2022年3月7日月曜日

陶芸発信、の味方じゃなくて見方

 物を教える、というタームに最も適さない人格の私ですが、動画サイトやホームページ、書籍等の世の「ヤキモノ作り方発信」についてチョロチョロやっていきたいと思います。

 ちょっとね、知り合いにいろいろ聞かれて話したりしたんでね。ちょっとは頭の中で整理できて来たというか…


 では、写真もなくダラダラ語るシリーズスタート。


 「〇〇の作り方」「轆轤の方法」なんて動画はゴマンとありますが、おおかたはヤッてるところが映ってるだけで、その人が何をいいこと伝えてる風にしゃべってようが、どれほど非の打ち所がない話でも、どうせどっかで見聞きしたようなことしか言ってませんし、我々受け取る側にとって即効性があるどうかは別だったりするわけですよね。

 ここまでは経験あると思いますがどうでしょう。


 その手の発信者で唯一親交があるのは『俺たちのイノウエ』こと井上誠司さん。(面識はまだないんですが)先生は頑固者に見うけられますけど、ツッコミ入れると次以降の動画にスルスルと反映させてくれるっぽいのがわかってますから安心して例え話に使ってみたいと思います。


 イノウエ先生のスタンスはロクロに限らず「上手なプレイヤーを育成する」ということです。ブログ記事のグチグチ言ってるいくつかを除けば、発信内容は「上手なプレイヤーになるための練習法、考え方」という基本線を外しません。

 訓練校(職人さんの養成所)で教わって、街の「トーゲーキョーシツ」ではない生涯学習的な「お気楽な趣味以上」のタテマエ志を持つ受講生に長年教えていますから、経験上上手くいってるやり方のハズ。

 極論すれば、目さきの今いじくってるその一個がうまく出来るかどうかは関係ない。そういった時間軸での話になってます。

 例えば、口元切って揃えてるようじゃいかんざき!というのもそうですよね。上手い人になるためにはこのぐらい黙って揃えられるようにしろや!ということであって、その個体の設計、制作の都合上必要があって切ることに対して言ってるわけじゃない。


 来月は彼女の誕生日。イカシタ何かを作ってプレゼントするぜ!!つきましてはそれに特化したコツや工程の知識をゲットしたいぜ!

 なんて場合には、イノウエ動画はあんまし役に立ちません。そういうスタンスじゃねえからしょうがない。(逆に、ここをついたシリーズがあるともっと客が増えるよ!先生!!)軸組みの構造みたいなもんです。

「白くてぷっくりとしてて青い花の柄をイッチン書きしたこーんなカフェオレボウル(笑)の作り方の具体的なコツ」みたいのは出てきてないですよね。いや、出てきたら超面白キモくて噛み砕いたクランチチョコをキーボードにぶちまけちゃうと思うけど、多分そういう動画はグダグダイノウエになると思います(だから煽ってますよ!煽ってますよ!!観てみたい!!)

 そうゆーのをイノウエさんに教わろうとしたら、講座受講生になるか地元で一番高~い一升瓶を携えて押しかけて、とにかく対面で一緒にやるしかないです。仕事の邪魔になるんでおススメしないけどそういうこと。

 「基礎力総合力のあるプレーヤーになる!」ために観ましょう。その意識があって、ある程度の経験を積めば、もうこまかい部分部分の意見ややり方の自分との相違なんかは取捨選択ができるので気にならないはずです。


 ただ職人養成システム、虎の穴流ですからキチンとやろうと思うと大変だよね。「いや、俺もう年だし、別にそこまでガッツリ上手い人になるってよりも毎月自分なりになかなかいい感じのを一つ二つ決めて作ってってやっていきたいんだけど・・・」という人も多いはず。そういう方は、先生の圧に負けて気負ったりせずにさらっと頭の隅に入れておくだけにして、後々やっぱ必要だとなったらばガン見するといいんじゃないでしょうか。

 流儀の違いもありますが、「日曜日に半日つかって何個か作ったりしてまーす」って人が、玉どりの仕方だけ練習しても準備の練習になっちゃうからね。

 多少の経験がないと内容も結局ピンと来なかったりするかも。

 不特定多数の「初心者(あるいは超ライト層)」に対する発信としては本職的すぎで、かといって本職目指してるような奴が専門校も行かない製陶所に就職もしないでお部屋のパソコンの前にいずっぱりとかありえないよな。(まあそもそもYOUTUBEってのがどうしてもそんなんなっちゃうからしゃーないけどね)


 先生イジリが長くなってしまいましたが(むずかしいの承知で期待してますよ!!)、先生は「焼かなきゃもったいないようなのをバンバン作れる人を爆増させて窯をドンドコ売れればしめしめ」、俺はその先生を持ち上げて計画の尻馬にチャッカリ乗り「やっぱ俺の複雑な芸術作品には専用の炉材やセッタージグがいるかもな」と思うレベルのお客さんを何人も爆誕させれば、先生通してうちに注文がくるんじゃねえかと。


 言いたいことは、

「作陶マンとして上手くなる」と「任意の何かを上手く作る」は完全に切り分けられないけれども、実は別ってことです。

 動画やブログ記事なんかを見るときはこの辺意識したほうがいいです。


 では「任意の何かを上手く作る」のほう。

 これはこれで動画もいろいろあるように思いますよね。で、どうでしょう?上手くいきましたか?上手くいった人は「もともと少なくとも必要分上手かったし経験もあったから自分用に落とし込めた」か「やたらと飲み込みがいい」のどっちかのハズです(「自己評価が甘い」ってのもあるかも)

 そりゃそうです。これもshowがない。視聴者が本当に作りたいのは(似てるかもしんないけど)それじゃねえんだから。


 それを作る技能や知識が自分ひとりじゃまだ足りないわけで、作りたいものが具体的であればあるほど、必然的に「それじゃないんだよなあ」ってなります。

「ボツボツした煮え切らないチョコレート色の釉薬のかかったフガフガした口細りの、やや大きめのカップで、だいたいこんな形状。どうみても不自然な位置に細っそくてペラッペラのちっこい取っ手がチョコンとついてて絶対つかみにくいに決まってるけど超オシャレにインスタに挙げられてるし、なぜか使いやすいと物理法則を共有してなさそうな世界で評判」

 みたいな俺の考えたそれの作り方のコツがたまたまどっかのユーチュー陶芸バーのアップした動画に見つかる確率は限りなくゼロでしょう。


 ある作家がスゲエ具体的にスタイルの出た(最近使いたい言い回し)作品を作ってる動画があれば、ぶっちゃけそいつが勝手に作ってるところを見てるだけになります。けなしてません、ろくなコメンタリーなんかなくてもそれはそれでメイキング映像の面白さはありますよ。こうやって作ってるんですよーは興味あるからね。

 これは純文学作品と一緒で、個人的あるいは具体的になればなるほどそうなります動画や作品の内容の良し悪しではなく、私的であればあるほど刺さる人数は絶対減る、しかし刺された人の刺され具合は半端なくなる!良い悪いの話じゃあないからこれまたshowがない。

 対面していない人の個人的な懸念事項を、どうすれば向上修正できるかを個別対処でアドバイスできるような先生は普通存在しません。普通、というのは、どうやら中には一酸化炭素がニオイでわかるようなX-MEN的な人もいるっぽいので、テレパス的な人もいるのやもしれませんが、そういうミュータントは別、という意味です。


 どうしても不特定多数を相手に、となると例外の少なそうな当たり障りのない、結果的に、こっちの受け取り方としては、幅広く応用できなそうな気もしないでもない、J-pop風のいい感じにボンヤリした(ここは褒めてません)内容を好意的に咀嚼するしかなくなっちゃうような動画が人気になってる気がしますね(厭味ったらしい見方)

 

 このHPも含めて言いますが、何か作りたいものがあるんだったら、誰かの発信なんか探してないで自分で作り方を考えたほうが100万倍マシですよ!!

 その編み出した作り方が、人からどんだけダサくてみっともないと思われようと、邪道だのその場しのぎの小手先だのと言われようと、そっちのが楽しいし、結局身になると思います(これは絶対)。独学の強みはそこ!!


 動画見てもしょうがないって話じゃないです。その手は気に入ったら「後でまねしてやってみよう。やってみたらなんか面白いこと思いつくかも?」ぐらいです。発信者もそんな程度に思ってるはず。なんかしら面白かったら「高評価、チャンネル登録お願いします」に付きやってやればOKなんじゃないでしょうか!!


 役に立つか立たないかは受け取る側の胸一つ。受動的ではなくて能動的に「拝見してやろうじゃねえの!あぁ?」ぐらいの上から目線で各先生方の発信を見るとよろしいと思います(笑


 次は発信者の皆さんに向けて。

 初心者と話してて言われたことです。

 全体的な「初心者向けのロクロの基本」的な動画についてなんですが(それに限らずカモ)今よりももっともっと細かく要素要素に分けて説明していただけると、とホントの初心者の方に伝わり易いと思います。

 こういう部分は他のスポーツや趣味の教えます発信に比べて、ヤキモノ発信は相当劣ってる気がします。

 お碗一つ成形するにしたって、体の各部、各指の位置関係、使い方、力の強さや方向、どこをどう意識しているのか、自分ができちゃうからってそれを一連の流れで語らずに、各パートパートに分けて自分がどうやってるか解析できないものか?と思います。出来る人が思ってる以上に要素はもっと細かく分けられます。


 逆上がりと一緒で、皆さんのようにプロや教える側になるほどそもそもできる奴はできない奴が何でできないのかわかんないことが多いでしょうから、考えても相当難しいです。隣で一緒にやるんじゃないからこれ以上考えられないぐらいに細分化して明確に言語化する必要があるんだよね。結局は感覚でしかないことだけど、大事です。

 俺は十分細かく伝えてる!ってかもいるかもしれませんが、それ以上細かく出来ませんか?原子もまだ分割できますよ。電子とかに。


 一連を覚えて各パートを細かく修正していくことと、細かい各パートをつなげて一連にしていくことは裏表で、教える、という立場からは両方あったほうがいいんじゃないかと思うんだよね~。

 これ、俺の場合は意識したらしばらく今まで通り作れなくなりました(笑、でも通り過ぎたら確実に一段うまく出来るようになったと思ってます。まだヘタクソ極まりないだけど。

 その友人には、外側の指に対する内側の指の位置関係と力の向きと加減、と、内側の指に対する外側の指の位置関係と力の向きと加減を、轆轤のどんな工程中でも常に「同時に全体的に」ではなく敢えて「それぞれ別々にも」感じ取ることができるように慣れてからはだいぶできるようになった気がするので、とりあえず品物の形の出来はさておき、そこだけ意識して慣れてくればどういう時にどうするとか会得しやすいのではないか?と教えたんだけど…

 この辺どうでしょう?

 練習したいってんなら、感覚を慣らすのに工程を細かくし過ぎて悪いことは無いんじゃないかと思ってるんだけどなあ。(「ド素人勢いロクロの暴力的にダイナミックな魅力」とは別の話!)

 

 こんな感じで、ライト層(バカにするんじゃなくて、超大事な層)に対する「なにか」を思いついたりご質問いただければ、実践込みで記事にしていけたら面白いかも、と思ってます。予定は未定だけど、被験者も用意できそうなんで予定してます(笑

 





 あとさあ、昔っから言ってますが、ロクロメーカーはもうそろそろ、轆轤の回転数の視覚化、そうでなければペダル(やそれに類するボリューム操作レバー等)のインデックス化可能タイプ(例えば8段階クリックとか)を安価にオプションできるサービスを開発すべきでは?

 初心者のスタートダッシュだけじゃなく、プロでも重宝な利用法を考えつく人絶対多いと思うんだけどなあ。

 

 

  





 





0 件のコメント:

コメントを投稿