ですが、カルシアの場合は「フケル(老ける?)」といってます。ただこの言葉は先輩おじさん俺にオシャクリパクられた方)のパーソナル用語の可能性あり!
 焼き上げてしまえば「焼結する=表面積が減る」+「焼結助剤との固溶体がマトリックスを構成する」で耐消化性上がりますが、原料粉末の段階では猛スピードです。袋の口あけたまま「アラビアのロレンス」なんか見てたら事故ですよ事故。場合によっては火事。というわけで、晴れ間を見て一気に作ったが早いか食い気味に焼きます(言い過ぎ)

 多孔質に比べて当然緻密質は緻密にシンターしてるので耐消化性高いんですけど・・・

 去年の暮れに作ったカルシアのしくじり品を割って湯呑に入れたまま流しの脇にほっぽっておいたものです。湯呑に入れたのは発熱した場合やばそうなので。
 下の写真は焼成後2か月程度のもの
表面や出隅から少しづつ崩れていきます。粉化しちゃう




 で、昨日こんな感じ
まだ固い部分もあるんですがボロボロです。

どうして途中の写真がないのかっていうと、邪魔で棚の向こうによけたらそのまま忘れてたっていう…
 
 カルシア発注、使用の際には保管に気を付けてください。デシケーターで減圧保管するのが筋ですが、密閉容器に入れて空気の動きや入れ替えをなくするだけでも格段に違います。シリカゲルや石灰の乾燥材をお供に。

 釉薬目線で見ると、石灰石を主要構成物としてこれをガラス化させるために長石やカオリンを入れていくとすると、フリーのカルシアが残って上の写真のように崩壊する。からの~溶出(毒じゃないはずですが)ってことになるんじゃないかと推測。石灰マット釉なんてのもモノの本には載ってたり、三角試験での画像なんか見てもわかんないですけど。
 何年もたってから貫入することもあるんですよ!という貫入案件以外の径時変化っていうのは案外今までおざなりだったのかも?まあ普通の食器だったら割れるまで持ちゃいいん気もするんだけどね。

2018年6月20日水曜日

シリーズ石膏でなんかする 石膏置換 離型剤試してみる 闇ヤキモノ教習(仮

 セネガルまで勝っちゃって大混乱に陥ってますな。2点とも幸運に恵まれたとはいえ、守備の規律と攻撃の創造性が整った美しいチームだったなあ。しかもマネがマネらしいところロクスッポなかったのに。アフリカの強豪名物のピッチ外の問題で勝手に壊滅してるなんて話もなさそうだし。
 
 それはさておき石膏ウィークということでちょっとした小ネタを
 
 石膏の中に石膏を流すシチュエーションがあったので軽く紹介します

このアルミの原型を石膏に置き換えます
タダの丸棒じゃなくて複合テーパーになってます

 通常、唐竹割り真っ二つの割り型を取ればいいんですけど、今回は薄く型取りしてその中に石膏を流し込み枠にした方は割り捨てる作戦です。理由はいろいろあるけど仕事の都合です(笑

どうせ壊して捨てるものなのでできる限り薄く
石膏もったいないですからね。

 で、離型剤を縫って溶いた石膏を流し込めばいいわけですが・・・
こういう奥行きのある中に離型剤を上手に塗るのは難しいんですよ。

で、一昨日物置から出てきたクソ小汚い液状カーワックス。確実に10年は立ってるな。
中身がまだあったのでこのワックスを流し込んで排泥!
その後何やらわからない白い粉をスポンジなどで拭きとりました。

水かけてみたらよくはじいてるようなので一本試してみました。(結果、特におすすめはしない。グリスのが全然いい。でも古いせいかも?)

自分はこんなんで内側にグリスなど塗ります
また汚らしい写真ですみませんね

 石膏は硬化時に膨張するのでそれを利用するんですが…
こうやって買って損したのこぎりなどで切り込みを入れておきます。
どこまで切るかですけど肉厚の半分超えてればいいんじゃないでしょうか?
できれば3mm以下ぐらいかなあ?でも突っ切らないように注意

下ごしらえを終えたら石膏を流し込みます。この辺写真無いですけど硬いこと言うなよ~
でホカホカするまで待つと・・・
見えますかね?切込みに沿ってひびが入ってます。
これで捨て型を壊しやすくするんですよ

ヒビに硬い薄板(金尺など)を差し込んでこじると離型します
これは失敗(笑。でも指でポロポロ取れます(グリス、カリ石鹸なら)
ワックスはちょっとはがれにくかったかな?でも使えますよ。

と、言うわけで完成

 いつもと違ってグダグダ書きませんでしたが伝わりますかね?

胆は見込に離型剤を丁寧に、隙なく塗ることです。塗り残しがあるとそこから水気抜かれてへぼ石膏になっちゃいますから。用途によってはグリスぬらぬらでもいいかもです。

2018年6月18日月曜日

石膏ウィークの始まりか

 WCは常にアップセットを期待しているので昨夜は、「どうせドイツがドイツなんでしょ?つまんねえの」って感じで前半だけ見て寝るはずがメキシコ勝利の瞬間までがっつりアガッてしまい、やばい、調子狂う!といった状態のまま朝からドジャッ!と原型が届き石膏流しウィークの幕開け。さすがに寄る年波で一晩中は見れなくなりブラジルースイスはスキップしてますが・・・こっちも見とけばよかった。(かなり寝ぼけた文章)

 で、たまには型でも見せられる範囲でご紹介


 この旋盤仕事はMOT'sの仲間に頼みました~
 相変わらずバッチリ綺麗な金型をあっという間に作ってくれるので大助かり
 言い忘れてたんだけどオオハシ君、結婚おめでとう。

今回のも特に交差いりませんよ!って仕事だけどこれだし!
下手に交差指定しない方がいいのか?焼成歪のがはるかにデカいし!

 しかも、実は明日もウリャッと届く予定。
 石膏を水に落としてちょっと待ってる間に眠っちゃわないように注意!
 
 ジャイアントキリング度が高ければ高いほど生で見る価値があるので、アジアチームの試合とかは見逃せないんですよね。イランとかサウジがドイツとかブラジル相手にうっかり一点勝ってて終盤に日本人としてはあのくそ忌々しい「突然イタイイタイっつってひっくり返る時間稼ぎの猿芝居」を見せつけてほしい。それで腹いっぱい笑いたい!

2018年6月15日金曜日

アルミナの小物

だからちゃんと仕事もしてるってば(笑
高純度アルミナの小物です

四角い焼成皿

さらに小さい熱天秤分析用

蓋には小さい孔が中心に

肩こり養成シリーズが続いてます。
まあ小さいと窯は一発でけりがつくんで窯詰めや窯回しの心配はないんですけどね。

蕎麦猪口の試作品、焼いたよ~

試作品つっても注文仕事はもう終えましたけどね。
夏の蕎麦猪口祭りに向けてここから検討!






やっぱノーマルがいいやね

2018年6月14日木曜日

排泥鋳込み超入門 離型しろよ!スラリー編 闇ヤキモノ教習(仮

 皆さんワールドカップモードにはなりましたか?とっくに私はなってます。何つうか身の回りに限って言えば過去にないレベルで盛り上がってない気がするんですが・・・なんで?
 バイエルンのあいつとかリバプールのデコッパチとかとわがアントラーズの誇る昌子植田コンビが戦うわけでしょ?でもってトップに大迫(ほぼ鹿島)で柴崎(事実上鹿島)からパスが出る。うー、燃えるぜ!みんな試合に出てくれよな!っていうか出せ!ニシノ!


 「離型しろよ!石膏編」はクリアできましたか?
 自戒を込めてもう一度整理すると、成形体が石膏型から外れない理由は?
1、くっ付いてる(はがれない)スラリーが原因
2、引っかかってる(はがれてるけど取り出せない)石膏型に原因
3、収縮して挟み込んだり突っ張ったり抱きついちゃう これも石膏型
と解説しました。

 石膏型の設計ミスをしないこと、上手く型取りすること、鋳込み面を汚したりしないこと、外れない原因のガジガジは丁寧に均すこと。を気を付ければ大丈夫なはずです。あんまり当たり前なんでわざわざ書くの忘れてましたが、よく乾かすこと!これも大事。濡れれば濡れるほど外れにくく、またせっかく鋳込んだ成形体がヨレやすくなります。

 石膏にはどうやら問題なさそうだとなると、はがれない理由はスラリー側にあります。スラリーの方をなんとかしないといけないわけですが・・・、

 初めに断わっておくと今回の話はファイン屋、耐火物屋の間ではなんとなくわかってるような話とはいえ、定量的な検証の証拠がないっていうか、要素が複雑すぎて経験的にこうであろうことが多いと思われる、レベルの内容です。もう、筆者、つまり俺の経験に基づいて「あそうそう、多分こういう理由であろうパターンあるよね」って話をつらつら思いつきながら書いてあるってことを断っておきます。もしかするともっと高レベルの技術者にとっては「そんなんオメー(俺ね)の独断と偏見である」って内容かもしれません。
 そこんとこよろしく!

 始めますよ
 まあ理由は大雑把に二種類じゃないでしょうか?
 1、調整に失敗している
   A・水分量や解膠材の量の調整ミス(ほぼ「水分量多すぎ」だと思います)
   B・混練混合不足
 2、原料調合に失敗している
   調合ってのは土そのもののことです。

 出来合いの購入した坏土を溶かしてスラリーを作った場合、引っ付いちゃって取れないってのは滅多にないと思います。あったとして90%以上は1番の調整ミスじゃないかな?2番は、各原料を自分で配合して作った場合や自分で掘ってきた土でやろうとした場合に限られると思います。ほぼ。
 ただ2番の場合厄介なのは1番のミスがあるかどうかも関係してくるってことですね。

 解決するのは難しいけど解説するのが簡単なので2番から行きますね。
 その土、調合で解膠材(ケイ酸ソーダね)を入れず、普通にコネコネできるような硬さに練ってみた時にやたらと手に引っ付いたりネバツク奴は注意信号。あ、ちょっと柔いから石膏型に吸わせてみっか!ぐらいに水っぽくしてからペタンと石膏板に叩きつけたりしてみてください。ドベ状にしたものを置いてみてもいいです。で待つ。
 いつもの知ってる感じに石膏板から剥がれないのがあるんですよ。こういうのはそのままではまず離型しない土です。

 自分の経験でいうと、うちで井戸掘った時に井戸屋さんが水止めに使ってる粘土(黄色い掘ったまんまのハタキ土。ちょっとそのままでは耐火度が低い感じ)をもらったんですよね。あれはやたらと可塑性がデカくてべったべたに粘ります。あれは単味ではダメでした。石膏にメッチャつく。ロクロでもタタラでも底切れ100%みたいな感じ。シャモット混ぜて使えるようにしたんですが、加えた量はなんと同量以上。なかなか使いやすくて焼き上がりもよかったです。が、そんでも鋳込みはダメでしたね~。
 1tだか500kgだかで2万しないぐらい安いそうなんで、マジで一袋お願いしようかといまだに悩んでます。礫とかゴミの量の安定感は保証できないようなので、いろいろめんどくさそうで二の足踏んでますが・・・
 
 原料を自分で配合した場合も同様に試せます。まず水のみでやわらかめに練ってみる。石膏に引っ付ける。剥がれるか剥がれないか?

 上手くいかなければ調合を変える必要がありそうです。
 粘土鉱物の質と量を増減させることでほぼほぼ解決できます。

 質、というのはさっきも話しましたが超ベタベタ特性の、極端な例ですがベントナイト的なもの割合を減らす、あるいはそれもう使うのやめて別なものに変えるとかですね。
 そこまでしたことないけど一部、あるいは全部を煆焼してべたつきを殺す手もありそうです。これなら焼き上げ後の見てくれに変化は少ないはず。

 量というのは、カオリンでも木節でもガイロメでもいいんですけどとにかく割合量を変化させる。他の原料の粒度や成分との兼ね合いでどっちにするか微妙(もしくはってみんとわからん)ですが、ドボツキ気味、べたつき気味なら減らし方向ってイメージかも?
 増やすにしろ減らすにしろそんなピンポイントではないはずなんで5%以上増やしたり減らしたりして試してみましょう。まあ基本的にはカオリンに比べて木節やガイロメの方が身離れがいいように感じます。個人の感想です。

 で、今言いました他の原料との兼ね合いって話ですが、粉の粒度のバランスが大きく影響します。これは何かの原料単独でもそうで、ちょうどいい粒子のサイズと水分量があるんですよね。

 ここから先は水分量と絡めた話になりそうなので1番に対する解説に移ります。

 まず水分量に関して、場合によってはきちんと正しいとも言い切れないけどわかりやすく話をざっとしておくと・・・
 硬めに練った土は石膏板からすぐ剥がれるけどベタベタの土は綺麗にはがれるまで時間がかかりますよね。ひっついたまま残っちゃったりする部分があったり。
 排泥にかぎらず鋳込みの場合も同じで製作可能な限り水分量は少ないほうがいいんです。あまりドロッこいスラリーだと排泥時や成形体の表面に悪影響ある場合もあるんで、欲しい出来上がり加減を得られる範囲で最小限度の水分量が望ましい。という言い方になるかな?

 で、調合
 ファインセラミックスの一部を除いて、ヤキモノの原料中の粒度分布はまったく均一な粒度に近いピーク曲線を持ってるわけでなくて粗いのもあればめちゃ微細な粒子までばらついてるわけです。これのバランスが素地の肌理の差になってるわけなんですが、見てくれ、さわり心地のザラザラ具合だけじゃなくて、強度、作りやすさ、反り歪み耐性、そして収縮に大きく影響してきます。

 解膠したスラリー中の粒子は自由に動けるんですが、粘土によって動けるスピードが変わってきます。粘っこければ微粉から粗粒までが均一に混ざった状態を長い間キープできますし、しゃぶしゃぶならその逆ですね。
 幅広い粒度分布の原料粉末に、必要以上の水分量があるとどうなるか。
 これまた大雑把で極端な図で申し訳ないんですが、石膏型表面から細かい順に層となって肉づいていきます。この図は壁側(高さ方向)ですが、底だと
 
こんな感じになり気味。あくまで極端な図ですよ!
 実際はもっと混ざり合ってますし、排泥すると見込の表面にも微粉末が浮くんですが。

 こうなると、粗い粒子の層の部分はロクスッタマ収縮しないで突っ張る形になります。表面は表面でめちゃ細かい粘り気担当の連中が層になっちゃって石膏型に張り付きやすくなり、仮に外れても表面一皮だけ収縮が大きいので割れの原因になります。割れ方は様々で、粗粒多い配合ですと、細かい網目状に剥がれるようにひび割れますし、粒度分布が狭いと引っ張られて身まで割れが進行する場合もあります。割れるタイミングも乾燥に割れてきたり、焼いたらヒビる場合もあります(多くは低温度の内にヒビ入ってます)
 この辺は離型してから気が付くと割れてます!と質問くれた神奈川県のNさん(お便りとご注文ありがとうございます)も、もしかしたら参考になるかもしれません。

 今の部分で勘のよい方はお分かりかと思いますが、「水分量が多い=乾燥収縮が多い」は常に真ではありません!!

 参考までに、「この土にはこの作り方が向いてます表」みたいなものが土屋さんからいただけますが、粗いのにはタタラOK!鋳込み×!ってなってるじゃないですか?あれは自分の経験上では鋳込めないんじゃなくて、普通に排泥鋳込みしたらどんなに頑張っても粗いのが見込に浮いちゃってザラザラになりますよって意味です。たぶん。板ものなんかは粗いほうが曲がりが出ないでいいので排泥ではなく両面吸わせのソリッド鋳込み=固形鋳込みで作るといいのができます。まあ、この辺はそのうち・・・

 で、問題の水分量ですが、いきなり解膠材何%で水何%です、なんて答えは出ないんですよね。
 できる限り水を少なく作れるようにする。
 いつまでもドボドボでだめっす。上手くトロトロしてくれませんって場合は解膠材を増やす。
 何をどれだけ入れたかメモって範囲を見つける。の繰り返しです。

 自分のやり方は、解膠材をある程度入れる。水だけを少しづつ増していき、何とか流せそうだぞって時に石膏に滴を落として離型を見る。を繰り返して上限と下限の範囲を探ります。
 次に、さっきより多めの%で解膠材を入れる。以下同文。

 解膠材は、乾いたと思ってもすぐにチクる(チクソトロピーでドロドロ化する)ようではもう多い。というのを参考に。
 解膠材は0.3%0.5%前後で、1%なんてとても多過ぎなことになると思います。かなり狭い範囲で難しいように感じますが、土の量に対して目方で考えれば特にピンポイントではなく、慣れてくれば勘でやっても間違わないと思います。自分たちがエライって言ってるわけじゃないですけどファインの解膠材は原料との組み合わせによってはとんでもなく渋いのでそれに比べればちょろいもんですよぉ~!

 


 特に、売ってる土からスラリー作った場合なら、これだけで何とかなるはずです。
 あとね、これ言っても始まらないんですけどね。
 ぶっちゃけ経験です


後、ほんとに感覚で申し訳ありませんが、
 つーっと糸を引くように細く切れずにたらせるのがいい!といいますけど、マジです。できる限り濃くしてもこうなるようならまず綺麗に外れます。
 でも水飴みたいにテロ~~~な感じになるときはほぼチクります。
 ツーとテロ~~の違いは説明できません。これまた経験(笑


 
 

 

2018年6月11日月曜日

排泥鋳込み超入門 素地VS石膏型、離型しろよ! 闇ヤキモノ教習(仮

 終わった気になってた気がしないでもない鋳込み入門ですが、あれで終わらせちゃああんまし意味ないですよね。ちょっと工程をなぞっただけですからね。そんで上手くいきゃあ誰も苦労しねえよ~ってことで、
「離型しない&離型したけどそのあと割れる」
という質問が来てるんですよね。

 どちらも詳しく調べないことにはわかりませんし、調べてもわかんない可能性も大なんですが、こういうパターンありますよ、ってことをいくつか並べてみます。
とりあえず「離型しない問題」から。「離型したあと割れる問題」についてはまた次回以降。

 原因の大元は二つ、原料=スラリー(泥漿)に原因があるばあいと、石膏型に原因がある場合以外ありません。他になんかありますかね?ないですよね?多分。

 身もフタもない話ですが、どっちにしろ一番簡単で早いのはやり直しです。石膏型もスラリーもやり直してみましょう。やり直してみて上手くできるんだったらダメだったときのやつはどこかが間違ってたはずで、相違点がわかればよし、わかんなかったらしょうがない。実はそんなことは本職でも結構あります(俺だけじゃないはず、きっと)。案外グズグズいじくって検討するより話が早いモノです(検討はもちろん絶対必要)
 ダメだったのとうまくいったのは絶対混ぜないこと!
 
 とりあえず、どっちに原因があるのか?
 鋳込み直前!状態のスラリーを一滴二滴石膏型の側面でも口元周りでもどこでもいいので油っ気や薬品(カリ石鹸ね)に汚れてないワリカシ綺麗な面に垂らしてみてください。サンドペーパーやナイフの刃などできれいに削ってからでもイイです。粉ははたくこと。
 試してみる石膏は複数個用意して、それぞれに滴を垂らします。
 10分20分、一時間たってもどの石膏からもポロリときれいに取れないようならスラリー側の問題。いくつか試した石膏のうち、一個でもポロポロ取れるんだったら石膏型の問題だと考えていいと思います。

 簡単なのは石膏型の方、これには、設計ミスと製作や管理のミスの二つがあります(もちろんツープラトンの場合もある)。

 設計ミスの場合、
 設計ミスの場合はすべての面から成形体が外れていても抜けません。リンゴつかんだら手が抜けない。みたいな感じ。

 1、基本中の基本ですが、逆テーパー、オーバーハングになってる部分がある
大雑把に書くとこういうことですが・・・
あまりシンプル形状でない場合、よく見ると細かい部分であったりします

こういう口すぼまりの場合は、抜けませんから、底で割ります

この手のミス、「なこたわかってるよ!」って単純な話ですが、案外このレベルでミスってた話は耳にしますよ。
単純な錐台形状ならこんなんでも抜けるんですよね。
てなわけでこんがらがっちゃうこともあるのかな?

 
 2、細かい凹凸が多くて引っかかる部分がある。収縮に引きずられて締まっちゃってる
 勾配に問題はないはずなんだけど抜けないのはこのパターンもありえます
端的な図ですが、これもありがち。勾配問題ないはずなのに、抜けないかもよ?

 ビニール人形なんかを型取りすると、割り線通りにやっても抜けないことがあります。
 ああいうのは少々細かいところ引っかかったりしても材質的に千切れないでポコっとべりっと引っこ抜けるんだと思うんですよね。粘土の生体にはその強度や弾性がないと。
 ポケモンとかつくろうと思ってる人はキャラよく考えた方がいいですよ!
 私が普段やってるファインの場合は粘土鉱物使いませんから可塑性、弾性ほぼほぼゼロで、粘り強さがないもんで、ちょっとしたことでまず割れます。

 以上、抜勾配と凹凸の具合によく注意して設計しましょう。

 製作ミス、管理ミスの場合
1、気泡が表面に出てきちゃった。
 これはある程度仕方ない面もありますね。そりゃたまにはなりますよ。いや結構か?
 大きい気泡があるとそこに入り込んでイボになっちゃったスラリーも成形体の本体とつながってるので、イボが切れないと抜けません。スラリーをあらかじめ埋め込んでみたり
テクニックとしてはあるんですが、あんまりいやだったら作り直し!

2、表面がガサガサになっちゃった。
 原型と流した石膏の離型がうまくなくてちょっと引っ付いちゃったりします。あとが残るんですよね。上手いスラリーならものともしないもんなんですが、それも程度によります。何にしろ表面積は小さいほうがいいのは当たり前で、ペーパーできれいに整え直したり、いっそ大きなRに掘り直す手もあります(この手は気泡の場合でも使えますね。)
 使ってるうちに整形面の表面がどんどん荒れて来てって場合もありますよ。
 
3、油っ気で汚れてる。とにかく吸いの悪い部分がある。
 成形面が何かしら汚れるといいことはあまりありません。吸いが悪くなって均質な身にならず、そこだけ引けちゃったりするんですが、なぜか部分的にどうしてもそこだけ身が剥がれない、って場合もあるんですよ。
 これらもペーパーで研磨したり、いらないスラリーで何度も鋳込んだりして洗浄するなどしてみましょう。直る場合もあります。
 後、案外初心者の内にやってしまいそうなのは…
これ、この持ち方!
この石膏はこれから捨てるところだからいいのだが・・・

 80%以上はトイレで手もロクスッポ洗わない男子諸君(当社調査結果)のどこで何触ってるかわかんないオゾマシイ手で成形面にダイレクトタッチ!
 これやったら俺が修行してた製陶所では死刑です!
 埃だらけの窯場の裏とか、誰か酸のきついのがいたみたいで床の鉄板の錆びたトイレ掃除とかやらされますよ。
 手袋しようがエタノールに突っ込んでガシガシ洗おうが触れてはいけません。

 全然関係ないんですが、ずいぶん前ソダーバーグの「コンテイジョン」っていうウイルスやばい系映画を見に行ったとき、「映画館の男子トイレで本当に全員が手を丁寧に洗ってる」というのを目撃しました。あんなに丁寧に手を洗う男子だらけのトイレは後にも先にも見たことありません。
 映画自体もメチャンコ面白いので綺麗好きじゃない方にはお勧めです。 

長くなりましたが石膏型に関してはこんなところかと思います。
少々古い石膏でも持ちが悪かったりボロボロするだけで外れないってのはあんまり関係ないと思ってます。やっぱり作り方使い方ですよね。


スラリーに関しては次回に回しますが、とにかくいいスラリー、滑らかなスラリーを作るのが胆。

 どうしても水分量の低いうえに滑らかなスラリーを作るのは大変だ!と感じている方には、ケイ酸ソーダの添加量、水分量の吟味だけでなく、ハンドミキサーや、フェイクボールミル使用も考えてみてください。棒でぐるぐるやるだけじゃあ大変ですからね。

 フェイクボールミルとは何度か紹介していますが、ポリの広口瓶にビー玉入れてガラガラしちゃおうって奴でして、原料をもっと細磨するという用途ではほとんど話になりませんが(死ぬほどやってみるとわかりますけどビンが削れていきます)、原土、ハタキではないすでに微粉末になってる状態の原料粉末を混合混練するぐらいならこれで沢山だととりあえず感じています。何しろ磁器ポットとアルミナボール揃えるだけでも大変なのに本職ならいざ知らず、アマチュアの方がモートル架台なんて買った日には、請求書と離婚届が同時に届きかねませんからね。今回必要分だけ粗すぎる二次粒子とかダマ擂って水分いきわたらせるだけですのでチープにやってみましょうって感じ。ただし3L超えてくるとかなり大変です。
 やり方は過去の記事に出ていますので読んでみてください。

 難しいのがビー玉のゲットの仕方だったりして。 
 今ビー玉なんて買おうと思ってもどこで買ったらいいのかわかんないですね。
 昔みたいにその辺にはメンコとかブリキの独楽売ってる駄菓子屋もなければ、塩もたばこも缶詰もサンポールも蚊取り線香もせんべいもボールペンもフェリックス君ガムも売ってて店先には電話とポストと野菜の種と少年ジャンプと女性自身が並んでるようなバアチャン屋もないですものね。
 ショッピングモール行くと何とかいう三丁目の夕日感丸出しの駄菓子屋がありますけどコマにしろおはじきにしろ高い高い。あれじゃあおこちゃまが小遣いで買えねえよ!

 腕に覚えのある方には以下のやり方がおすすめなんですが… 
 1、公園とかでビー玉やってる子供たちに割り込む(だからそんなのいるのか?)
 2、「3倍にして返すから」と言って何個か借りる
 3、かつての感覚が蘇り子供たち全員球切れになるまで弾き飛ばす
 4、必要分だけ確保したら残りは返す。
 5、「みんなで平等に分けるんだぞ!」と微笑んで歩き出す
 6、「イップ師匠!イップ師匠!」と子供たちが弟子入り

 自分は、この椿三十郎方式で子供の頃集めたビー玉が実家に何箱もあったんでそれ使ってます。
 ビー玉も今時は通販なのかね?


ジルコニア三種

 ジルコニアのるつぼ三種。

 小さいるつぼが数重なってる写真は、先日、焼成直前に生で紹介した状態のまま焼成、台板ごと取り出してそのまま撮影した写真です。
 焼成収縮してるのがよくわかると思います。
もしヤキモノがすべて焼いても収縮しなかったらかなり世界は変わるはずなんですけどね。