ちょっと業務連絡も兼ねてですが・・・形についての解説というかノーガキ、作る側の人間はこんなことも考えて形を決めたり作ったりしてるんですよ~、みたいな記事。これは今回紹介するような日常生活用の器にしても、相当に限定された決まった目的のあるファインセラミックスの器でも一緒です。
と、言うわけでまだ生のマグカップ
このタイプのカップは私が好きで、私以外にも好きな方がいらっしゃるのでチョイチョイ作ってます。そのマグカップに口を付けてピッチャー(水差し、というか注げるタイプ)にしたものです。サイズはマグのままですから片口マグカップって感じ(どんな感じじゃ!)
タンカード式、と呼んでますが、タンカードってのはビール飲むカップですね。ビール用なんでデカくて(指四本握り!)結果もっと細長いモノが多いようですが、多分イギリスなんかだと古典的な形らしく、日本でいうと民芸的というか、まあとにかく伝統的なスタイルっぽいです。「ロードオブザリング」とか「ホビット」でもこんな感じの器でビール飲んでました。クッソ長いうえに超面白いので、確認のために見直してもどこで飲んでたか忘れてしまうんですけどね。多分アラゴルンと初めて出会ったところ辺じゃないかな。(全部うろ覚えの上裏付けなしの話ですみませんね~)
とにかくその形をマグカップにして、いつの間にかテナズンダらもっとずんぐりしてた、いまここ、みたいな敬意です。
ピッチャーにしたのは、子供たちがもっと小さいころ、兄妹でコップからコップに移したり少し頂戴とか、まあいろいろ遊ぶんですがその場合こうなってると都合がいいというわけで作りました。ガチままごと可、みたいな。
飲んでよし注いでよしの二刀流とはものは言いようで、ぶっちゃけビンボー削りみたいな発想ですが一部お母さま方には受けました。もちろん子供にも。
普通、水差しから直飲み、なんてのは行儀悪いこと甚だしいんですが、作った俺がピッチャーマグだっつってんだから「その行い、それでよし!」
で、今回は作り手の考えてることシリーズ(いま考えた)として、ネタにしてみます。
器には口と胴回りの関係としてどう考えても基本この3種類しかないと思うんですが、
1、口径=胴径 切立ち、ストレート型
2、口径>胴回 ラッパ型
3、口径<胴径 口すぼまり
このうち、このタンカード型ピッチャーマグ(長い!)も当てはまる3番について
日常、器が欠けたり割れたりするってのはどうしても口元からが多いと思います。なぜっていうと一番外側にあるから初めにぶつかるのが口元なんですよ。で、端っこだから構造上どうしても「持ちこたえ強度(造語です)」が低いわけで欠けちゃうわけです。
胴回りの一部が欠けるなんてのはめったにないですよ。物理的なうまい説明は私にはできないですけど誰でも経験上あっさり呑み込めますよね?この話。
そもそもビール飲み器なわけで、そりゃカンパーイなんつってガチンとやったら口欠けちゃったりしたらめでたさにケチが付くわけでこの形状になったのは理にかなってますよね。
杯の場合はそろりとチン、なんつってやるんだと思うんですが、しっとりした雰囲気ならともかくこれから大勢でサウロンの城攻め落とすぞ!オリャー!なんてときにそれじゃあ負けちゃいそうですよ。だからドイツ軍の連中はプロージット!なんつって足もとにグラスを叩きつけて割ってますもんね。何言ってんのかわかんなくなってきたんで、とりあえず気合い入れてガツンとやる、しかし割るつもりはないという前提な以上こういう形には意味があるってことです。
口元周りが一段帯状にしてるのも構造上の強度を上げるための工夫だと思います。これは取ってつけるときにも都合がいいので俺も踏襲してます。ちょっとした見た目上のアクセントにもなりますしね。
結果、取っ手も壁も厚めで丈夫な器になってます。重いのに中身が空だとなんか飲み足りない気になって、ついオカワリしちゃったりしますのでお店で使うにも都合がいいのかもよ。
底がベタ底なのははっきり言って製作上の手数と成形にかかる土の無駄を減らして価格を下げたりする意味もあると思います。これは庶民の日常の器ですからね。
作り手は誰に向けてるのか、ということも意識して作ります。日常使いの器です、とかいう器やその器の作り手はたくさんいますが、誰(ぶっちゃけどのぐらいの経済状況の家庭)の日常なのか、ということは言いにくいので誰も言いません。
俺とキムタクは同い年です、俺はカローラフィールダーに乗ってますが、キムタクはカローラフィールダーのコマーシャルに出てますが絶対乗ってねえだろうなあ。みたいな話。まあ昔からある言い分ですが一脚何万もするカップ売って「民芸」っつてもどんな民だよ!一杯3千円の親子丼ってなんですか!みたいな話ですよ(ディスってるわけではありませんよ)
話それましたが、この品物は具体的に誰、どんな層に向けて作ってるのかってのも作り手はある程度以上考えてます、ってことを言いたかったわけです。
ちなみに俺は、せめてフランフランや無印(つまりなんでも雑貨屋)からユーザーを「ヤキモノ屋」のもとに取り返したいぐらいの感じ、かな?結構大事なレベルの話だと思うんだけどな。各産地の製陶所だけでなく、個人でやってる方にもそういった価格帯の「しっかりしたいい器」作ってらっしゃる作り手はたくさんいますよ。
話が長くなりましたので終わりにしますが、口元も高台も厚さも何もかも作る側は全部考えて作ってます。上手くいってるかどうかは微妙なことも多いですけど、ただカッコいいとおもったから、だけではないんですよ!ってことを激しく強調して、皆さんが少しでも「作り手のわかるヤキモノ」を買って使ってくれることを祈りまーす。特にうちの(笑