この「闇ヤキモノ教習(仮」シリーズの対象読者は作る人がわ、細かく言うと「陶芸教室等でとっととのし上がりたい入門者初心者」です。のし上がりたいってどういうこっちゃってのも新年度ということで改めて説明しておきますと、去年、遠くに住んでる古い友人(このHPでの通称はパチーノ君)がヤキモノ教室に通うことになったんですが、ヤツの言う「ぬし化してる歴何十年の猛者ジイ連中を最短で倒す!経験はともかく理解では負けない!少なくとも堂々とナワバリを得る!」といった我々蒼き蝦夷の心意気を指します。指しますってなんだよ。
一応ヤキモノ屋である私に入れ知恵を求めてきたんで陶芸教室じゃああんまり突っ込んでやってなさそうだなあっていう部分をポロポロと記事にしてきたわけです。結果的には奴の入った教室は和気藹々、老いも若きも仲良くて「スカーフェイス」みたいに既成勢力にマシンガン!なことにはなってないんですけどね。
とにかく趣味として陶磁器を作るのをより楽しむため、腕前が上がるまでにはどうしても時間かかるので、それまでに腕がなくてもできる部分を経験したり、できる限り科学的な理屈を知っときましょう!みたいな感じです。
土をいじくってどうにかこうにか形にしたものを炉でどうにかこうにか焼成して半永久的な命を吹き込むのが我々ヤキモノ人なわけですが、その今手に取った粘土の、「とりあえず作るにあたって知っとくべきこと」を調べるわけです。
以下の試験から得たデータがあれば、
1、今作ったこれが焼き上がったらどのぐらいの寸法になるのか?
2、任意の大きさに焼き上げるにはどれだけのサイズで作ればいいのか?
3、今作ったこれが焼き上がったらどのぐらいの重さになるのか?
4、任意の重量で焼き上げるには少なくともどのぐらい粘土量が必要なのか?
5、作ろうと決めたものが、決めた通りに作れたとしたらそれは大体どのぐらいの重量なのか?
等々がわかります。知ってたからってその通りに作れるわけじゃなかろうとも知ってなきゃ無理でしょ?
さらに、焼き上げた素地の大まかな吸水率も調べましょう。
とりあえず、テストピースの条件は、ある程度の厚さと重量がある、寸法がキッチリわかるようになっている。ということです。
寸法、重量ともに可能な限り細かく測ります。できれば0.1まで。ノギスや電子天秤(どっちも安物でもOK!)がない人は大きめのテストピースを作りましょう。
作った直後、素焼き前、素焼き後、本焼成後に寸法と重量を測ります。
一番初めのリンクを見ていただいたら、続きに掛かりますよ。
乾燥中~になってますがほとんど乾いてます。
下の段がその数字。
つまり素焼きに入る前に縮む量と減る水分がわかりました。
850℃での素焼き直後。
寸法は焼成前と変化なし。重量は減ってますね。
きちんと乾燥していればこの素焼きの温度では寸法変化はしないこと(ぜんぜん歪まないわけではないです)、熱間でなければ減らない、あるいは熱間で減る重量があること。結晶構造内に存在する水分や、分解~ガス化して減る何か、があることがわかります(厳密には減る一方ではなくて酸素取り込むなりなんなりして増えてる分もあるんですが、そのプラマイの総和です)
本焼成します。
今回は1230℃30分キープですが、今回の棚組の場合、8番コーンがべったり倒れます(うちの窯の場合、証拠のコーンは無し)
これが焼き上げの寸法と重量です。
重量はほぼ変化なし、寸法ぐっと縮みました。
ここまででこの土の性質としてわかることは、
A/寸法(=線収縮として)は、生でまだ濡れている(=乾燥中)うちと少なくとも素焼きの温度を超えてからの二か所で大きく変化する。これらを乾燥収縮、焼成収縮といいます。
B/重量は、素焼きを終えた段階でほぼほぼ変化し終わっている。
内容の細かい解説は省きますが(過去記事をほじくりかえすといろいろあります)、そういうことです。知ってましたか?ずっとリニアで減り続けたりするわけじゃないんですよ~。すべてのセラミックス素材やプロセス工程がこの通りとは限りませんが(特に温度帯)、ごく一般的にいうヤキモノ作りの場合まずこのパターンです。
ここまでで記録した数字から以下を求めます。
寸法変化=40角で製作したものが35.7角になりました。
線収縮率であらわすと、11%。生を100%として89%に。100㎜で作れば89㎜になります。
では100㎜で焼き上げたければ何㎜で作るのが正解ですか?
11%足して111㎜? ぶー間違いです。112.5㎜です。
焼き上げを100%で計算すれば112.5%になりますよ!
もちろん100を.89で割れば同じ値になりますが、勘違いしてる人が多いです。
これを割り掛け、と言います。この場合1.125。当たり前ですがものつくり人にとっては完成品が「1=基準=目的」です。エラソーにいってますが、毎回毎回どんぴしゃなんてなかなかねーよ(笑
111㎜に対して1.5㎜なんて微々たる差ですか?水引時のちょっとの狂いで出ちゃうから関係ない?知ってて作ってるか知らないで作ってるかが違うんですよ。個々のフォルム重視で少々の狂いは気にしない派でもいいんですが(俺もそうです)、もし、気になるあの子におソロで作って!なんていわれた場合、その1.5㎜を知らなかったがために未来を棒に振ることになりかねないよ! 多分ないけど、そんなこと。
次、重量。
37.1gだったものが27.7gになりました。
やることは同じです。焼き上げ基準と生基準を両方出す。
生から26%分減って74%の重量に。300gの粘土玉が224gになる勘定。
では250gのお碗を作るとしたら(とりあえず釉の目方は置いときますね。ネイキッドで。何なら素焼き鉢でもいいっすよ)どのぐらい用意すればいいですかね?
大体335~7gなので、削る分、泥になる分等々目減り分考慮すると、カンナ工程無しで350gで作れれば相当上手なんじゃねえかな?鎬や面取り、切り飛ばしするならその分もコミコミで勘定しましょう。少なくとも300gじゃ作れないってことはわかりますよね。
今回のようにきちんとした角板から型を取って作ったテストピースの場合、大雑把な比重も測れます。もちろん乾燥重量÷体積でOK!
40角の方から作った板の焼き上げ寸法は約もいいところですが35.7㎜×35.7㎜×10.9㎜tでしたので、その体積は約13.9cm3 重量が27.7ですから
大まかな見かけ比重=1.99ときて約2
これで作りたいものの寸法や厚さから体積さえ割り出せればこれに2を掛ければ予想完成重量がわかります。あとは戻ればスタートする粘土玉の目方も見当がつくわけです。
これで製作に必要な最低限のデータがとれたって感じかな。
この後はワンランク上の部分
測り終えたテストピースを水没させて一晩以上置きます。
ヒマなら覗き込むと素地から泡で出てくのが見えることもありますよ
本当は3時間以上煮沸しなくちゃいけないんだけどそこまではやんなくていいでしょ。
水から引き揚げたらタオルで表面の水気を切ります。
よく拭き取ればOK!重量を測ろう!
これで素地中に残った=素地が吸ってしまった水分量を測ります。
窯から出たばっかのすっからかんの時の重さを乾燥重量。水をしみこませた後の重さを吸水重量と言います。手持ちの機器で可能な限り細かく測りましょう
原型37.5角が乾燥重量19.7に対して吸水重量20.4g 3.4%
どちらも炻器として十分な値ですが、この差はなんなのか。大きい方は実は乾燥中に表面磨いたりしたし、小さい方は表面に結構細かいシワが寄ってんですよね。その差じゃないかな? 吸水率は結構大事な値だと思うんですが、何かと変化しやすい部分でもあります。こうやってテキトーにテストピース作ってるとテキメンですね。
たとえ組成や粒度配合、焼成温度の様々な要因で、気孔率が高めの素材でも表面処理に磨きを入れたり超微粉による化粧掛けなど目つぶしすれば解放気孔を減らしたり細かくできますから作業ひとつで工夫のやりようがあります。大昔の水がめとかね。
それは組織がどう言う構造(少なくとも表面は)という話なのですが、このブログを隅から隅まで調べるとそんな話は結構していますので是非参考にしてください(検索用のヒント「ボンド部」)
何はともあれ、今回の結果
土は山内陶料さんの耐熱土(白)でした。よーし、カミサンに頼まれてた土鍋とかオーブンウェアでも作っちゃおうかな~。今日は俺もうTシャツですけど。
PS 山内陶料さんakaねんど屋さんドットコムの耐熱土(白)の紹介ページでは、収縮率8~9%となってます。
この差ですが、いろいろ理由は考えられますが、テストピースの作り方が違う。というのが理由です。多分。
例えば、ロクロで作ったものと今回のように型押ししたもの、しかも俺は原型の寸法で書いてます。ほかにもどのタイミングで測ったかとか測り方。
基本的に自分のいつもの作り方で、自分の目安になるように測ればいいですよ。
まあ真の理由は「俺が気の抜けた練り方をしてふにゃい詰め方をしたから」だと思う…
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