最近はヤキモノ関係豆知識記事がとんとご無沙汰ですみません。
ネタはあるけどまとめようとすると面倒で記事にあがってないのは随分たまってるんですけどね。
そこはそれ「忙しいんじゃむしろそれで結構」と寛大な心で気長に待ってください。こんなこと言ってたら記事を上げたら上げたで「暇なのか、大丈夫か」とか心配されるのも恥ずかしいけどね。
とはいえ偶にはやっとかないとなあという中、軽く済ませられるいいネタ見つけました!
みんな大好き大困り
「釉薬底に溜まってガッチガチでマジいやになる問題」
にちょっと言及したいと思います。
言いたいことは…
「沈殿しないのは実は困る!でも固まっちゃうのは勘弁してくれ」
もしくは、
「多少固まってもいい。でもかき混ぜたらなるはやで懸濁してくれ!」
違いますか?少なくとも俺は一切沈殿して上水が分離しない懸濁しっぱなしの釉薬スラリーは大っ嫌いです。
だって比重調整が超厄介になっちゃうじゃん。
まずはこれ、この動画をご覧ください。サムネの顔も話し方もぼんやりしてますけど、これはかなりのお役立ち情報ですよ。
ある程度以上のヤキモノ好きならキヤマ先生の対策、うなづける経験あると思います。マジそれなーみたいな。
一つキヤマ兄貴に突っ込んどくと「ベントナイト」はフツーに粘土鉱物です。無機物、鉱物。木節とかと一緒です。焼いても飛びません。 保水具合&ねっちょり具合が半端ないので素地や基体として使うんじゃなくて助剤として少量使うのが都合いいよね!ってなってるだけです。コメント欄にある「半透明になっちゃった」てのが透明不透明のどっち方面からずれたのかわかりませんが、釉薬調合のバランスの都合では粘土が増えりゃあそんなこともそりゃあるよと言っておきます。
あとどうでもいいけど塩焼けばそりゃ塩素ガス出るわな。あぶねーよ。まあ事実上は量の問題です。本場英国やアメリカの塩釉も環境や状況、窯のサイズや土地によって規制がかかってたり届け出が必要だったり本当は禁止だったりするみたい。そもそもはその代替的にソーダ焼成の技術が発展中みたいよ(昔留学中の研究者がうろ覚えに聞いた話のうろ覚えですので証拠もないし調べてもないです。そりゃあぶねーはあぶねーよ)
俺たちのセンセイも解説済みだよー
とりあえず用語。
例によって重箱の隅を突っつきますが、ザザット調べた限りでは、「沈殿」という言葉自体にかき混ぜるのが厄介なほどに固まるかどうかは含まれてないみたい。
「凝固」というと化学的には状態変化(水~氷とか)のことみたいなので、この言葉も使わないとすると俺の脳細胞に蓄積された幾億のボキャブラリーから
「(おそらくクーロン力、あるいはファンデルワールス力による)カッチコチ」
あるいは
「凝集(沈殿凝集)」
という言葉をとりあえず今記事内では使いたいと思います。「凝集」は’国語辞典的’には”凝り固まる”ことだそうで。(どっちもあんまり自信がないけど、まあいいでしょう。この先はもう話が通じればOKということでヨロシク!)
例によって言葉尻とらえて七面倒な話になってますけど、おしゃべり動画と違って文章だと間違いがバッチリ見た目に残るからな。読者もセラミックスガチ勢ばっかりだしあんまりヤワなウソ書けないんだよ俺は(笑。正しい用語や語釈、定義をご存じの兄貴姉貴はよろしく御教示願います!
改めて話に戻ります。
釉薬は沈殿してもOKです。というか沈殿しろ!
上水に分離しないと濃度調整がクッソ面倒になっちゃうんだよ!
問題は「カッチコチ」あるいは「凝集」
と、いうわけでこちらの手間&感情的対応は三つ
1・カッチコチはもうしょうがない!その点はあきらめた!
2・とにかく絶対に困る
3・どちらともいえない(というか、そんなん程度と都合によるわ派)
1は、釉の組成は変えたくない!固まるのは仕方ない。
この場合問題はうまいほぐし方ですな。
対策その1は機械的解決法。
中にはカリカリカリカリ半日やってるのがマジでタマランとか言うドMさんもいるかもですが、それはもう勝手にやってください。
とにかくほぐし方。いろいろあるみたいですが今回は言及しません。何せ俺はこの派じゃないんで(笑。
キーワードは「ロープ」「タガネ」「ハンマー」「エリック一家」「根性」みたいです
俺の場合は、そういう釉薬はポリプロピレンのでかい広口瓶にビー玉と一緒に溜めているので、釉掛けの準備してる間にミル掛けします(瓶のケツをゴムハンで叩いたりツームストンパイルドライバーなどを連発して中身を割ったり浮かしておいたりはします)。
レッグドロップはおススメしません(広い場所が必要なので)
まあ妥協案としては
・使おうが使うまいが毎日毎日日課としてかき混ぜる、ぬか床作戦
なんてどうでしょうか?
では対策その二・
凝集しにくく、あるいはしないようにする
先に挙げた動画の木山先生が喋ってるのは主にこれの話ですね。
これには基本的に3種類あります。
A・粒度をもっと小さくする
B・調合に手を加える
C・薬物ドーピング
Aはキヤマさんも説明してますね。場合によっては同重量でも比表面積が増えるから、粒子同士の接触点が増えるし、活性が上がって違う何か不都合を起こす可能性もありそうだけど。
とりあえず設備も必要だし今回は無視。
基本的にBとCですな。
これは境目が微妙な場合もあるんですが、とりあえず考え方として別物ととらえたほうがわかりやすいと思いますよ。
B・調合に手を加える
は、一番簡単なのは粘土鉱物の調合割合を増やすと硬く凝集しにくくなります。おきにの釉調合の場合、あんまり加えても釉調(主にサーフェスのマット←→光沢)が変わってしまうので、そこは注意。ベントナイトを加える、あるいはクレーと一部置き換えるというのもこの理屈です。〇〇粘土よりもベンナイのほうがこの手の効果が強いので釉調の変化を抑えつつスラリーの性質を変えやすい、というわけです。。
その他、経験的にドロマイトやマグネサイトが多いと凝集しにくいように感じています。石灰石は基本沈むよねー。
石灰石、長石、珪石だけってのは地獄の一丁目だと思ってます。
釉調に影響のない範囲で、場合によっては釉調を変えてでも原料配合をいじくってしまう、というパターンですね。
自分はどんな釉薬でも最低5%はガイロ目粘土を入れています。十分カオリンが多かったりすれば入れないけど。
C・薬物ドーピング(それ用の薬剤を添加する)
Bとの違いは、そもそものヤキモノ原料以外のものを使うのか否か、というイメージ。
目的別に「○○用添加剤」みたいなもの。
苦汁や水ガラス、ソーダ灰といった無機のものもあるんですが、有機物、フノリやでんぷん、コーンスターチや、化学合成された有機高分子(ファインは断然こっち)の場合もあります。
何をどれだけ入れるかなんてそれぞれだと思いますが、基本的には、扱いやすさに支障のない範囲でちょびっとゲル化させてみたり、粒子間に反発するような電荷の状態にさせておく、結果凝集しないですぐ分散させやすい。みたいな捉え方でいいんじゃないかな。
注意点
無機物の場合は、ナトリウムやハロゲンが存在するので焼成した釉薬や素地に大なり小なり影響を与えます(流行としては、一般的に好ましい方向の気がする。もろちん程度の問題)
有機物の場合は焼き飛ぶので焼成後の素地や釉に化学的な影響は出ないんですが、モノによっては腐敗の問題(特に天然素材)や、合成物でもアラビアガムやCMCといった勝手にこっち(ヤキモノ屋)が使ってるものは流動性や何やかやに不都合が生じる場合がありますね。
もろちん化学屋がセラミック専用に開発してくれた添加剤ならそういう不具合はほぼほぼ無いようになってるはずです(あれば売れないし)。何しろ沈殿防止剤っつってんのに保管が聞かねえようじゃまるっきり意味ねえからな。
近所で買えるものを利用する場合は少量から試してみましょう。
専用薬剤の場合はお店の方やメーカーの担当者によく話を聞いてみましょう。基本オタクが出てきて早口で懇切丁寧に話してくれますよ。初心者だからって尻込みしないでOK!初心者はオタクの大好物です(話が無駄に長くなる可能性はあり)
あ、今の話、具体的のどこの会社の誰さんとかはないですからね。
沈殿凝集問題に関しては、
「釉薬の調合を一切いじりたくない」場合。
機械的解決法を模索する
「凝集すること自体を抑えたい」場合
配合を変化させてみる。
薬物ドーピングを検討してみる。
で、うまく解決法を探ってみましょう。
個人的にハンドリングの観点から見たベストな釉泥漿の状態は
1・1日できっかり上水と分離するぐらいには沈殿する。上水が少々超微粉フワフワ状なのは我慢する
2・でも凝集はしない。ダマもできないし、あの謎の半透明なフレーク状の何かも出ない(あれ何?)
3・ずーっと懸濁したっきり濃く出来ないのはダメ。全ゲル状になってしまうようなのはそれもめんどくさい。
といった感じです。なかなか難しいんだよなあ。
おススメあったら俺も知りたいわ
追記
読み返してみたら具体的な数値が出てないんでボンヤリしてますな。
いずれも釉なり素地なりの調合でドンピシャなんかは無いと思うんですが、一番の基本線と思われるのを記しておきます。
粘土鉱物の場合。
ベントナイト追加の場合、釉薬原料の乾燥重量に対して外掛けで4%の追加までなら「経験上問題はなかった気がする」です
カオリンやガイロ目なんかでも一緒です。釉調変化にシビアな人は知らん。
もうこれ以上粘土鉱物を増やしたくなければ、粘土の一部(5%とかからかな)をもっと粘っこいのに替えてみる。
効果劇的度数は
ベントナイト>>>>>>>キブシ>>ガイロ目
ベントナイトは可塑剤としても使えるので切れやすい土や伸びの悪い土、腰のアマイ土に混ぜるのは常套手段です。
添加剤ですが、
原料の乾燥重量に対して、添加物の有効成分が外掛け1%ぐらいからを目安に初めて見てください。
物によってシビアだったり甘々だったりいろいろですが、必ず重量で計算すること!!そのうちに入れる量の許容範囲がわかってきます。
試験段階での嵩あわせは上手くいきません。いきなり「スプーン一杯」とか言ってるような人は必ず失敗します!
ヤキモノの調合、よく料理にたとえられますが、少なくとも手のうちに入れるまでは料理は料理でも煮ものじゃなくてケーキです。