2018年4月15日日曜日

土を知っとこう 本焼成後 その2 闇ヤキモノ教習(仮

    前回までのあらすじ
 四月になり陶芸教室に通いだしたパチーノの楽しそうな話を聞いて、なぜか面白くない俺は、本焼成後、工程の各段階で重量、寸法を計測したテストピースから収縮率や割り掛け、減量分を割り出して記録。むしゃくしゃした気分のままテストピースを水の中に叩き込んだ。

 本焼成後第二部として、重量、寸法の収縮に関する以外の素地の性質を知ることにします。

 大まかに言って吸水、気孔に関することになります。セラミックの計測には他にも各強度や導電性に関することなど結構いろいろあるんですが、この「闇ヤキモノ教習(仮」では、いわゆる「陶芸」として製作される陶磁器を作る使う際に知っとけばいいことに絞って簡略化します。(はじめ日常生活って書いたんですが、それだと便器や洗面台なんかの衛生陶器とかも入り込んできて話がこんがらがるので)

 相変わらず例によって、「必要以上に理屈っぽいくせに根本的にバカ」という普段話してて一番めんどくさい類が書く説明文ですので、私としてはメチャンコ気を使って書いてますが、明らかな間違い、ミスがあった場合はすぐに訂正しますのでポッタリーサイトパトローラーの皆さんよろしくご指摘ください。

 では吸水率の求め方。
 1・テストピースを沸騰したお湯の中で3時間以上煮沸します。でも面倒だしエネルギーロスですので、前回最後にやったように水の中に浸けておいてください。丸一日以上はやったほうがいいかな?「鍋物にでも入れておけ!」というネタも昔あったんですが誰かやったって話は聞いてません。

 丸一日の理由ですが、一日経って平気だったのに三日経ったらテーブルが濡れるほど水が漏ってたってなんてことは今まで気が付かないのでまあいいんじゃねえのってことです(あり得るかあり得ないかでいえばあり得そうですが・・・)

 2・水中から出した濡れたテストピースを布で拭きます。乾布だったかよく絞った布だったか忘れましたがどっちでもいいや。
 とにかくビショビショではない状態のテストピースの重量を測ります。この重量を乾燥重量に対して「飽水重量(給水重量)」といいます。今回は何かとあやふやなんで「一応飽水重量」とでもしときますか。
 厳密に知りたい人、測りたい人は三時間煮沸している間に「耐火煉瓦の比重試験」かなんかでググるといいですよ。時間があまったら10~15万円持って理化学用の電子天秤を買いに行きましょう(どこにだ?)
 実は、ガチの乾燥重量は三時間以上煮沸後に百何十度の中で乾燥させながら一定の時間おいて目方を測って何回か連続で重量の変化がなくなるまでやるんじゃなかったかな?でも一般的には窯出し直後に測ってると思います。

(飽水重量ー乾燥重量)÷乾燥重量×100が吸水率ですが、飽水重量÷乾燥重量から1ひいても多分変わりません。

 このシリーズで使ったテストピースの「一応飽水重量」は、
 1230℃焼成品、乾燥重量36.0gに対して37.5gでした。
 よって上の式から吸水率は4.16%
 
 同様に、1260℃焼成品は乾燥重量20.0gに対して20.4g
 吸水率は2%です。

 まじかよそんなに変わるのかな?どっかで失敗してるかもね。

 まあとりあえず以上が「一応吸水率(そんな言葉はないですよ)」の計測法です。

 皆さん、これ意味あんの?見込みの水が漏れなきゃいいんじゃないの?と思うかもしれませんが、まあ確かに液体が入る器ものなら、その通りかもしれないですが、水を遮断することは素地の絶対の役割ではありません。たとえば植木鉢なら液体もガスも必要なだけ通さなきゃいけないですしね。
 
 なにより自分の製作品の吸水率答えられないよりは、「たまに検査するんですが、これの場合大体3%~5%です」とか答えられたほうがよくないですか?

  

 まあとにかく本焼成された焼結体素地の気孔の状態を断面図にしてこれ以上ないほど簡潔にCGにしてみましたのでご覧ください
CG=ただペイントで書いた図


 計測する目的や立場、またどこまで精細に調べるかによって、いくつか別な言い方や語釈、定義もあるかと思いますが、とりあえず素地中の気孔はこのようになっています。
 また、この図だと勘違いしそうですが、これらははっきり目で見て見えるほど大きいとは限りません、というか普通違います。まあそういうのはスとかピンホールですよね。もちろんそれらも含めます。

 1・閉気孔(密閉気孔、独立気孔)
 素地の中に密閉された大気とは遮断された気孔。よってこの中には水などが容易に浸入することはありません。飽水重量には無関係。 

 2・開気孔(解放気孔)
 素地中から大気とつながってる気孔。ここには水が入り込みます。

 3・貫通気孔
 気孔が繋がって反対面まで続いちゃってる気孔。もうお分かりのように水が漏れます。開気孔の一種ですね。この貫通気孔と2番の開気孔に水を含んだ状態がさっきまでの飽水重量になります。

 気孔同士がつながっている状態は連続気孔っていうんですが、貫通気孔とは限りませんね。完全に密閉された独立の連続気孔も構造上あり得ます。

 これらが焼成温度(というかかかったカロリー)、成形坏土の粒子間の粗密、そもそも組成や調合(土の種類だね)、だったりで変わってくるわけです。これらを自分なりに分かったうえで、何を作るときにはどの土をどうしたらいいかってことを考えられるようにすると、まあ結果大した変わんなくても一段高次でモノを作っていることになるんじゃないでしょうか?
 「神は細部に宿る」という言葉は、形や見た目のことだけじゃなくて思考の中にもぶち込んでおきたいよね~。特にオレ正確超雑なんで。

 とまあ、エラソーなノーガキ垂れましたが、ごく日常的な問題としては多くの方にとって、「貫通気孔は中身が漏っちゃうじゃん。どうしたら防げるの?」ってことですよね。
 それについては「素地の特性を測る」こととは別の話、私もそろそろ朝鋳込んだるつぼの離型の時間ですので別の機会に譲ります。
 「よく考えて上手に作れよ!」という心底無責任な一言で締めたいと思います。

 「土を知っとこう」という意味では、成形のしやすさ、乾燥歪、焼成歪の出やすさ、掌でクリクリ紐うんこ作った時の切れにくさ、どのぐらい乾いても化粧掛けてクラッシュしないか、などなどありますが、そこらへんは成形に関する個別の都合ですし、俺にここでなんか言う知見はないので置いておきます。めちゃ重要ですけどね。  

0 件のコメント:

コメントを投稿