2018年2月26日月曜日

シリーズ「石膏でなんかする」とりあえず固めてみよう 闇ヤキモノ教習(仮)

 唐突に始まりました、「石膏でなんかしよう」
なんかって何だよって感じですが、闇ヤキモノ教習(仮)の一環ですのでそのつもりで・・・

 今日一日石膏型作ってたんですが、よく考えたら石膏型ってあんまり情報出回ってないなと…、こりゃいいネタ出来たかなと、じゃあついでに遊びの型も作ってみてシリーズ記事にしようかなと。そんな感じです

 まずはじめに言っておくことで重大な話があります。

 石膏はおそらくどの自治体も捨ててはいけないことになってるということ、産廃業者に出すしかないものになる、ということです。


 また、技術面に関しても恐ろしいことに石膏メーカーのHP以外には、ほぼほぼネットの中に正しいであろう情報はないと覚悟してください。

 特に「チエブクロの類」は嘘ばっかりかちょっとやったことがないわけでもない程度でノーガキブッコいてるのが多いですので、中にはあるはずの立派な情報も見分けられない今、どんなに気になっても見てはいけません。

 自分がササッと検索した限り、おお、こいつは上手い!凄い!というページもありますが、それはやきもの屋さん、モデリング屋さんなどプロ(もしくは度を越したレベルのアマチュア)のごく一部で、中にはそんな方たちの中にも、これは段取り悪いだろってのも多いんですよ。(そしてそんな中の一人が俺だったりもします。多分)

 ただ自分は90%石膏型でやきもの作って飯食ってますので最悪の間違いではない自信はあります。他の方も同じなんだと思います。


 世の中に手際よくて理解もしやすい石膏型の作り方の情報が広まって欲しいと思います。石膏メーカーの皆さん、まだ足りませんよ!製品のアピールにもなるはずですから是非わかりやすい石膏型講座をアップしてください!


 少なくとも自分のやり方は離型材に関すること以外は石膏メーカーの方に直接聞いたやり方をもとにしています。


 さて、第一回は「とりあえず固めてみよう」
焼石膏の粉末に水を加えてこんな風に固めてみましょう。


用意するものは
 焼石膏粉末
 秤
 混ぜるための容器(プラの水差し◎牛乳パック△)
 洗い用のバケツ(ボロバケツでOK)
 掻き混ぜようの丸い棒
 タイマー、時計(時間を測ります)
 プリンとかの空き容器(ここに入れて固める)
 離型剤(グリス、シリコンスプレー等)
 古新聞、ボロキレ等


 手順
1、流し込むモノの準備をする
 今回はプリンの空き容器をいくつか並べておけばOKです。
 離型剤ですが、さっき食って洗ったばかりのプリン容器でしたら全く不要です。

 他にもまだ濡れている粘土の原型、新品の金物やガラス、プラスチックにカリ石鹸を塗ってる人がいますが不要です。洗うだけでOKです。(というかアホちゃうかと思ってるんですが俺がアホですか?)

 使い古しで多少ガサガサしてきている場合、また新品でもどうしてもそういったものに離型剤を塗りたくてしょうがない場合はシリコンスプレーか安手のグリスがおすすめです。ヌラヌラ塗ったらティッシュとかでよーくふき取ってください。もう一回いますがよーく拭いてください。薄いほうがいいんで。シリコンスプレーもササッと吹いたらティッシュの類で全体に薄く延ばして終了でいいです。

 基本的にツルツルして水を吸わないものにカリ石鹸のすりこみは不要です。カリ石鹸は使うとすれば石膏と石膏の接触面だけでいいはずです(俺が間違ってるのかな?ご指摘お願いします)


 自分の場合、カリ石鹸は使ったこともあるんですが基本的に一切使いません。石膏の原型だとしても使いません。案外きちんとつかうの難しいんですよ。少なくとも塗ればいいってもんじゃないし、間違えると石膏が使い物ならないことになるし、ネットの情報は8割方素人の思い込み、と思ってカリ石鹸にはとりあえず手を出さないでおいてください。

 
 というわけでカリ石鹸はそのうち記事にします。といっても10年以上使ってないんで買ってこなくちゃなあ~

2、石膏と水を計測する。
 もっと大雑把なやり方で結構具合のいいのもあるんですが、
 1:どう考えても経済的でミスりにくく
 2:出来栄えの安定感が勝り
 3:説明するに明確
 の三拍子そろってるので「秤量法」でやります。


 石膏の量は、流し込む容積(cc)g+αです。+αしとかないと混ぜ混ぜ容器に残っちゃう分とかこぼしちゃう分とか目減りしちゃいますからね。

 カップが100㏄なら110gとか、だいたいそんな感じ。あんまり少ないとうまくいかないこともあるんで今回は200gとしときましょう

 石膏の量が決まったら秤に混ぜ混ぜ容器を載せて水を量り入れます。お湯じゃすぐ固まっちゃう上に超よわっちい石膏になるのでだめです。

 水の量ですが、「石膏ごとにずいぶん違う」が正解で、何%とか1:1とか一概には言えないです。

 お手持ちの石膏のメーカーのHPにその銘柄の混水量が書いてありますので、その通りにしてください。多くの場合、62%、とか74%といった「細かッ!」な分量が指示されてるはずです。61~65%みたいに巾があった場合、基本的に少な目は強度アップ、多目は吸水率アップです。もしくロットごとのばらつきのある石膏か・・・

 記載がない石膏をお使いの場合、メーカーに電話して聞くのをお勧めしますが、恥ずかしい場合は、通常の陶磁器型材用石膏の場合60%~80%の間のものが多い気がするのでそんなかんじです。ね、電話したほうがいいでしょ?


 必要な量の水が容器に入ったら、必要な量の石膏を入れます。ドバっと一気に入れるのはダメで、バラバラ入れるのが正解だそうですが、いい石膏ならドバっと入れても特に問題ないです。へぼいのだとドバっと入れると泡だらけになるうえに、底の方でネットリかたまっちゃいます。
メーカー名は言わないが今回の石膏は安い…



 入れたら2~3分ぐらい(量の多いときは長めにしてます。それでも4~5分ぐらいかな?)待ちましょう。
 自分は3分に統一してます(あとは混ぜて様子を見てから)


3 撹拌する
 丸い棒でかき混ぜます。

 四角い棒とか平たい板だと泡が余計たくさん出るのでお勧めしません。ベストは手突っ込んでダマ握りつぶしながらかき混ぜる方法だと信じてますが、ここではあえて言いません。


 かつて石膏メーカーの方に聞いた話ではBPM100のリズムでかき混ぜるのが一番だそうで、何かそのぐらいのテンポの曲を歌いながらかき混ぜてくれと。
 そのおじさんは年のせいかABBAのダンシングクイーンか、ビージーズのステインアライブ(トラボルタのアレ、パルプフィクションじゃない方)だっつって古い上にやたらとダンサブルなのをプッシュしてましたが、同じ古いんだったら俺のおすすめはこれです!
一番古そうなバージョン選んでみました!
動画消えてますが、デヴィッド・ボウイの『スターマン』です

と、いうわけで涙をこらえてかき混ぜましょう!青い12弦ギターを買いに行ったり、こんな服どこで売ってるんだとか考えてる暇はありません。もちろん、バケツで混ぜるときとコップで混ぜるときじゃ一周する棒の速度が違うと思うんだけど!とか小難しいことを考える必要もないそうです!

だんだんノッテきたね!歌っていこう!
「スタァーメァーン、ウェイティギンザスカーァイ!」

一番の最後
「レローダチゥドレンブゥーギィー」
あたりからよく混ざってきたと思います。

二番終わるころには結構いい感じにとろっとしてるじゃないかな?アルバムごとのバージョン、季節や気温、石膏のグレード、フレッシュさで変わりますが・・・


 このトロトロ具合、実際上は取りたい型の細かさやなんかによって多少替えないと上手くいかない感じですが、うまい人は大分ドロッとしてから流します
 こっちのが硬くて強い石膏になってる実感ありです。あんまり流動性が減るほど混ぜるとこれもショボイ石膏になるみたいな感じで難しいもんですな。その辺はいろいろ試してみてくれって感じです


4・流し入れる 
 とにかくいくらかでもとろみが出てから流し入れます。シャバシャバで入れると空気巻き込みやすいし、今回関係ないですが、隙間から漏れやすいし、やけに薄い膜が原型との接触面に現れたりして具合悪くなりがちです。
 石膏が風邪ひいてたり(袋の中で湿気吸っちゃってぼけてることをこういう)、安手の石膏だとこのとろみがついたかなーと思ったが早いか生クリームみたいになっちゃったりして使いにくいんだがしょうがねえ。

 流しいれるときもゆっくりと、空気を巻き込まないように。型の隅から一方通行でドロドロ流し込む方法、原型の脳天から包むようにダラダラ流し込む方法、二通りありますが、今回は関係ないので別の回に。とにかくカップに入れてみてください。

 入れ終わったら軽くとんとん叩いて空気を上に集めましょう。トントン叩くのはテーブルとか台座ですよ。現物を直接叩くのはあんまりお勧めしません。


 容器に余った石膏は、なるべくゴミにならないようにしなければなりません。自分は余り物入れ容器があってそれにまとめます。カップラーメンの容器なんかおススメ。


 掃除機を真空ポンプ代わりにした脱泡方法もあるんですが、掻き混ぜるのと同時に行うのが事実上無理なので、もし「石膏で原型を作ろう!」の回があればその時に解説します。

5 固まるまで待つ
 硬化時間も石膏の銘柄によって違いますし、季節や気温等々の条件、水分量、撹拌の仕方、フォースの調子の良し悪しなどで、ひどい場合は10分以上も違います。


 その間やっておくことも別の仕事や、次の石膏流しのための準備、とりあえずコーヒーなど以外にあります。

 真っ先にやるべきは棒と容器を洗うこと。流しで洗っては絶対にいけません。用意したボロバケツで綺麗に漱いで庭にぶちまけるか、庭のない人は新聞なんかでできるだけ拭ってからバケツで漱いでください。

 洗い終わったら(約3~4分経過かな?)石膏の天端を見てください。うっすらと水が浮いてきて上澄みになってませんか?ティッシュかトイレットペーパーで吸い取ってください。これをやるかやらないかで石膏の持ちと強度が相当変わってくる、裏付けも確証もないけど信じています。だってそうなんだもん。


 特に炉内で乾燥させる場合など、45℃、50℃のままうっかり乾燥させ過ぎると石膏が割れちゃうことがあるんですが、それがほとんど無くなります。というか常識の範囲ならまず割れないですね。(実際は40度以上上げるのは良くないそうです。この辺は現場での経験だね)
こんなにつけなくてもいいけど写真を撮りながらでは俺には無理
右に見えてるのがホムセンで買った安いグリス



 また、場合によっては柔らかいうちに早めに手を入れて削ったり加工した方がいい場合などもあるんですが、今回は盛り上がっちゃった分を均してスリキリいっぱいにしておくだけでいいでしょう。

約30分前後待つと石膏はホカホカと温かくなってるはずです。寒い時期は湯気が出るしデカいものならちょっと熱いぐらいになることも・・・
全然スリキリじゃないけどその理由は後述

 
 こんな感じになってるはず!
 結構キンキンでしょ?やったね!

 一番ホットなタイミングを過ぎたら、後は好きな時にはずしましょう。木製の原型の場合は一番熱いときに外すのが吉らしいですが、こんな単なる無垢はいつでもいいです。

 実はプリンなどのカップは、中身が浮き上がらないようにだと思いますが、口元部分が段差になって逆テーパーを切ってあったりしていっぱいに入れると容器を壊さないと取り出せないんですよね。で、取り出したままを原型にしたんじゃあ割型にしないと抜けない形状なんですよ。わずかなテーパーなんですけど。

 というわけで抜き出したものが一番上の写真なんですけど、場合によっては今回の物のように・・・
気泡出てるぅ~ってそこじゃないから!
こんなんなってたらそりゃ出てこねえよ!みたいのもあるので洗うときよく気をつけてみておいてくださいね。とほほ・・・

 次回はカップから取り出したこれを原型に使ってカップの鋳込み型を作ってみましょう。そして鋳込み講座も目論むわけ。なかなか教室では泥漿鋳込みって少ないんじゃないの?俺もそこまで達人なわけじゃないけど地球の何十億人の中では上位数%に入ってる自信あるよ!

 最後になりますが、石膏の選び方について。
陶磁器型材用にどうぞ!となってる石膏は、特級とかA級とかといったグレード分けになってるんですが、各メーカーによって差があります。同じ特級でも違うんですよね。
自分が使ったことがあるメーカーは
 吉野石膏
 サンエス石膏
 ノリタケ
 下村石膏

 個人的な意見で申し訳ないんですが、この4社のうち同じ特級でしたら下村石膏がダンゼン一番好きです。自分の入手ルートのせいか値段はダンゼン一番高いんですけどね。さらに上なのかな?白口特級ってのがまた最高で高純度ファイン用にはこれ使ってます。値段もまたですが(笑

 昔某美大の生徒の女の子がうちに来て石膏流したんですが、「何この石膏!学校で使って知ってるのと全然違うやん!」と感動したのが下村石膏特級でした。
 
 俺の使い方に合わないだけだと思うので、ダメな方はあえて言いませんが強いて言えば同グレードで比較した場合、会社の御立派さ加減とは反比例しているように感じる順、と言っておきましょう(いろいろとどっちにも失礼な例え)

 おそらく、同じ特級なのに良いとか悪い、と考えるのではなくて、各会社内のグレードがあるだけ、と考えたほうがいいです。A社の特級はB社のA級ぐらいだけど、値段も近い、みたいな風にとらえましょう。シマノのデュラエースとカンパのレコードは好みの個人差はともかく性能的に同等とされてるけど値段ずいぶん違いますよね?それと逆です(マニアにしか通じないうえに、105が関の山のくせに偉そうな例え話)

 珍しく?この手の業界にしては下村石膏は関東の会社ですし一方的に応援してますよ!ただし、各銘柄の混水量をちゃんとHPに明記してください!頼むよ!下村石膏!
 サーカスの像みたいなマークも大好きだ!
 
 細かい話ばかりでさぞめんどくさい精密な作業なんだろうかと思われるかもしれませんが、自分含めた我流おじさんがそこら中にたくさん、しかも「間違ってるとも思わずに」存在してるぐらいなんでその程度で十分OKなんですよ。ベターじゃないだけで。ゴミ捨てずらいぞ!ってことだけ意識してれば問題ありません。確かに割型になるとクソめんどくさいことも多いけどな。


何の話か分からないまま長くなりましたが、こんなものも作りましたので予告代わりに貼っておきます
るつぼの型作るより大変だったってのはまあいいや




 石膏の化学的なデータなどはメーカーHPに詳しく載っていますので読んで見るといいですよ。俺がネット上に間違いが多いよって言ってる意味がすぐに分かると思います。みんなこんなに良く載ってるのに読んでないんじゃないのって感じ。各銘柄ごとの水分量、流し込までにかける時間(投入~撹拌終了)、硬化膨張する割合、各強度、主な用途ももちろん確認しておいてください。。
 サンエス石膏なんか素晴らしいですよ。

 





2 件のコメント:

  1. ものすごくためになります。ありがとうございます。
    瀬戸の型屋さんは、それぞれ石膏をブレンドしているそうですが、そういうことはされないのですか?

    釉薬屋さんも複数の長石を自社独自でブレンドして使用するそうです。
    それはどれかの性質が変化したときの影響を最小限にするためだとか。

    今後とも発信に期待しています!

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    1. 井上さん、コメントありがとうございます
       長いばかりで実の少ない梅の徒長枝みたいな駄文ですが、多少でも参考になればうれしいです。
       石膏ブレンドはしたことありません。というか、恥ずかしながらその発想すらありませんでした!まあ切り替わりの時は何も気にせず混ぜちゃってましたが・・・自分も長石はブレンドしてるんで、言われてみればそりゃそうだな!
       これ以上原料袋が増えるのも場所食うし、実効果を確認するのにも期間掛かるから調合編み出すのも大変そうですけどね。なんか小さいテストピース用の型作るときにでも試してみようかな?
       
       今回のは初めて使ったメーカーの特級だったんですが、安いだけあってよくねえなあーと思って、とっとと使い切るためにこの企画入れ込んでみました。まだ乾燥中で鋳込んでないんですが、なんか全然組織の均一感ないんですよね~。タカさんの相方的な名前のメーカーなんですけど・・・


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