2020年1月11日土曜日

ペタライトって名前かわいいよね~土鍋 熱衝撃の話とか

 今回はまるっとダバナシです。
この写真は一切関係ありません


 冬真っ盛り、いまごろ作りだしても商売的にはちょと間に合いませんが、土鍋の季節ですね。うちはアルミの鍋ですが(何たる怠慢)

 土鍋、というのは粘土屋さんでは耐熱土、なんて名前で作られてるんですが、陶芸用土は何でも耐熱だろ!別な言い方のほうがいいんじゃないでしょうか?
 耐熱は温度に耐える、耐火は火に耐える。耐えて来てるじゃねえか!
 なんて心底くだらないツッコミは気にしないでください。

 容器の名前としては英語で言うと、オーブンウェア、フレイムウェア、なんて言い方がありますが、これらは用途に即しててわかりやすいですね。

 とにかく土鍋やグラタン皿(鍋?)のようなフレイムウェア(この用語を使います)、多くの場合、名前のかわいいペタライトというものが配合されています。
 ペタライトは長石の一種で、古い?和名?だと葉長石といいます。
 曹長石はソーダの多い長石
 カリ長石はカリの多い長石(正長石とも)
 この二つが一般的に長石ってただ言った場合の長石かな。

 灰長石はカルシアを含んだ長石
で、葉長石(リチウム長石)の鉱物名がペタライト、これはリシア(酸化リチウム)を含んだ長石。「葉」が何だかは知りません
 カルシア、リシア、それぞれがカリウム+ナトリウム分に大きく置換されてる形の長石で、シリカ分アルミナ分はそこまで比率変わらないみたい。

 細かいことは言いませんが、このペタライトを混ぜる(正確には普段の長石の全部あるいは一部を置き換える。通常粘土よりも長石分は多いみたい)ことで直火にかけても割れにくい耐熱衝撃性の高いヤキモノにしているわけです。

 熱衝撃ってのはサーマルショックとかヒートショックとかいってカッコいいんですが、熱衝撃ってのもなかなか衝撃的なネーミング。お好きな呼び方でどうぞ。短時間に起きる温度差(急熱急冷ね)に対する壊れにくさです。
 ちなみにこれはセラミックスに限った話でもなくて、人間でも寒い中風呂入ったり出たりすると危険なので気を付けましょう。雪の中露天風呂とかもってのほかですよ。超気持ちいいけど。

 耐火度(耐熱度)が上がるってのとは全然違います。(まあとりあえずそういう言い方をしてるってのは分かってますよ)
 耐火度はザックリいうと溶けちゃったり軟化しちゃったり物性組成が変化しちゃったりで使い物にならなくなる温度域(熱量だろけど)のことです。

 うちはるつぼ屋ですから、中身はおでんどころか金属の溶けたのをグツグツやるわけで、マグマ鍋用の土鍋を作ってるようなもんですな。高周波の場合は見込の中の金属が急激に発熱してメルトし、土鍋の外側の方が温度が低いという逆モーションですが。
 てなわけで熱衝撃はまじでライフワークになるテーマの一つです。


写真はイメージです。

 料理用品の耐熱衝撃性に関しては、簡単には以下の要因が考えられると思います。

 ①熱膨張係数(率でもいいや)の大小
  その素地がある温度からある温度に達したときにどれだけ膨張(線膨張でも体積膨張でも)するか
  たとえば室温1000㎜のものが1000℃で1010㎜になったり、1002㎜だったりと差があるわけです。
 相当昔からデータありますけど、そんなもん熱間でどう測ってたんでしょうかね?昔の人は。

 ②その熱膨張の曲線がどれだけ直線に近いか。
 熱膨張はずっと比例的に起こるのではなくプロットすると曲線です。波をうったり急に折れ曲がるようなカーブを描きます。
  ある温度域で急にアップダウンしたりする点のないなるたけリニア、フラットなものが望ましいわけです。
  
 ③熱伝導率
 熱の伝わりやすさです。熱伝導低いのに膨張収縮が大きいと日の当たる部分と裏っ側や遠い部分との差がデカくなり歪む。
 
 ④ということはやはり大きさや肉厚が大事。
 薄い方、小さい方が使用中温度差は少なくなるので耐熱衝撃性は理論上高いと言えます。でも小さいとみんなで突っつけないし、薄いんじゃあそもそもの機械的強さがたりないよね~。

 ⑤気孔率
 気孔が存在することで各粒子(としておきましょう)の膨張収縮をかなり吸収することができます。ほとんど0では歪の逃げ場がないし、割れたときの割れの進行も早い、あんまりあってもおつゆが漏れちゃうよ。
 リシア素地やコージェライト素地が普及するまでは、まあ気孔率高め焼結も甘めの焼き上げで熱衝撃に対抗していたということでしょう。土器なんか結構強いと思います。
 ファイン的にはやりようありそうですが、ムズイわカネ掛かるわ設備要るわで日用雑器としての土鍋としてははっきりこの辺がベストということなんだと思います。
  
 等々、各点これ以上細かい説明は、やろうと思えば長くなるし、すればするほど馬脚を現す恐れがあるのでとりあえずここまで。ちなみに一般陶磁器の主成分の一つであるシリカ(SiO2、硅石)は熱膨張も熱伝導も大変低い優れた材料です。極端な例ですが石英ガラスなんか炉心管に使われていますよ。とはいえ多結晶焼結体では機械的強度が低かったり、結晶構造の変化点があり劇的なのでそこをきっかけに割れやすく、単味でモノ作るのは大変難しい材料だったりします。

 で、ペタライトが普通の長石に置き換わると何が変わるのかって言うと、普通はないリシア分が加わります。素地中で反応して焼結を促進する役割(まあ簡単に言うとすぐ隣のアルミナやシリカとくっついて溶け馴染み合う)のカリ&ナトリウム分が酸化リチウム(リシア=Li2O)に結構な分量置き換わります。
 そうすると通常酸化カリウム(ナトリウム)+シリカ+アルミナだったものが、リシア+シリカ+アルミナの組成(スポジュメン、リシア輝石とかかも)となって、これがすこぶる熱膨張が低い!自分は扱ったことないんですがリシアっての自体も相当熱膨張が低い上に曲線がフラット。500℃ぐらいまで熱膨張ほぼほぼ0だって話だった気が(細かいことはよく知りません)
 とにかく単なる急熱急冷に対しては飛び切り強いというわけです。
 
 熱膨張いくら低くても機械的強度が低いようじゃ話になりませんから、その辺は粘土屋さんの腕の見せ所で、それ以外の原料(粘土鉱物や硅石等の組成と粒度)の配合で焼成温度域の幅広さの確保や焼腰、そして大事な成形のしやすさ扱い易さを調整してくれてるわけです。各社の鍋土は作りやすいニクイの差がデカいみたい(誰か忘れたけど談)ですし、リシア素地って焼成温度幅とかその辺シビアだそう(大昔リシア研究してたファインの師匠談)ですから、少々高くても評判イイ土買って使うのが吉。
 常温仕様の水さえ漏れなきゃただかっこよければいいってわけにはいかない条件がキツイので、知ったかぶってただ今使ってる土にペタライト混ぜれば何とかなるってわけでもないっすよ。
 そして我々はその土の最大限のポテンシャルを発揮できるように作り焼くわけです。心せよ!(自分に言ってます)

 あ、それと今週の橋本忍さんの動画ですが、面白かったです、みんないろいろ考えてますねえ参考になる。

 重ねて焼いた蓋が本体にくっつくのは普通によくあります。アルミナで作ったもの重ねてアルミナの焼成温度帯で焼きゃあアルミナのるつぼ同士でも多少くっつきますよ。もちろん材料個々や適性範囲内であっても焼成温度の高低によって程度は違います。

 それを焼結といいます、そのために焼成してるんだから。
 これがうんと細かい粒子同士にバカデカイ表面積で起こってるのがいわゆる焼結~焼き締まりです。
 焼結しやすさによって易焼結性、難焼結性という言い方をするんですが、易焼結性の材料だと重ねたところがくっついちゃうなんてよくあります。

 組成だけでなく粒度(粗いと焼結しにくい、細かいと焼結しやすい)含めたいろんな要因があるんだと思います。

 日用品に限らず一般陶磁器だと釉焼成がメインなのでなかなか素地同士重ねる機会がないですよね。
 小指の先ぐらいの土団子を10個ぐらい作ってピラミッドにして棚板の隙間に入れて焼くとその土のくっつきやすさがわかりますよ。

 軽くこじったり叩けばはずれる程度ならそのまま、たまにチッピングしちゃうぐらいくっつくんなら何か処理をしましょう。詳しくは動画を参考に。井上さんの動画もリンクしながら飛べそうです。
 
 まあ寒いしこのぐらいかな?


写真は仕事もしてる証拠です。

 
 余談もいいところですが、セラミックやってるといろいろ鉱物名で検索する機会が多いんですよね。で、まあよくあるパターンではあるんですが、「鉱物名+すごい」とかで検索するとそれこそすごいの知ってましたか?

 で、今回話題にしたペタライトってっググるといわゆる「パワーストーン」な話の結果ばっかりがてんこ盛りで、見出しの下に見えてる分だけでもよくまあこんなこと本気で言ってんのかいな?とびっくりするフレーズがビシバシ出て来て楽しいですよ。嘘八百ってこういう時に使う言葉じゃねえの?
 「まともにモノを考えられるようになるパワーストーン」ってのはないみたいです。  
 




 

3 件のコメント:

  1.  何かいろいろ説明足りないところも多いけど、知っててもどう使えばいいんだよな話になりそう。

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  2. 折からのペタライト高騰のニュースからたどり着き、興味深く拝見しました

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    1.  コメントありがとうございます。
       ペタライト高騰って僕も聞きました。ほとんど使わない上に鍋用の土はまだ数10キロ余ってるんでいいんですが…
       コージェライト系の耐熱耐火器の記事出したら受けますかね?1300℃超える炉じゃないと厳しいんだよなあ~。

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