2018年9月2日日曜日

安全性問題シリーズ まとめてみる 闇ヤキモノ教習(仮

 作陶するにあたっての安全性問題。初回は概論的に、と手を付けました前回、とっ散らかっちゃった気がするんでまとめてみますね。

 改めていろいろなヤキモノ本ゴソゴソして安全性に関する記述をザザッと読み直しもしたんで、それらも参考にしつつ記します。前回に言ったこと言ってないことゴチャマゼだとは思いますけど・・・
 
 まず、常識こそが最大の判断基準である。そこに従って適切な判断を常にしていれば、大方危険は避けられるはずです。もちろん万全に万全を期すべき場合や材料、危険性もありえますから、必ず理性的な態度でもって、判断の程度によってはたとえ周りからは過剰とも思われるディフェンス策(もちろんそれをしない、使わない、という選択肢も含まれますよ)を取っても当然よい、いや取れ。別に万単位の観衆の前で残り15分自陣でボール回しするわけでなし誰からもブーイングは出ません。作るのはあなたです。正しい知識さえ持っていればほとんどの材料は安全に使えるはずですが、「正しさ」の担保は不明瞭で仕方ない。石鹸屋とか芳香剤屋によってあみだされた新しい臭さや汚れが毎年CMに登場するように、化学分析、時代の進歩によって危険性も常に書き換えられてるはずです。これが一番難しいんだけど我々も情報、知識、考え方を時代に合わせる必要があります。頭の中の話であって床屋とか歯医者の設備や外観じゃないんだから、そこまで大変ではないはず。
 
 一番大事なことは、「○○は有毒」などといった個別の大雑把な知識そのものだけではなく、プロアマを問わずに作陶中の安全に対する態度であると思います。

 具体的な材料名、化合物名等を上げて、これは危険これは安全などという線引きをすることは、とりあえずここではしません(個人的にはそれなり以上にしています、もちろん)
 
 作陶におけるの原料素材由来の危険は、
 粉塵の吸入による塵肺罹患、
 有毒性材料を扱うことからくる毒害、
 で、もう一つ、前回忘れちゃってたんですが、
 焼成中に有毒ガスが発生する危険性
 の三つが主かと思います。
 本当は焼成された釉薬や素地の分解、溶解、からの有毒性物質の溶出というのももちろんあるんですが、それはとりあえず今回も触れません。


1、有毒無毒にかかわらず、粉塵の吸入は有害と考えましょう。作業場の埃も一緒です。

2、実際、体内に入ってしまうと毒性を発揮するものも少なくないです。(「少ない」と間違って書いたまま1日経ってました、すみません「有害なものが少なくない=多い」です)

3、当然、自分の使う素材に関してできる限り自分で必ず複数あたって調べて判断をつけておきましょう。ネットや本や人のせいにしない。

4、素地、釉薬にかかわらず陶磁器の素材は一切口に入れたりしないこと。赤ちゃんじゃないんだから

5、原料調合中はもちろん、作業中の服装、装備は常に気を払いましょう。終わったらすぐ着替える!明日も同じの着たりしない!

6、作業中はこまめに手や顔など洗う。石鹸もちゃんと使う。

7、作業中簡単にモノ食ったり飲んだりしない。

8、作業中でもマメに掃除する。

9、換気によく注意する。

 なんかだんだん小学生に配られる「夏休みの誓い」みたいな感じになってきちゃいましたけどどうですか?お前これ全部できてんの?って意見も聞こえてきそう。
 政治家も作家も棋士も色紙とか扇子に《公正明大》とか《泰然自若》とか《明鏡止水》とか揮毫するでしょ?あれなんか、テメェじゃ出来もしねえことをせっせと毎回書いてるわけ。自分を戒めてんですよ、きっと。それと一緒だと言っておきましょう。

 もちろん、知ってる限りヤキモノ屋さんは、材料個別に対する知識や問題意識の高さは個々に差はあれど、こんなこと全部わかってます。学校行ってれば教わってると思うし、俺みたいに会社で教育される場合もあるし、そもそもこれって度を越したバカでもなければ常識の範囲内ですよね。こう上から目線でいわれてみりゃ「ナニ正論言ってんだ」ってムカつく感じでしょ。俺も自分で書いててムカついたもん。 

 まあ正直実際のところは、メンドくせえだけとか、有害性の評価の違いによるとか、芸術の為なら毒など恐れぬとか、単にマスクなんて息苦しいとか、いつまでたっても苦しい家計を思えば早めに死んで保険金もらった方が家族の為なんじゃないか?という動機による緩慢な自殺とか、理由はともかく、場合場合の自分流線引きで全部完璧には守ってないことが多いですけどね。そこはもちろんそれぞれの「適切な判断」の上で勝手にやってることだと考えて、自分の判断の参考にはしないでください。

 あと、これは俺が言うことじゃないんですけど、人を使ってるような場合、つまり、弟子(と言う名の奴隷)、正規非正規を問わず従業員、個人事業でもアシスタント(と言う名の奴隷)を働かせる場合は、わかってんだろうな!彼ら彼女らの未来と人生もあんたの対応にかかってくるよ!

 交通事故と違って、いきなりガツンなんてことはまずなくて、ちょっとずつちょっとずつ蝕まれる系の被害なのでなかなか切実にはなれないんですけど、毒埃吸ってちょっとずつでも体悪くしてたんじゃせっかくの楽しい作陶生活なんて続けられなくなっちゃうからね。

 少なくともこういったことをきちんと対応できれば安全なはずです(自分で気を付けリスト、装備、対応策はどんどん増やしてください)

 とりあえずここからは具体的に作業中多少盲点になりそうな部分を…

 とりあえず無毒なはずでも粉塵にはとにかく注意。特にシリカ(SiO2、硅石)は毒性そのものはないけど珪肺っつって塵肺の横綱です。釉だけじゃなく素地でも主要成分。調合時に限らず舞いまくってるだろし、床や机にかなり付着してるはずですが、意外と穴は削りの時、特に磁器ものをだいぶ乾いてからシャリシャリ粉切子出して削る人は要注意。
 ヘビースモーカーはヤニの膜がコーティングになって粉末が直接肺に触れない、という屁理屈がありますが笑うだけにして真に受けないように。

 ちなみに俺は純シリカでルツボや耐火物製作すると腕周りがかゆくカサカサになります。湿気とられるみたい。指先には使えないけど手首から腕はニベアとかアトリックスみたいなの塗ってます。長袖着ててもゴムじゃないと入ってくるよ。

 とにかく服装とマスクは適切に!女性の方はマスクをするだけで知らないボンクラ男子からは美人に見える(妄想しちゃう、看護婦さんみんな美人説の原因)なので、結局は付き合う気もない他人に対してのみですが利点アリ。

 掃除は濡れ拭き、湿し掃きが基本。
 私は床を箒で掃く時も霧吹きで床も空中もシュッシュしながら粉塵をできる限り抑えて掃きます。他にも濡れ雑巾や濡れモップがベストですよ。細かいおがくず湿したものばらまいてする清掃法も何かの本で読みました。きっとバアさまが畳に茶殻まくのと一緒だね。もちろん油で拭くのもあります。
 
 原料は袋に入って売られてますが、できる限り濡れブキ出来るような容器に入れましょう。20Kg~30Kgの紙袋ではかなり大変と思いますが、1キロ2キロのゆずコブクロならなるべくやって!できればタッパーよりネジ蓋やキャニスタータイプの方がいいです。並べたときの見た目もシャレオツかもね。コツは広口のものを使うこと、で、できる限り杓子の類ですくい取って秤量すること。
 比重が軽かったりかなり細かい微粉末だったりでやたら舞い上がる材料も多いです。材料ごとのそういう違いも頭に入れておき、そういったのはなるべく容器に入れましょう。ラベルを切り取って貼り付けておくと中身がよくわかります。
 俺みたいにただ、青なんてだけ書いとくとそれがどこのなんつう青だったか、練りこみ絵具だったか下絵用だったかもわかんなくなりますよ。どうしよう、あれ。

 原料を篩にかけるときはみんな気を付けますけど、水の中に投入する時にうっかりブワってやっちまいがちなんで要注意。ミキサー掛けるときも要注意。

 施有する時、こぼした釉薬なんかもできる限り濡れてるうちに処理する。ハツルのも掃くのも乾いてからの方が、やりやすいんだけどね。濡らした新聞紙使うことが多いかな。
 手に付いた釉薬をシャツの裾とかズボンでパンパンはたくのも避けてちゃんとタオルで拭きましょう。トイレの後じゃないんだから。え?おれだけ?

 俺はやらないんですけどコンプレッサーや霧吹きを使った施釉は、そういった意味でマジに気を付けましょう。ダースベーダーみたいのをちゃんと装着して、きちんと排気設備アリのブースを作って隔離して、ブースの壁を濡らしたり、もっと言えば壁面に水を流しながらがベストだそうです。表でやるのも手ですが、釉の組成によっては環境に対する負荷も考えなくてはいけない場合がありそう。
 どんなに迷惑してるからって隣のドラ猫屋敷の庭に向かってスプレーしたりしてもいけません。
 
 
 俺個人的に大好きですし、誰とは言いませんけどあっちの方のご立派衛門さん(複数人いる、どなたもニンゲンコクホーとかだったりする)などなどビッグネームじいさんが、馬鹿でかい大皿抱えて、至近距離からノーガードベア顔面で霧吹き咥えてブーブーやってる姿って、死ぬほどかっこよくてあこがれちゃうんだよね~。
 でも、これ多分案外盲点で、あの霧吹き使って釉薬吹くって相当気を付けた方がいいですよ!!やったことある人ならわかると思うけど鼻ン中白くなってくる。そりゃ鼻毛ってのはそのために生えてんだろうけど。
 先代の○○えもん(ドラではない)、年がら年中あんなことしててもジジイになっても元気だったよな!平気なんじゃん?などと考えずに、あんたんちの仕事は先祖代々国の誇りなんだから体は大事にしてくれよな!と心配しましょう。
 とにかく釉薬噴霧はそこらに粉末が舞わないように気を付けましょう

 などと書いていたらもう夜中の二時前でびっくり。クッソーしくじった!

 最後にフッ化物、塩化物、硫化物を使用した場合だけでなく焼成時には一酸化炭素や亜硫酸ガス等の有害たりえる排気が出ます。また燃焼式炉の場合は室内酸素をかなり大量にもってかれたりすることも含めて十分換気に気を付けましょう!と付け加えます。大事。

 グダグダ連ねましたが、安全安全と騒いだり、危険危険と騒ぐのが目的ではありません。
 陶磁器の原料素材は適切に対応すれば、ほとんど安全に使用でき、危険を避けることができます。そのために安全意識を高め、必要な知識を常に更新していきましょう。
 
 やっぱまとまんなかったなあ~
 参考になれば幸いです
 

 


2 件のコメント:

  1. とても参考になります、今まで、もやもやと頭の中でこんなもんなんだろうなあと考えていたことが、文章化されていて、問題を、矮小化しない、パニック化しない客観的な記述に感謝です。

    細かい注意事項を、細かく実行していくことが、絶対はないのでしょうけど、安全性への確率は高まるということだと理解しました。

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    1. よく考えればそりゃそうだよなってことしか書いてないんで、実質何も言ってないのと一緒なんですけどね(笑
       こんなウンコ文章でも判断の一助になれればうれしいです。

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