以前作った複製ゼーゲルコーン用素地ですが、予備的に焼成してみました。
結果は失敗。エラソーなこと言ってる割には大したことねーな。ハッハハ~!なんて声が聞こえてきそうですが、ヒーローは人を笑う方じゃない!笑われる方だって僕は思うんだよって、去年の今頃さんざん聞きましたよね。そだねー。
ってことでネタとして面白くなりそうなので失敗を失敗として検討していきますよ。ヤキモノ屋20年以上やってるとこの程度の失敗なんてタンカーで運ぶほどやってますからね。失敗は検討と脳内整理のいいネタだよ~ん。
調合はゼーゲルコーンのゼーゲル式から割り付けた7番8番9番のうち8番と9番
を、るつぼ焼成時に炉内一番下の隅っこに設置。
設置は炉材に使ってるしくじりルツボの中に立てました。ダバダーと溶け流れたらやだなーと思ったんですよね。
焼成はうちの窯で1280℃を1時間キープ(これはるつぼに合わせてます)
この状態で設置。引っ付かないように60#のアルミナ粉末を見込みの底に敷いてます
なんで丸棒をまっすぐ立てる方法なのかってことですが、丸棒と円板しか作ってない、溶け具合を観たかっただけ、というとりあえずの理由だけでなく、正直コーンって邪魔なので、最終的にそのまま真下に腰砕けに崩れ落ちて球になって終了ってのが理想だなあと思ったから。
最終形態は頭の重い逆円錐台にできればいいかなあと。つぶれたら終了みたいな。
まあ先端が接地という明確な基準点はこれだとないんですけどね。
焼成後がこれ。溶けきってないのが一目瞭然ですが。
ひっぱたいて割った断面はこちら
これはコーン9のはずのもの
こっちはコーン8のはずのもの
思った通りに潰れなかったのはいいんですが、思ったほど溶けてないんですよね。
多分どっちも12~3番まで上げれば普通に溶け落ちると思うんですが。
気泡が入ってるのは素地がメルトするほど過焼成すると大体こうなります。本家公式コーンも一緒ですけど「素地としては溶けすぎてるけど釉としては溶けてなさすぎ」の位置ですね。
素地を過焼成するとどうなるかってのはこのシリーズの対象読者であるヤキモノ初心者の皆さんには設備的にも経験的にも縁がないと思いますので
こちらの記事を参照してください。「焼成温度200℃オーバー! 陶器が沸騰!! カルメ焼きか!」
素地と釉薬はそもそも同じ種類の理屈のもので溶ける温度が違うだけ!というのは基本的にあってるんですが、組成的に溶けたときの表面張力が違ってたり、メルトする速度、一気にさーっと液状化しやすいタイプかドロドロと粘るタイプかって違いの幅もありそうですよね。
とにかく上手くいかなかった理由を考えてみたいと思います。
1、ゼーゲル式の計算間違い
何回やっても手持ちの分析表では似たような数字なんですけどね。何回も間違ってたりして。でもどっちかっていうと溶けちゃうんじゃないかなあって気がしてました。わかんないもんだね。
2、円柱を立てたので踏ん張っちゃった。
もちろんこれはありますけどそれにしても溶けてないですよね。倒したゼーゲルコーンはもっと密にいわゆるガラス化してます。ただ撚れてはいるので斜めに立てれば随分違うでしょう。
3、先端が太すぎる。
これは大アリ。デカいか小さいかってのは何よりも加熱、焼結の度合に対して影響が大きいモノです。これは本職のヤキモノ屋が「机上の学問じゃあわからねえんだよ!」的に物言いしちゃいがちなところで、○○って金属は1250℃で溶けるはずだが窯に入れたけど溶けずに残ってる!みたいなことを言ったり書いたりすんですが、これはこれで突っ込みどころ満載で、いちいち言わないですけど一番わかりやすいたとえを言うと「デカい氷は小さい氷より長い間溶けないで粘る」とか、「そもそも氷も冬場表に出しといてもなかなか消えない」みたいな例で感じていただけると思います。
「何だ!氷の融点は0℃じゃねえのかよ!10℃でもなかなか溶けねえじゃねえか!」
塊が溶けきるかどうかは融点だけじゃ簡単に決まらないっす。
コーンの先端がとがってるのは先端から溶ける。溶けだしたらすぐ隣にすぐ隣にと影響しますからトンガリがある方からずんずん反応溶解が進むわけで確かに形からしてよくできてんなって感じですよね。
さっき図時した逆三角じゃまずいんじゃないのってところですが、そんなん軟化点下げればいいだけでしょ。多分
4、そもそも記事のネタ切れ防止に昼間ちょこっとダラケて作ったから、根性もいやらしければやっつけ仕事ってことで罰が当たった。
これもあるなあ。でも気合いのあるなしで溶け方左右するような超パワーは人間にはありませんよ。キャリーじゃないんだから。
5、組成を再現するための原料の選択を間違った。
あり得ますねえ。純度、粒度、もしかするとカオリン使わない方がイイとか。
うちなら純原料で調合できないこともないんですけど、それじゃあネタとしては何かと高くつくし服装から変えなきゃいけないしそもそも一般アマチュアの方が真似できねえじゃん。
しかし、本物はどうやって作ってるんでしょうね。成形法じゃなくて調合。もしかして同成分調合で加熱して固溶体を作った後それを微粉砕したものを原料にしてる可能性もありますね。フリット作るみたいに。
まあとにかく俺の計算した調合では10φ×40Hの丸棒作っても思ったように使えないということが確認できました。円板はまだですし、より溶けやすいはずではありますが…1280で1時間ひっぱってもうまくないんじゃちっとも8番じゃねえってことははっきりしました。
あらためてゼーゲルコーンの組成を載せますが
各番手のゼーゲル式の内訳をみる限り、結果から導き出したというよりは理屈で割りつけていって結果OKでした!みたいな組成ですよね(そう見える)。かなり理論値の純度に近い材料で作るべきだったな、こりゃ。
では、反省を踏まえて次回以降の試作の作戦を確認。
もうめんどくさいし
①、同じ調合でどれか一つ決めて、たとえば石灰石の増減で温度帯を調整してみる
②、使ってる土と釉薬を練り混ぜてみる
のどっちかでよさそう
細かい数字はともかくやってることは一緒ですからね。「理屈の上ではコーン何番に対応」という旗は振れなくなりますけど。
このうちおすすめかどうか知らないけど次の予定は②。①はやりたい方にお任せします。
やりかたは
まず9:1、8:2、7:3と一区切りづつ1:9まで同形状に成形して全部並べて一気に焼成(とりあえず1230でも1250でもよい)、可能ならゼーゲルなりオルトンなりを一緒に並べて標準する。(というかこれが正しい使い方だよね)
使えそうな範囲を3~4種類確認して俺コーン何番とかわかるように番手を振る。公式コーン(造語ですよ)とは温度帯的に半端にズレてたり、おそらくですが各番手の軟化変形の度合いがリニアな直線ではなくて二次曲線的になっちゃってどれかとどれかの間に急に倒れる「隙間」とかが現れる可能性も高いですが・・・
釉薬を同じく丸棒に固めたものはまだ焼いてないんですが、これがまっすぐヤマト完結編の轟沈シーンみたいに、あるいは液体ターミネーターのようにまっすぐ沈み溶けてくれればそれでいい気がしますがちょっと広がり過ぎちゃうだろうからやっぱり粘土は混ぜ込んだ方がいいでしょうね。
こんな感じでどうでしょう。
ちなみにうちの炉は覗き窓がないので俺コーンの沈没シーンは観れないんだよなあ。企画自体に疑問が出てきた感もありますが面白いので続けますよ
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