かなり長文になりそうですが面白く読める人は読めるはず。無駄口に興味のない方は後半からでもOK!
つくばを代表する研究所の一つ(俺が好きなだけかも)森林総合研究所の川上先生(有名鳥類学者・主に白縁メガネ)が無謀にも恐竜を語る本が面白かったわけです。鳥類はある種の恐竜の進化系だと考えられる今日この頃、鳥も恐竜も同じようなもんじゃ!鳥類目線で恐竜も語れるはず。だとすれば、俺(無名るつぼ職人・主に青縁メガネ)が植木鉢を語ったところでおんなじヤキモノの器なわけだしそこまで調子っぱずれなことでもありますまい。
もちろん私は川上先生じゃないので知性はもちろん、読んで面白いほどの文章力もありませんし、これは挑戦状じゃなくてラブレターですよ、なんていう謙虚さもあんまりないので期待しないように。盆栽マニアは今のうちに読むのをやめた方がイイかも。
普通の食器や花器よりも植木鉢盆栽鉢の方が考え方によっちゃあ坩堝(というかファイン)に近いんですよ。そりゃ一番るつぼに近いのは土鍋やグラタン皿とかのオーブンウェア、フレイムウェアの類なんじゃねえかと思いますが・・・まあその辺は書き出した勢いもあるんで細かいこと言うナって。
とまあ、その辺をつらつらしようと思ってますが、先に言っておきますが私は盆栽についての知識はゼロです。オーダーした友人もぶっちゃけ始めた?ばっかりのドシロートだそうで、こんな形のに作ってくれよ~程度の話なので引き受けました。これが条件の細かいガチのマニアだったりしたら引き受けませんし向こうも俺になんか頼まないでしょうね。
勝手な思い込みで申し訳ありませんが、盆栽はクッソめんどくさい連綿と続くしきたりマナータブーそのたもろもろ権威付けの済んだ何かがありそうだよね。お茶の世界の嫌味(はたから見てシチめんどくさく感じるとこって意味です。別にディスってません。あんま興味ないし)、ジャズマニアやSFマニアのウルセー感じとかのアレみたいな(すべて個人の偏見です)
とりあえず書物や当たってみたネット情報を取りまとめて、この灰色の脳細胞が好き嫌いの激しい子供が八宝菜を食べるように要点を抜き出してヤキモノ視点で植木鉢盆栽鉢を語ります(ぶっちゃけとりあえずエビデンス抜き!)
~~~~現在検索中・現在検索中~~~~~~
おお!俺も植木鉢作りたかったんだよ!どれどれ。と思ったあなた。ネットはあんまりあてになりません。というか指標になるほどのレベルでは情報を集められませんでした。もちろん私のことですから研究ベースの論文やそれに類するものを検索してみようと思ったんですがほぼほぼ日本語はゼロ。植木鉢、盆栽鉢、必要な機能。みたいな検索の掛け方では盆栽好きがおんなじようなこと言ってるだけで「ソコをもう一つ具体的に…」みたいな感じの情報ばかり。我々がいざ作ろう!とした場合のよりどころや外せない基本線はいかにも心もとない程度です。俺の心がもう一段回すさんでたらもしかすると目がつぶれるような下品なディスワードが並ぶことでしょう!なページもチラホラ。
調べた割に得るものが少なかったんで一言だけ余計なこと言わせてもらえば、立派な盆栽作ってるっポイ人のページには大体「『盆栽』とは「盆(鉢)」と「栽(植物)」でできています。どちらが欠けても盆栽ではない!木だけじゃなくて鉢にも心砕くべきです!」とおっしゃってます。俺なんかそれ読んでほーほーなるほど上手いこと言う!と感心したわけですが、こと鉢に対する件を読むと、ヤキモノ人ならほぼほぼ皆さん「エラソーなこと言って語る内容が(中略)かよ!」な印象持たれること必至。
これは俺が上から目線だということは認めるとしても、植物を愛してる盆栽初心者の方だって同じ感想を持たれるはずです。もちろん向こうもヤキモノ屋じゃねえんだからしょうがないのは分かってますよ。勢い重視で書いてますからソンタクよろしく。
茶器ならいいんですよ、そいつが何言ったって。場合によっちゃあ水漏れしてたって構わんような気持ちの世界だっていえばそれまでですから(極論ですよ、気を悪くしないでね)
でも植物を育てるための容器、である以上、食器やなんかとは違って物性からくる機能というものが非常に大事になるに違いないんですよ。
花瓶から茶を飲もうがコップにスパゲッティ入れようが細かいこと抜きにして都合悪いのは気分ぐらいなものですが、コップに植木をブッ刺したら根腐れしちゃいますよね。不都合からくる「生命の危険」があるわけです、大げさに言うと。そりゃ上手に育てりゃ緻密のルツボでサボテン育ててる友達もいますけどね、とりあえず今はそういうことじゃないってことで。
ぼんやりした批判めいてますが、そんなこんなで一時間パーにしたので、信用できる人の書いた本から引っ張ることにします。
素木洋一先生著「セラミックスを考える」
もう手に入らないような本で申し訳ありませんがこの本の1章7項に「植木鉢の科学」という題で4ページほど。この本は多少専門チックな知的面白読み物、セラミックエッセイといった風で、専門的過ぎず大雑把過ぎない「楽しい本」です。昭和62年の本ですよ。俺が中山でサクラスターオーが競走中止したの目の前で見て世の中を信用することをあきらめた年じゃね?メリーナイスじゃスターオーの代わりは務まんねえんだよ!みたいな(唐突に遠い目)
もっと古い窯業関係の専門書も手元にある分はあさってみたけどこれしか今回役に立つ記述を見つけられませんでした。植木鉢なめられてんなあ。
あととりあえず、序文。すばらしい!
この先生の弟分?が俺の先生の一人ってなんたる幸運
植木鉢の項はたった4ページの内容といえ、まるまる引用したほうがいいレベルに簡潔にまとまってて本来俺の出番なし。どうせもうとっくのとうに絶版本だし中身ばらしちゃいますよ。
俺の無駄意見は最小限にして重要と思われる部分を俺っぽいいいまわしにいじくって抜き出します(失礼を承知で文字通りの引用ではないです)。古い本なので細かい部分や状況は現在の知見や規定と変更あるかもですがその点もソンタクを。
・園芸番組等では、土の種類については細かく教えてくれるが、なぜその鉢を使うのか、なぜ素焼き鉢なのか?などということについては説明がない。知っていて言わないのかも知れないけどおそらく関心を持ったことがないんじゃないの~?
・植木鉢の研究ってのは全然つまらなくないぞ!植木鉢には一応心にとどめるべき学問的問題がちゃんとあるのだ!(注:一応にワロタ)
・たとえば、透水性、バクテリアの繁殖、肥料の吸着、気化熱による冷却、応用できる仕事がいろいろある。実は細菌濾過機は植木鉢の研究の応用なんだぜ!
・イギリスとドイツでは特に詳しく研究されていて、物理的性質と植生の関係も詳しく報告されてます。(ここまで導入部。第一幕)
でここから第二幕が本論?。具体的な数字を伴ったりする記述に入ります。
イギリス、ドイツそれぞれでの基礎粘土の組成が詳しく書かれますがさすがにその辺は略(気になった方はお便りください。教えます)。恐ろしいことにかの国々では公的に決まった基準もあるみたい!
・焼成素地の物性分析値(イギリスのある様式では、だけども)
嵩比重 1.78
吸水率は24時間浸水後で14.9%
5時間煮沸後で18.4%
ということは飽和係数0.81
耐圧強度 1平方センチ当たり282㎏
残存可溶性塩類 合計0.94%
注・飽和係数については過去記事にも記述したことなかったですね。ごめんなさい。
この場合24時間浸水後吸水率と、五時間煮沸後の吸水率の比です。つまり、タダではなかなか浸水して行かない、逆に言うと溜まった水がなかなか外に出ていかない気孔の割合、と言えなくもない感じ。これがわかると何がわかるかというと、値が小さい=抱え込んで離さない水分が少ない、ということなので真冬に凍裂=凍って爆ぜる現象にたいして抵抗力があるので割れにくい。他にも加熱する場合やなんかには水が水蒸気になるときに膨張する負荷が減るのでそういう割れにも強い。ということになります(理屈上)。もし、あなたのフレイムウェアが相当乾かさないと火にかけたら割れちゃう!なんてときにはこの値を下げるようにすればいいわけです。個別に具体的にどうすればいいのかまではわからないので、購入土使う方は調合専門家の粘土屋さんに相談してみるのがいいと思います。自家調合の場合はガンバレ!
先に進みます。
・素地は一般的に言って(この一般はセンセがざっと標準を比べた結果、と思います)
1:できれば石灰含有量の少なめな、
2:適量含有された酸化鉄で焼成すれば美しい赤になり(後述します)
3:吸水率は15~30%程度で通気性、透水性がなければならず
4:可能な限り可溶性塩類の残留がないこと
5:水に浸かりっぱなしになっても軟化したり水和崩壊したりしないレベル以上には固く焼成されていて
6:凍害により損壊しないこと
といった性質が必要
設計、成形に依存する性質では、
1:植え替え時に根を傷めないように内面はできるだけ平滑に仕上げてあること
2:スポッと取り出せるような見込みの形状であること(これは俺が勝手に付け加えました。袋物で植え替えるのはなかなかできないよねって意味です)
ここまで上げた点が食器よりもファインに近い!といった理由です。単に形状や見かけの良し悪しでなく物性が内容物に大きく影響するのでむしろそっちが必須条件になりえるというわけ。
「あなたの器で食べるとごはんがおいしいわ!」なんてのはヤキモノ屋が是非言われたい台詞ランキング上位で、もちろんあり得る事実ですが、よっぽどマットだったりスカスカだったりで汁染み込んで煮詰まっちゃった~なんてことでもない限り(それでもなかなかないと思う)、甘くなったりしょっぱくなったり味が化学的に変化するわけじゃないですよ(某何とかいう土鍋は除く)。しつこいけれども気分の問題じゃ済まない、中身が影響受けちゃうってことです(食器個々の物理的機能性そのものは無視して話してますからね。食器作家の方は気分悪くしないでね。)
色が一般に赤なのは
1:植物の緑の補色なのでよく映えて美しく調和する
2:まあ普通掘ったの焼けばだいたい赤いので都合がイイや!で安くつくはず(これも俺の妄想による追加項目)
3:素地中の酸化鉄が食性に影響があるかどうかは明らかではない。注:ただし昭和62年現在の先生が知ってる限りの学術的データでは、です。令和元年現在は知らん、ネットでは出ませんでした。なんかいろいろ胡散臭い酸化鉄含有活力剤はいい値段で売ってますよね~、99%とかほとんど水のくせにマドンナが買って飲んでそうな水より10倍高いだろアレ(それ言っちゃあ終わりの言いぐさ)。
どうです、ここまで読んだだけで明日ホムセンの植木鉢コーナー行きたくなっちゃうでしょ。
・ヨーロッパの植木鉢は色も美しいし肌はきめ細やかで若い女性の肌のように滑らかである(これは先生の主観過多です!)
・この後は機能と直接関係ない形状について、ドイツ型、フランス型、ベルギー型についての記述(そんなんあるんかい!)。アメリカで調べたけど植木屋とかホムセンで売ってるのはイタリヤ製の輸入品でした、だれかアメリカどうなってるのか知ってたら教えてくださーい。といった話。
そして話のラスト、落ち、エピローグの部分一文は違わず引用します。(二文か…)
「ある植木屋に聞いたという話をきいた。盆栽用の底の浅い鉢で中国とそっくりのものが日本でも作られており、全く同じものであるが、盆栽を育てて一年もすれば両者ははっきり区別できるそうである。」
このキレのあるラスト!いいっすね。中国製が元で日本製が似せた、ということだとは思いますが、区別できる!とだけでどっちがイイとも悪いとも書かれずわからず。一年もすればってのも経験からくる重みがあっていいじゃないの。何個で比べたんだよとか植物の個体差のがデカいんじゃねえのかとかそういうツッコミは野暮でしょ。多分この場合植木屋の話は合ってるだと思いますよ。それにしてもココで終わっちゃうのがもどかしいけどエッセーだからしょーがねえ。
初めに盆栽好きをちゃかしましたけども、動物学者が猟師やサーカスに学び、植物学者が庭師や農家に習うように、ヤキモノ屋もこと植木鉢に関しては花屋さんとか盆栽マンの知見に学ぶところ多いに決まってます。盆栽に至っては何しろうっかりしたら三桁年間。その長時間使って出てくる違いも絶対あるはず。どやって確認すんねんとか、個人作家で対応できるとは思えませんが、分析と経験のタッグによるブレイクスルーはココには絶対あるんじゃないかな、と思います。
タイトルに偽りあり「るつぼ屋のおやじ、不遜にも大先生を孫引きまくるだけのくせにエラソーにふるまうの巻」でしたな。こりゃ。
なんか書ききれてないこと多くて、論点すらオバサン連中の会話みたいにふらふらしちゃいましたが長くなったのでとりあえずこの辺でいったん締めます。
次回はもう少し簡潔にまとめ、さらに具体的に設計して、最後は作ってみたってところまでできればいいかなと思ってます。断っときたいのは植木鉢、盆栽鉢のセオリーに従う気はそこまでない!という今回の記事なんだったんだっていう進行になるかと思われるところ。御期待は乞いませんよ!(乱暴で勝手な言いぐさ)
器というものを機能性でとらえることができる方ならうすうすわかってらっしゃるとは思いますがね、たかだか植木鉢(素焼き?プっ)と侮るなかれ。「ヤキモノ屋のハシクレじゃき、植木鉢なめたら・・・なめたらいかんぜよ!」(不必要にスゴんでみました。しかも使い方が違う)まあ、なめてみると気孔率の大小ぐらいは分かりますけどね。
おせっかい豆知識ですが、夏目雅子は鬼龍院花子じゃありません、松恵さんです。勘違いしてる方多いってのが先日の飲み会で分かったので…
いやあ、今日の記事はいろいろ勉強になるなあ!誰か褒めて!
いかにこの本の目次を載せておきます。
知りたい部分がありましたらメールでもコメント欄でもご連絡ください。可能な限り記事にあげますので
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