2019年7月17日水曜日

フランジ付のるつぼ 前回記事には謎があった!

 先日記事で製作工程の一部を紹介したるつぼです。
 材質はアルミナの多孔質。
 

 
 無事焼き上がって納品となりました。

 
 実は先日の記事中に謎が隠されてたんですよね。いや、実はこっちとしては軽く固形鋳込みの成形部分の流れを紹介しただけで、謎だのなんだのそんな見ていただいた方を試すようなフテェ了見は一切なかったんですが、「納得いかないというか、どうなってるのか不思議なところがあるんですが、どういうことでしょう」というご質問をいただきました。

 ファイン、伝統問わず本職のヤキモノ屋さんなら別に不思議じゃない、あるいは、アレ?と思っても「こうやってるんじゃないのー」と見当つくところ。質問くれた方は趣味でやってる方だそうで気になっちゃったみたいです。
  

 右から、成形直後、仕上げ後、焼成後です。
 
 どこがヘンテコかわかりますか?ー今回は気付きを試してます(笑
 一つは「焼成後に収縮していない」ということです。
 これは多孔質耐火物として単純にそう言う調合だから、ということで、簡単に言っちゃえば充填された粗いザラメの接触点を細かい超微粉でくっつけるような調合です。粗粒と粗粒が突っ張っちゃって焼いても収縮しません(厳密言えばほんのちょっとあります)
 気孔率を残して、耐熱衝撃性の良さや、割れの進行のしにくさを利点とした炉材、内貼り煉瓦の理屈の仲間ですね。

 気孔残りは別に焼き上がってないわけではなくて、焼き上げても気孔がたっぷり残るようにしてあります。ですから炉の内壁と同じように高温で使い続けてどんどこどんどこ焼結が進めば少しづつ少しづつ収縮していきます(もしくは先に割れる)
 微粉だけで作った緻密質(気孔が残らない、あるいはめちゃミクロ)は普通に収縮します。その代り耐熱衝撃、割れの進行の速さがマイナスに。この辺はザックリいえば陶器と磁器と一緒です。
 使ったことないんで無責任に勘で話しますがドウセンボウでしたっけ?あれにちょっとだけガイロメとか長石混ぜてモノ作って焼けば変形や収縮しないで焼成治具とか作れると思うんで試してみてもいいかもよ。

 
 もう一つ、わざわざメールくださった方はおひとりでしたが、気になった方どのぐらいいらっしゃるのか、とにかくそっちが面白案件。
 鋳込みなのに肉厚差がある!
 
 フランジ部分と胴回りのことです。
 底から鋳込んだ以上肉厚なフランジ部分が詰まる前に胴回りがふさがってしまう=フランジ部分に巣が入るのでは?
 という疑問でした。
 

 こういうことね。「○す」の部分が空洞になっちゃう。
 排泥ですと右側になるわけでこれなら見込み側にも段差が入りますが、このるつぼはそうではありません。
 
 ご指摘その通り!ただ作ることは無理です。
 今回の場合の答えを言うとフランジ部分だけ先にある程度流しておいただけ。そのために外型をフランジ部分で割っています。
 
                ほら。

 ほかにも解決方法はありますよ。
 何とか小細工して胴回りの着肉を遅らせる(フランジ部分と胴回りの石膏型の乾燥状態を変えたり)とか、型の設計を工夫してフランジ側から鋳込むようにするとか。鋳込みで作らないで成形方法自体を変えるとか(ほんとはこっちのが良い場合も多い)。
 今回のこれはベストではないかもしれないけど、使用条件からはこれで十分足りる、というわけでのチョイスでした。
 
 一般陶磁器ならカンナ掛けで形状を決めたり、別々に作って接着したりとかできそうですが、材質的にも使用条件的にもユニフォームで作る必要がありますね~、だったらこうかな。いったところ。

 鋳込みの面白さはココですよ。
 轆轤に代表される「手づかみ系可塑性成形(造語です)」のような、手先指先に感じる坏土の反発力の物理的触感の気持ちよさや、液体ターミネーターのようにうねうねと目の前で形状を変えてゆく視覚的な幸福感はないですけど、設計や作戦立案のハマり具合と離型するまでどうなってるかよくわかんないけどパカッと姿を現すときのヒーロー登場シーン的スカッと感(これをシュレーディンガーの皿といいます。ウソ)がたまんないんですよね~。

 我々既成スタイルの鋳込み人はそう外れたことを思いつかない脳みそになってますが、これから鋳込みをやってみようかなーという方には是非、あんまり凝り固まらずにその手があったか!な技をどんどん思いつくだけやってみるといいと思いますよ。ちゃんと離型する型とちゃんと固まって離型するスラリーさえあれば結構まだまだ未開発なはずですぜ!

 


 





 


 
 


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