モノを作る技術には治具や道具の開発力(大げさ)も含まれます。まあどんだけカネあっても作らなきゃ存在しないもんもいっぱいありますからね。
ずいぶん前にも、超かっこよくて便利な切針、通称「ベルリンファイル」をご紹介しましたが、今回はもう少し工作技術が必要かもしれません。
削り工程の際に高台があったりと何らかのザグリがあるのなら先に芯に指で押さえる用の穴を刳ってセンター抑えにするわけですが、こんなベタ底の場合はいまいち都合が悪いんですよね。
見えにくいかも知れませんが、切り糸跡のロクロ目(通称ツイストストリングスグルーヴ、今名付けた)を残したい場合ただ指で押さえたんじゃあ擦り切れてぼやけちゃうんですよ。
この糸目を綺麗に残しつつきっちりチャッキングあるいはホールドするための道具を作ります。
まあ粘土やシッタでピタピタに固定しちゃえばいらないのかもしれませんが、土の状態や作業の都合によってはしっかりセンターを押したい。
自分の場合、特に変形させてないお碗や蕎麦猪口なんかはロクロの鏡にシリコンシートやEVAスポンジを水気で張り付けてベタ置きするだけでポンポン削りたいので、いちいち粘土で固定するなんてことは基本やらなくていいならしたくありません(もちろんじつは結構するけど)。となるとセンター押しは必須。
実は今までこんなことをしていました。
この左下のパーツですが、ヨーヨーのギミックパーツで、トップオントリック用キャップです。これが素材は分かりませんが樹脂製でとにかく滑りが最高なんですよ。ただこのパーツ、薄べったい板を熱間プレスしたのかな?とにかくセンターの指のための窪みが向こう側ではでっぱりになっちゃってます。
参考動画、トップオントリックとキャップの使い方。
ベタ底の場合は…
こうスポンジで嵩上げして…
こう
これがいちいちめんどくさい。カッチリ専用品を作りたい。
秘密工作課「Q」機関(aka灰色の脳細胞)の出番だ!
懐かしい方出しちゃったよ
回転するワーク(お碗)に対して回転しっこない指を直接押し付けるから擦れるわけで、それを防ぎます。
要求タームは、
1・底と一緒に回転し、決して土とは擦れない。
2・指との摩擦係数は低い方がいい。指の位置を決めるための窪みか何かも必要。
3・多少しっかり押してもたわまず、土も傷つけない。
4・ついでに、パーツの直径が高台の直径のガイドになってればなおヨシ。
ここでスラストベアリングを利用するのを考えちゃいがちですが、どんな安物ベアでもガタやブレの許容範囲がロクロで茶碗作るなんて作業には向きません。きっちり芯出ししないとかえって使えないので却下です(経験ありますよ)
でこんなのが「Q」の提案。
厚手の円板のセンターに中指がハマる以上の径の丸穴、もしくは皿穴をあけて土との接触面にはEVAスポンジシートを両面テープで接着したもの。
板厚8㎜となってますが、穴の深さの余裕を見てまして、これより厚ければ90°角で開けたとしても指穴が貫通孔になっちゃうことはありません。
材質は素材を材料屋から買える人はPOMが安くていいんじゃないでしょうか?というかそんな人は俺より絶対素材も加工も詳しいよね。金の余ってる人はテフロンでもなんでも摩擦係数の低い高級なエンプラお好きに手に入れてください。
そうはいかない機械加工とは無縁の方にはお勧めの素材をホムセンで見つけておきました。
もう一つ製作済みです。ゴメン
はい。最近流行のプラッチックのまな板です。
近所の山新グランステージで買ってきたこれは厚さが13㎜と分厚く、素材がPP(ポリプロピレン)ですので切削性もへったくれもないほど加工しやすいです。手鋸やカッターナイフでシュルシュル削れます。
しかも値段が280円!
簡単に手に入る13㎜の樹脂厚板なんて他にないですし、うっかり個人が素材屋で買うといらないほどでかいのをそれなりにいい値段で買う羽目になりますので、自作好きにはお勧め。
綺麗に円板に削り出すには電動ろくろ(そもそも旋盤です)でやる方法を編み出しまして今回ワザワザそのワザで削り出しましたが、ブキなおっちょこちょいに下手に真似されると指が無くなる可能性もありそうだったのでお蔵入りさせます。何しろ非推奨の使い方甚だしいし、先日「塩釉だのソーダ焼成だの聞いて何の対策もない電気炉に塩ぶち込んじゃう人もいるからうっかりしたこと言えねえんだよね~」みたいな話も聞いたので。
ロクロに固定してヤスリで何とかしてもいけそうですし、サイアク円の精度は取れなくてもいいのでコンパスで描いた線に沿ってなるたけ丁寧に削りだせばいいかな?ロクロにペーパーを張り付けてワークの方は手持ち、ってのもよく使う方法です。ロクロの天板は定盤代わりにつかえますので、生や素焼き後の修正や面出し加工にはよく利用します。
今回の場合は、たとえばエンボス加工がきつくて後でスポンジをうまく貼れない、とか、板がたわんでて平面精度が気に入らない(これはありそう)な場合に使えます。
中心にはドリルで皿穴開けるわけですが、これも道具(電ドル、ボール盤)のない方でも錐を手持ちでクルクルやるだけでキレイに切れますよ。この辺は木じゃそうはいかねえPPならではの柔っこさです。
とにかくこれを自分の欲しい分だけ作ります。
今回は径で10㎜刻みで4枚
必要な分作ったら…
EVAシートスポンジを張り付けます。
これはダイソーで100円で売ってます。ココでは1㎜。もっと厚いのもありますよ。他の素材やすべり止めマットの類でも使えるのはたくさんありそうです。
接着剤ですが、PPに使える奴わざわざ買うのもあれだし、ぼろくなってから剥がすときに難儀するのも業腹なので両面テープをお勧め。強力に張り付かないのもむしろメンテしやすいので好都合ととらえます。
ハイ完成
ちょっとした手工具とKUFUするココロさえ持ってれば
380円で「お好きなサイズに」作れますよ!
高台の内側を先にザグる人はそのサイズに作っておけばいいし、いろいろな特化した機能のある形状のも作れそうです。
まあね、今回のこれが即あなたのヤキモノライフにどうこうってことはないかも知れないですが、こういう考え方は特に揃いモノを作る時や作業の効率化にメチャンコ利いてきますので、頭に入れておくと楽しいかもよ~。仕事によっちゃあ治具を思いついた時点で勝ったも同然ってことが結構ありますから。
お前になってからちょっとハッカー感強すぎ
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