2020年1月31日金曜日

ファインセラミックスが多少身近になるかもしれないシリーズ 圧電素子、ピエゾ編

「ファインセラミックス」といってもボンヤリしちゃって先端科学っぽいなあ~ぐらいのイメージの方も多いんじゃないでしょうか?安心してください、私を含めてみんな一緒です。
 セラミックスと世間一般でいう陶磁器(こっちでいうところのセトモノ)がそもそも同じもんだって言う認識すらないヤキモノ人もいるとかいないとか。

 まあその辺は置いておいて、普段なかなか目にする機会はないと思われる「ファインセラミックスななにか」を身近なモンからほじくりだしてみましょう。

「その特性を最大限に利用するために作られるセラミックス製品」をファインセラミックスととりあえず定義しますね。その中でも「機能性セラミックス」という使い道のジャンルがあります。
 うちの本業である「耐火物」はおもに熱に無茶強い!という特性を、時計の軸受はサファイヤだったりしますがこれは「摩擦にめちゃ強くて、熱による膨張収縮が金属に比べて圧倒的に小さい=精度の狂いに対して強い!」という特性を利用してたりしますが、これらは普通は機能性セラミックスとは言いません。
 そういった、硬い、曲がらない、暑くても平気!強い!みたいな根性体力フィジカル系の能力ではなく、工学的、電気的、磁気的、といった、もっと理屈っぽくて小難しそうな部分に特性があり、そのポテンシャルを発揮させるために使われるセラミックス材料(製品)を機能性セラミックスといいます。

 たとえば、
 電気炉のヒーター(皆さんの陶芸用炉は金属線(カンタルでしょ?)なんでセラミックではありませんが、うちの電気炉はSiC=窒化ケイ素)。これは電気エネルギーを熱エネルギーに変えています。

 また、発光ダイオード。これは電気エネルギーを光エネルギーにしちゃう性質があります。太陽光発電パネルは光のエネルギーを電気に変えると。俺もこの辺なんでなんだか全然知りませんがスゲエじゃん。イエーイ!機能的!

 みたいな感じ。

 それらの中で一番簡単に、そこらへんで小銭払えば入手できるのが「チタン酸バリウム」です。
 では「チタン酸バリウム」をその目で見てみましょう。
 
 用意するもの!

 電子式の百円ライター つっても百円じゃ今買えないのね。さっきちょっとコンビニでみたら150円もしてやがる。いっつもタバコ屋のお姉さんにタダでもらってるから時代に取りのこされっちまったよ。
 カッチンとすればガスノズルの口元に火花が飛ぶあれです。

 これをペンチでぶっ壊します。いくら安いっつってももったいないのでちゃんと使い切ったやつにしましょうね。もうチャッカしないチャッカマンぐらい何処のうちにでもあるでしょ、多分。
 
奴が隠れてるのはこの矢印のまさにその部分だ!

しかしこのパーツ点数細かさ精度で百円とは…

 このカッチンシステム、ガキンチョの頃よく遊びましたよね。
 鉄棒してるやつに電気ショック喰らわせたり、近所の駄菓子屋のテレビゲームにバッチンコやってクレジット99にするつもりが画面おかしくなっちゃったりとかね。

 このガッチンコ電気ショックシステムの心臓ことチタン酸バリウム。どういう特性の材料なのかというと…
 機械的エネルギーを電気エネルギーに変換するという謎特性を有しています。どういうことかというと、コンと叩くと電気が発生するわけ。なんかしらの衝撃が加わって変形することによってその衝撃に応じた分量の電気を発生するんですよ。よくわかんないけど凄い!こういうのを圧電素子(ピエゾ素子)といいます。俺もオヤジにゲンコ喰らうと眉毛の裏のあたりから火花が飛んでたんでピエゾマンですな。
 
 つまりライターのあそこをカチンと押し込むとバネ仕掛けで撃鉄が中のチタン酸バリウムをバチンと叩き、底から発生した電気をノズルに飛ばしてガスに着火するってカラクリです。

 圧電素子はさらに、変形すると電気を発生するの裏返しもありで、電気を加えると変形する。という可逆的な性質だってところがすごい。
 
 発電パネルに電気をぶち込むと光り出すなんてことはないし、俺に火花を当てるとオヤジを殴るなんてこともないわけです。

 モーターは電気を入れると回りだして、空で回せば電気が発生しますよね。あれと一緒。

 音楽用途とは限りませんけど、たとえばアコギの音をアンプに通すピエゾピックアップというのがありまして、こういった圧電素子に与えられた振動を電気信号に変えています。
 さらにピエゾスピーカーってのもありまして、その電気信号を圧電素子が振動に買えて音にするって理屈みたいです。これはイヤフォンなんかはそうじゃないかな。


 とにかく、そんな何やら凄そうなチタン酸バリウムを取り出して、何をするわけじゃないけど目で確認してみましょう。さっきのガチンコシステムをさらにぶっ壊します。
ウワ、思いのほか脆かった!

というわけでこれがチタン酸バリウムだ!
割れちゃってるけど

 こんな小汚い茶色の石っころにそんなパワーがあるとは…しかし、意味わからん。

 これ以上話は続きません。今日記事をあげないと月間10記事というタームが達成できないんでねじ込んでみました。
 でも話の種にはなったでしょ?飲み屋でどうぞ。

 これ以上細かい話はできません。自分も知らないので(笑
うちはやっぱり基本器屋ですので、機能性セラミックスとしての製品はなにも作ってないので、おお!じゃあその性質を利用してこんなものを作ってくれと言われてもできません。ごめんなさい。


 ちなみにチタン酸バリウムはバリウム化合物のならいで劇物指定です。ライターから取り外したこれは焼結体ですので毒性云々はとりあえず関係ないはずですが、塊で持ってても危険物かなんかで保管に関する届け出が必要です。何らかの理由でこのカッチンライターの心臓部を200Kg以上集めるような場合は役所に相談してくださいよ!

2020年1月29日水曜日

シリコン分からない問題。


 皆さんシリコンって知ってますか?私サッパリわかりません。

 元素記号ではもちろん『Si』。ヤキモノがらみの皆さんはシリカ(硅石、二酸化ケイ素、SiO2)として大変おなじみのような気がしますよね。これはシリコンと酸素の化合物、酸化物です。ヤキモノはミクロに部分で見るとどうだかわかんないですけど基本的に鉄だの銅だの言ったところで酸化物です(ファインだと窒化物とか炭化物もある)

 そういうことではなくて、ごくごく一般的に、何の疑いもなく使われてるシリコンという物質と言葉の存在感に恐れおののいてるんでございます。
 例によって日常生活に何の不都合もない所にごちゃごちゃヘリクツを並べますよ。全然調べてないというかもはや分かる気もないんですけどね、じつは。


まず、シリコンと聞いてどんなブツを想像しますか?
一般的には
最近メインストリームのゴムべら 
鍋敷き 
ロクロ作業で使ってるシート 
古くからのヨーヨーファンにはおなじみのアレ

 といった、ゴムっぽいなんかではないでしょうか?他にもホース(チューブ)や何かがありますよ。シリコンゴムつったらこんなんですよね。
 何、シリコンってゴムなの?ゴムにシリコンが入ってんの?なに?

次、いろいろ作業油の類がありますよ。


といったシリコンオイルの類。何?シリコンて油なの?油にシリコンが入ってるの?
写真撮ってないけどシリコングリスもうちにたっぷりあります。

こんなのもあるよ。
コーキング材。何?接着までしちゃうわけ? 
シリコン系水漏れ防止剤。今度は水系ですよ。
わかりづらいな何系なんだよ?
といった目止め系材料も…

 これらがシリコンそのものなんじゃなくて、たぶんですけどシリコンが配合されてるんだろうなってことは私だってわかりますよ。
 で、調べようと「シリコン配合」みたいな感じでググろうとしたらシャンプーだかリンスだかのことがずらずらと体にイイの悪いのハゲるのハゲないの・・・まあ例によってみんな好きだねえってのばっかし並んでて一瞬で挫折。検索画面に二~三行見えてる内容だけでも「俺にはそんな時間はねえ」ってのだらけなんでね。
 
 まあほかにも、「シリコン」っていろいろ使われますよね。
 俺とおんなじぐらいオッサンで相撲好きな方なら前の朝日山親方(大受ね)が福禄寿みたいな頭で審判席に座ってるとまるでジェダイ評議会みたいでよかったっすよね。(ジェダイのはマスター・キ=アディ=ムンディ)
 舞の海も新弟子検査の時に身長嵩上げしてましたよね(すぐ取ったけど)

 また、医療用でも大変利用されています。身内に乳がん掛かったのがいるんで実際かたっぽ入ってますし。このHPはレイティングG(全年齢の方が条件なしにご覧いただけます)ですので詳しくは書きませんが、男子ならほぼほぼ全員が好きなジャンルの主演はシリコンサイボーグみたいなのが多く活躍してますな。仰向けになってもマッターホルンみたいな。無改造ならキリマンジャロになるだろ!

 え?ってことは生体適合性なんじゃねえの?体に悪いってなんだよ?
 シリコンが悪いの?オイルが悪いの?オッパイの中にはどういった状態の何が入ってるんだよ?

 この辺皆さん分かりますか?俺はサッパリ分かりません。

 とりあえず元素としてのシリコン、純シリコン(一回目「殉死離婚」って変換された!!)てのが一応これです。加工品ですが…シリコンウエハー。
鏡面研磨だ! 何もわかんなくてゴメン
0.5㎜厚さですよ!

 液体でもゴムでもありません。全然弾性も塑性も示さないカッチカチの塊です。超チッピングしやすい難加工材。これが純シリコン、金属シリコンです。

 細かいことを言うとシリコン=Siは、周期律表みるとわかりますが色変わってて半金属(何?半金属って)と言って金属結合してるけど金属じゃないって言うか、目線の立場とか人によっては半金属でもないって言うかじゃあなんなんだよ!え?半導体?それってまた金属とか酸化物とは別のもんなの?単なる性質じゃないの?って感じなんですよね。

 ですから、「金属シリコン」って言うのはみんな便宜的に呼んでます。「型通りの金属じゃあない」とされてるのわかってても皆さん使っていますよ。見た目金属だしな。たしかに割れ方金属じゃないけど。

 突っ込まないで下さいよ、さっぱりわかんねえんだ俺は!って話なので。もちろんシリコン以外の材料のこともわかりませんし、毎日顔を合わせてる家族のこともさっぱりわかりません。

 で、この話をどうまとめたいのかってことなんですけど、それすらまるっきりわかりません。

 こんなもんをシリコンシリコン当たり前のように言って暮らしてる自分が怖い。



2020年1月28日火曜日

『(手先が)器用』には二種類ある気がする


 るつぼの底側先端に十字の刻みをいれてあります。
この目的がなんなのかは「イーサン・ハント・システム」として過去解説しましたのでとりあえず割愛。最初に相談受けたときに型からそれ用に設計するか、後加工するか考えたんですが、使い道が一回使ったら中身取り出すために壊しちゃうものなのであんまり高くつくのはもったいないし、精度なんか関係なしに目的がかなえば問題なし。とのことでしたので生のうちに手で刻む、という方法を取りました。
 さすがにいくら使用可能でもあんまり曲がるのは職人としてどうよ?なんて気持ちもたっぷりありますので、初めに軽く考えてたよりかずっと緊張して細工してます(笑
 
 テーパーついてるので平らなところにベタ置きしても中心線が取れなかったりするわけで、治具作ったっりと工夫のし甲斐があって面白いんですが、俺アンマリ器用じゃないなあ~なんてしみじみ感じちゃったりしてます。
 
 で、今回は器用論(なんて立派なものじゃあないけど)
 
 なんか直したり作ったりって時、あいつ結構器用だよな!、とか、私ブキッチョでさあ~、なんていう場合の器用(不器用)には実は二種類あるんじゃないかって話です。
 あくまでも手を使って物をいじくる、という場合の話です。
「自分、不器用ですから…」と倍賞千恵子に背を向けたりするのとか
「あのメスダヌキ器用に立ち回ってチャッカリいまだに都知事かよ」
 とかいう場合は除外。

 で、二種類どうかって言うと、
①身体(主に指先かな?)を計画通りに精緻に動かせる。というタイプ。多分こっちが本来の意義で文字通り手先が器用。これは身体能力です。

②モノの構造やいじくる手順段取りが見えやすく、だからできると思えば自分でやっちゃえる。というタイプ。
 あそこのお父さん何でも自分で直しちゃうのよね~、なんてのはこっちかと。このタイプの人は子供のころから「いろんなものを分解しちゃあ再起不能の山を築いてきた」と思われます。ぶっちゃけ仕上がりや精度に関しては微妙な人もままいるかと。①の要素も関係しますし、どこまで必要と考えてるか等々。身体能力というよりか性格かも。(御察しの通り私はこっちのタイプです)

 まあ両方あるに越したことはないし、ある程度以上は天性の領域とはいえ、これは後天的に身に付けられる単なる技術ではないか。それを支えるのはまあ場数踏んで目と手を鍛えることと、頭使って落ち着いて考えながらやることじゃねえか?という何も言ってないも同然の結論にいたり、次も頑張りましょうと思った次第。

 持ってないやつが持ってるやつにたまには勝つ、それがKUFU!とライムスターも歌ってます。
 KUFUで器用さを身に付けてレベルアップめざしま~す。
 

 







2020年1月25日土曜日

マグネシアの細長るつぼ

 マグネシア緻密質のるつぼです。
 ご存知『クリーム色のニクイやつ』(このフレーズは永遠に使い続けることに決めまてます。)去年、オトボケ学部生の方から注文いただいた時に「次試したい材質なんですけどね~、クリーム色のニクイやつですよ」と言われて、何のことだか一瞬わかんなかくて電話のこっちで「何言ってんだこいつ?」と思ってしまったってのはナイショです。やあ、自分のことだと思った君、ごめんね。
 

 そりゃ何入れて熔かす(溶かすではない!)か、中身との相性はありますが、かなり守備範囲の広い材質です。普段アルミナなんですがイマイチぴったり来てる感じじゃないんだよな~、なんてときにはジルコニアと併せてマグネシアでもご検討ください。推しメン!
 

いぇーい!次はホームラン打つぜ!

 相撲にテニスといい時期ですね~。
 
 

2020年1月22日水曜日

僕はハリーポッター?





 国公立の大学や研究所では年度末に向かって予算の締めが間近だそうで、納期や書類手続きの期限がいついつなんですが…みたいな問い合わせが多い時期です。例年通り。

「ああ、いつものヤツですよね?だったらOKっすよ。全然間に合います」
 と言ってとっとと作りだすわけです。
 うちの標準原料でカスタムの手間がいらなかったり、ものが小さめだったり、条件によっては今日それで作ってるから、ついでにそのまま一緒に作っちゃえ!なんてことになります。
 そうすると10日や二週間で届いてびっくり!みたいなことになったりして。

 こないだ聞いたんですが、某大学の某研究室ではご注文のラインナップが小さくて作りやすいものが多いせいか、注文受けたらすぐについでに作れちゃうことが多いので短納期で届くことが多いらしいです。らしいですって作ってるの俺なんですけど。
 作るのがめちゃ速いヤキモノ屋、ということで
『つくばのハリー・ポッター』と呼ばれてるとのこと。

 今の時期は定番ラインのアルミナやジルコニアのラボサイズのシンプルるつぼなら結構なスピードで納品できますよ!毎日鋳込んで間をあけずに窯回ってる日々なので。
 「へいYOU!予算使い切っちゃいなよ!」

 とはいえ、こういうのは材質とか形状とか大きさとか後加工のあるなしとか、いろいろ都合があるものなので、お客さんや研究室によっては「遅いヤキモノ屋」だと思われてる所も絶対あるんだろうなあ。
 
 ちなみに『ハリーポッター』シリーズは映画を観たことも小説も読んだこともなかったんですが、ちょっと気になってきました。同じメガネ君だし。
 






2020年1月17日金曜日

アルミナるつぼ

 30φほどの小さめのるつぼです。



 写真見てわかる人は私含めていませんが、緻密質の純度は99.99%です。言わなくてもうちの場合だいたいそうですが…
 

2020年1月15日水曜日

緻密質、多孔質 

 暖冬だっつても寒いし、タイトルについての説明は特にしませ~ん。上ロゴ写真の下の字の小さい目次?リンクからお願いいたしま~す。

 

 奥のフランジ付が多孔質、手前の細ちっこいのが緻密質です。
 どっちもアルミナです。

 といった感じにいつも通り順調にできるのもありながら、思わぬトラブルにはまってしまったものもあり、いつもながらのヤキモノ屋の睦月。とも笑って言い切れないレベルの問題事項だったりして。

 割れてる写真は今は見せられないものの、なんか年跨ぎでワレワレ言ってたせいで割れに取り付かれてしまった感もあり、これが言霊か?ヤバい。
 

とかブルーな気持ちが乗り移ったかこんな事態にも!
固形鋳込みが奥まで流れていかなかった!!

 と、これは出来る限り固~い(水分量の少ない)材料で流したいので、バッチの一回目はこうなることも珪酸のうち。じゃなくて計算のうち。
 
『フォードVSフェラーリ』は必ず劇場で見るべき映像と役者の顔!!で面白かった!
 話は焦点がぼやけてていろいろ食い足りないし、全然フォードVSフェラーリじゃねえじゃねえかとも思ったけど、セリフでの説明を一切しない映像と演出で分からせてくれる『これぞ映画体験!』でした。TVで見てもつまらなそう。
 おすすめのシーンはある二人がケンカするシーン。武器にするのそっちじゃなくてそれかよ!お前ら最高だ!みたいな。よかった!

 まあ日常ですね。ネタ無し。

2020年1月11日土曜日

ペタライトって名前かわいいよね~土鍋 熱衝撃の話とか

 今回はまるっとダバナシです。
この写真は一切関係ありません


 冬真っ盛り、いまごろ作りだしても商売的にはちょと間に合いませんが、土鍋の季節ですね。うちはアルミの鍋ですが(何たる怠慢)

 土鍋、というのは粘土屋さんでは耐熱土、なんて名前で作られてるんですが、陶芸用土は何でも耐熱だろ!別な言い方のほうがいいんじゃないでしょうか?
 耐熱は温度に耐える、耐火は火に耐える。耐えて来てるじゃねえか!
 なんて心底くだらないツッコミは気にしないでください。

 容器の名前としては英語で言うと、オーブンウェア、フレイムウェア、なんて言い方がありますが、これらは用途に即しててわかりやすいですね。

 とにかく土鍋やグラタン皿(鍋?)のようなフレイムウェア(この用語を使います)、多くの場合、名前のかわいいペタライトというものが配合されています。
 ペタライトは長石の一種で、古い?和名?だと葉長石といいます。
 曹長石はソーダの多い長石
 カリ長石はカリの多い長石(正長石とも)
 この二つが一般的に長石ってただ言った場合の長石かな。

 灰長石はカルシアを含んだ長石
で、葉長石(リチウム長石)の鉱物名がペタライト、これはリシア(酸化リチウム)を含んだ長石。「葉」が何だかは知りません
 カルシア、リシア、それぞれがカリウム+ナトリウム分に大きく置換されてる形の長石で、シリカ分アルミナ分はそこまで比率変わらないみたい。

 細かいことは言いませんが、このペタライトを混ぜる(正確には普段の長石の全部あるいは一部を置き換える。通常粘土よりも長石分は多いみたい)ことで直火にかけても割れにくい耐熱衝撃性の高いヤキモノにしているわけです。

 熱衝撃ってのはサーマルショックとかヒートショックとかいってカッコいいんですが、熱衝撃ってのもなかなか衝撃的なネーミング。お好きな呼び方でどうぞ。短時間に起きる温度差(急熱急冷ね)に対する壊れにくさです。
 ちなみにこれはセラミックスに限った話でもなくて、人間でも寒い中風呂入ったり出たりすると危険なので気を付けましょう。雪の中露天風呂とかもってのほかですよ。超気持ちいいけど。

 耐火度(耐熱度)が上がるってのとは全然違います。(まあとりあえずそういう言い方をしてるってのは分かってますよ)
 耐火度はザックリいうと溶けちゃったり軟化しちゃったり物性組成が変化しちゃったりで使い物にならなくなる温度域(熱量だろけど)のことです。

 うちはるつぼ屋ですから、中身はおでんどころか金属の溶けたのをグツグツやるわけで、マグマ鍋用の土鍋を作ってるようなもんですな。高周波の場合は見込の中の金属が急激に発熱してメルトし、土鍋の外側の方が温度が低いという逆モーションですが。
 てなわけで熱衝撃はまじでライフワークになるテーマの一つです。


写真はイメージです。

 料理用品の耐熱衝撃性に関しては、簡単には以下の要因が考えられると思います。

 ①熱膨張係数(率でもいいや)の大小
  その素地がある温度からある温度に達したときにどれだけ膨張(線膨張でも体積膨張でも)するか
  たとえば室温1000㎜のものが1000℃で1010㎜になったり、1002㎜だったりと差があるわけです。
 相当昔からデータありますけど、そんなもん熱間でどう測ってたんでしょうかね?昔の人は。

 ②その熱膨張の曲線がどれだけ直線に近いか。
 熱膨張はずっと比例的に起こるのではなくプロットすると曲線です。波をうったり急に折れ曲がるようなカーブを描きます。
  ある温度域で急にアップダウンしたりする点のないなるたけリニア、フラットなものが望ましいわけです。
  
 ③熱伝導率
 熱の伝わりやすさです。熱伝導低いのに膨張収縮が大きいと日の当たる部分と裏っ側や遠い部分との差がデカくなり歪む。
 
 ④ということはやはり大きさや肉厚が大事。
 薄い方、小さい方が使用中温度差は少なくなるので耐熱衝撃性は理論上高いと言えます。でも小さいとみんなで突っつけないし、薄いんじゃあそもそもの機械的強さがたりないよね~。

 ⑤気孔率
 気孔が存在することで各粒子(としておきましょう)の膨張収縮をかなり吸収することができます。ほとんど0では歪の逃げ場がないし、割れたときの割れの進行も早い、あんまりあってもおつゆが漏れちゃうよ。
 リシア素地やコージェライト素地が普及するまでは、まあ気孔率高め焼結も甘めの焼き上げで熱衝撃に対抗していたということでしょう。土器なんか結構強いと思います。
 ファイン的にはやりようありそうですが、ムズイわカネ掛かるわ設備要るわで日用雑器としての土鍋としてははっきりこの辺がベストということなんだと思います。
  
 等々、各点これ以上細かい説明は、やろうと思えば長くなるし、すればするほど馬脚を現す恐れがあるのでとりあえずここまで。ちなみに一般陶磁器の主成分の一つであるシリカ(SiO2、硅石)は熱膨張も熱伝導も大変低い優れた材料です。極端な例ですが石英ガラスなんか炉心管に使われていますよ。とはいえ多結晶焼結体では機械的強度が低かったり、結晶構造の変化点があり劇的なのでそこをきっかけに割れやすく、単味でモノ作るのは大変難しい材料だったりします。

 で、ペタライトが普通の長石に置き換わると何が変わるのかって言うと、普通はないリシア分が加わります。素地中で反応して焼結を促進する役割(まあ簡単に言うとすぐ隣のアルミナやシリカとくっついて溶け馴染み合う)のカリ&ナトリウム分が酸化リチウム(リシア=Li2O)に結構な分量置き換わります。
 そうすると通常酸化カリウム(ナトリウム)+シリカ+アルミナだったものが、リシア+シリカ+アルミナの組成(スポジュメン、リシア輝石とかかも)となって、これがすこぶる熱膨張が低い!自分は扱ったことないんですがリシアっての自体も相当熱膨張が低い上に曲線がフラット。500℃ぐらいまで熱膨張ほぼほぼ0だって話だった気が(細かいことはよく知りません)
 とにかく単なる急熱急冷に対しては飛び切り強いというわけです。
 
 熱膨張いくら低くても機械的強度が低いようじゃ話になりませんから、その辺は粘土屋さんの腕の見せ所で、それ以外の原料(粘土鉱物や硅石等の組成と粒度)の配合で焼成温度域の幅広さの確保や焼腰、そして大事な成形のしやすさ扱い易さを調整してくれてるわけです。各社の鍋土は作りやすいニクイの差がデカいみたい(誰か忘れたけど談)ですし、リシア素地って焼成温度幅とかその辺シビアだそう(大昔リシア研究してたファインの師匠談)ですから、少々高くても評判イイ土買って使うのが吉。
 常温仕様の水さえ漏れなきゃただかっこよければいいってわけにはいかない条件がキツイので、知ったかぶってただ今使ってる土にペタライト混ぜれば何とかなるってわけでもないっすよ。
 そして我々はその土の最大限のポテンシャルを発揮できるように作り焼くわけです。心せよ!(自分に言ってます)

 あ、それと今週の橋本忍さんの動画ですが、面白かったです、みんないろいろ考えてますねえ参考になる。

 重ねて焼いた蓋が本体にくっつくのは普通によくあります。アルミナで作ったもの重ねてアルミナの焼成温度帯で焼きゃあアルミナのるつぼ同士でも多少くっつきますよ。もちろん材料個々や適性範囲内であっても焼成温度の高低によって程度は違います。

 それを焼結といいます、そのために焼成してるんだから。
 これがうんと細かい粒子同士にバカデカイ表面積で起こってるのがいわゆる焼結~焼き締まりです。
 焼結しやすさによって易焼結性、難焼結性という言い方をするんですが、易焼結性の材料だと重ねたところがくっついちゃうなんてよくあります。

 組成だけでなく粒度(粗いと焼結しにくい、細かいと焼結しやすい)含めたいろんな要因があるんだと思います。

 日用品に限らず一般陶磁器だと釉焼成がメインなのでなかなか素地同士重ねる機会がないですよね。
 小指の先ぐらいの土団子を10個ぐらい作ってピラミッドにして棚板の隙間に入れて焼くとその土のくっつきやすさがわかりますよ。

 軽くこじったり叩けばはずれる程度ならそのまま、たまにチッピングしちゃうぐらいくっつくんなら何か処理をしましょう。詳しくは動画を参考に。井上さんの動画もリンクしながら飛べそうです。
 
 まあ寒いしこのぐらいかな?


写真は仕事もしてる証拠です。

 
 余談もいいところですが、セラミックやってるといろいろ鉱物名で検索する機会が多いんですよね。で、まあよくあるパターンではあるんですが、「鉱物名+すごい」とかで検索するとそれこそすごいの知ってましたか?

 で、今回話題にしたペタライトってっググるといわゆる「パワーストーン」な話の結果ばっかりがてんこ盛りで、見出しの下に見えてる分だけでもよくまあこんなこと本気で言ってんのかいな?とびっくりするフレーズがビシバシ出て来て楽しいですよ。嘘八百ってこういう時に使う言葉じゃねえの?
 「まともにモノを考えられるようになるパワーストーン」ってのはないみたいです。  
 




 

2020年1月10日金曜日

定番のジルコニアタンマン管 と正月早々縁起悪い話

 時期的にリピートものが特に多いので、相変わらずですが、こんな感じで進んでいきます。材質によって白かったりちょっと黄色っぽかったり、寸法も太さや長さが変わったりですね。
 寸法材質、オーダーでドンドコ作りますのでお気軽にお問い合わせください。
 
これは小ぶりな中では太目の方かな?何言ってるかわかりにくいですけどね。  
 

 
 
 ヤキモノやってる以上避けて通れないのが割れですよね。
 で、先月あたりから割れについて考察するシリーズやるよって言ってますが、これ需要あるんでしょうかね?
 割れたのを悔しがりながら内容を調べて検討する(結局実際どうだったのかわかんないことも多いけどね)ってのは、我々本職にとっては精神的どころか大マジで経済(営)的なダメージなので当然で、むしろ喜びのベクトルに向けなきゃやってらんないんですが。
 趣味で教室行ったり家でやってる分にも皆さん当然考えてブラッシュアップ目論むとはおもうんですが・・・
 俺だったらまあしょうがねえや、次いこ次!ってなっちゃうかも。
 実際友人のパチーノも「べつに~、なんか違う面白いネタ無いの?」みたいなつれない態度。

 たとえばこんな時、どう考えていくか?とかね。
これ、暮れの出来事。焼成時の割れです。マジショック!
自分なりには状況と原因いくつか見当ついてますが…

 まあ自分の頭の整理の為にもまとめたかったんだけど、思った以上に大変ですなあ。簡単なのは割れたの見ながらいろいろくっちゃべることなんですが、動画は動画で別口で大変なのと検索性ワリイしなあ~。
 
 というわけで、製作工程でのしくじりに限らず、ダメ品をどう扱うかというのから始めることにしますね。 
これは出来悪かったんでこのネタのために割りました。

 割れなかったものでも、ダサい、出来悪い、ミスがある、ただポイするんじゃなくて次回以降への糧にしましょ。
例えば、こういった場合はまずはプロファイルを取ります。プロファイルってのは、各部いろいろ思いついた限りの部位を確認したり、いろいろ測ったります。
 この場合、各部の肉厚、締まり具合、拡大鏡で組織の状態を目視、とかね
 測れるのは寸法重量だけではないすよ。
 
 大皿なんか割れたりひん曲がったりしやすいはずですが、底の中心部分、外寄りの部位、起き上がってる所、といった感じで三~四か所のみかけ比重や吸水率を測ったりすると、底と側面の密度差があるのかないのかわかると思います。

 次は落っことした奴(笑
下地が赤いんでわかりにくくてすみません。

 これ赤黒く焼ける土で、この底面の色がまあ本来表に見えるの素地の色です。
が、割れた後見ると黒いですよね。空気に触れてる、表に出てる部分は赤くなるけど肉の中は黒いわけです。
 ところが・・・ 

 こうして見ると口元の部分の見込み側には素地の内部まで赤くなってる部分が。
 じゃあ、火の通りの問題で黒い部分は熱量たんなくて生煮えなのか?、とか、身の芯の方は還元状態だったりするわけ?、とか、でもやっぱり鉄酸化物の状態の違いには決まってるよなあ?、まじ?決まってるの?とか、作る時口元が締目足りねえのかな?、とか、はたまたここだけ釉が薄くて酸素の交換が可能だったのかも、なんか別の素材がついちゃってたのかなあ?とかいろいろ考えちゃうじゃないですか。

 で、作る時の手順段取り、焼成温度帯とかキープのさせ方とかもいくつか次どうするかアイデア沸いてくるじゃないですか。沸くだけでどうするかは別な話だけど。

 みたいなラビリンスに入り込むのが面白いんだよね。みたいな。

 え?俺だけ?

2020年1月6日月曜日

今年もよろしくお願い申し上げます 2020

 言いたいことはタイトルで全部言ってしまいましたが、
 本年もつくばセラミックワークスをよろしくお願い申し上げます
 



 正月早々しくじってたら思いっきりガッカリしちゃうので年明け一発目は安定してる定番ものの窯出しで幕開け(笑

 正月早々しくじってたら思いっきりガッカリしちゃうので仕事始めの本日はこれらを仕上げて梱包して出火出荷。



 とか言いつつなんだかんだ仕事場に長時間いたんですけどね。はあ~
 用事で出かけた帰り、夜遅く一人車走らせてたらラジオの中で中島みゆきが故郷行の乗車券~とか歌ってましてね。一枚も持ってないしまるっきり詳しくないんですけど、子供のころからなじみがある初期のは滲みるわ~。マジ天才じゃね?ユーミンと違って流行に乗ったり流行を作ったりもしてないと思うんだけど、ブレがなさそう。
 とはいえ、ここの所TVタイアップなんかでよく流れてくるのはなんだか話も本人の存在感も異常にデカくて別にファンでもないし全然乗れなかったんですが、昔のもっともっと個人的感情グラグラの半径の狭い日常の庶民の生活レベルサイズの曲聞くとね。オジサンいつのまにかウッカリ泣きそうでしたよ。年か?
 やたらと里心がついて一応きちんと帰省してきました。

 何だこの話?