前回の続きです。改めて説明するのも字数が増えて面倒なので、興味ある方は前の記事を読んでください。
前の記事に関してイノウエ先生もブログ更新してまして、おじさん同士がいちゃつきながらむしろハードルが上がっちゃってます。逆に困ったわ!
熱伝導の話からなだれ込むように窯詰の話になってますが、そういう流れです
ヤキモノ作ってしくじる原因なんてのは何か一つではなくて、複合的なもんです。乾燥さえしっかりすれば何とかなる!とかの、原因の追究を一点突破型にするとかえって良くない場合もいーっぱいありますよ。
そもそも、本来素焼きは無理が通ります。重ねようが立てかけようが、セオリー通りの形状で、しみじみ作ってチャンと乾いてればほとんど事故らないもんです。
前回今回と話してるのは、それでも割れちゃうんだよなーって場合の話です。なんもなければ神経質に考えなくてもいいものですよ。手筋として覚えておくといつか使えるかもって感じです。
まあいいや、まず前提です。
1・まず設計や作りを見直す。
造作しくじったんなら作り直す、設計ミスっただけなら考え直す。これはもうここで言ってもしょうがないけど、思い切ると新しい方向性も出てきます。参考までに例えば、
構造上、底が分厚くなったり肉厚差が大きいのはもうこうしちゃってますよ。まあこんなのは今回の主題ではないんですが…
2・必要なだけ十分に乾燥させる。長時間しっかり、それでも不安ならば早い段階で蒸気乾燥等の技術を使う。経験的にいうとですが、見かけ上の乾燥状態よりも、残存水分が器体内の各部分で均一であるほうが大事な気がします。
ここまではシッカリやってるつもりなんだけどな~、じゃあ焼こう!となってから窯詰の技が活きてきます。
基本的な目的は前回も書いたし、井上先生も引用してくれてたコレ。
焼造物には可能な限り一様に熱がかかるようにセットする。
つまり棚板との接触面積が大きいことによって各部分の熱の伝わりに差がが出るので、少しでもそれを解消しよう。ということです。
何らかの壁で直接炎や輻射熱を遮り、電熱をソフト化する方策は前回紹介しましたので、今回は違う方向で。
とにかくいろんな方法で、棚板と作品の底との間に空間をあけて熱とエア、ガス(品物から出る水蒸気や炭酸ガス)の通り道を作ります。
もちろんいままでできてんだったら、下手なことしないで今まで通りでいいんですよ。窯詰工夫すると上手くいくことがあるので気になったらやってみてね。という話です。
中には、そうすることによって致命的かもしれないデメリットが生じてくる場合もあるので、そこはまあいろいろ考えて試してみてください。
3・何しろゲタを履かす
トチなんか作ればいいんですよ。原型作るの面倒なら欲しいサイズ数種類一個ずつ買って石膏型でも取りましょう。高いもんでもないけどね。
この手の複数点支持は、焼造物のサイズと目方の関係が問題になる場合があります。
簡単に言えば、平たくてデカくて重いから自重に耐えられなくて割れちゃうし、本焼きなら垂れたりします。
その場合は三点支持ではなくてもっと支持個所を増やします。
その際は焼成したトチや座布団ではなくてやはり目土を使うほうがいいです。
作品の底も、棚板も、トチもピッタリ平面上で支え合えることはまずない(歪んでたり凸凹があったり何かくっついて突起になってるところもある)ので、きちんと荷重分散させることは難しくなりますからね。結局ほとんど三点支持にしかなってなかったり、そうでなければカタついたり大変だわ。この、実はきちんと平面合わせで荷重を受けれてないってのが焼成事故の大きな一因になっているはずです。
また本焼成では収縮が発生します。デカけりゃデカいほど動く距離がでかくなるうえに、自重で下に押さえつけられる力が点接触のせいで大きく、収縮したいのに引っかかってストレスフリーに収縮できないと焼成歪みが大きくなりますし。この辺は別の機会にネタにするわ。
高台がないベタ底で、なおかつ面積が広い、でかい、重いなんて場合はとにかく厄介。今までのやり方では難しいこともあるかも。
そんなときのための窯詰の工夫をさらに一つ紹介します。
★おススメ・敷粉クッション方式
大きな平面底をしっかり面で荷重を受けて、なおかつ少しでもフリーに動きやすく、きちんとエアと熱の通り道を作ります。
用意するものは、
1・敷粉用の粉末
シャモットやセルベン、珪砂なんかでいいでしょう。私はファイン屋なのでそれ用に電融アルミナを使っています。
熱伝導率高い材料のほうが絶対にいいので、できればアルミナ細粒をお勧めしますが、陶芸材料で売ってるかどうかは知りません。
あんまり微粉末ではなくて、焼いてもそれ同士では簡単に焼結しない砂糖のようにさらさらしてる粒度のもの。メッシュで言うと自分は80~200番程度を使います。あんまり粗いのもガリガリしちゃって違う面で面倒が発生しそう。
2・例えば3㎜ぐらいの平板2枚
タタラ板でもなんでもOK。わざわざ買うぐらいならアクリルの定規2本とか竹ひご2本とかでも十分です。2枚が同じ厚みであることが大事
以上です。
では手順を写真で解説しまーす。
平底の物、タタラ板、棚板(見やすいように青いシートですが)を用意
よく見るとこの円板クラック入ってるじゃん。お前偉そうなこと言って素焼き割れしてるじゃんってのはナイショでお願いします(笑
タタラ板の厚みに敷粉を広げます。
敷粉の天端が平面になりました。
これのいいところは棚板が多少反ってたり凸凹があってもメチャンコ綺麗な平面を作れるところです。
また、微粉末(珪石なんかの-325メッシュとか以下)だとこの時に均一な密度で広げることが難しくて、なおかつ焼成後に大きく収縮したり固まっちゃったりしてかえって悪い影響があるのであんまりよくないです。
指でひっかいて溝を作ります。これが火道になります。
もっと多くてもいいし、十文字でもいいですし、お好みなら18禁なマークでもOKです。
これでベッド(床のこと。業界ではそういうんです)になります。
ブツを真ん中にそっと乗せてそっとスリスリします。そっとが大事。
ある瞬間ピタッと吸い付くようになるはずです(そう感じる)
そっとはずすと・・・
こんな感じになってるはず。
もっかい載せなおして軽くスリスリすればセット完了です。
この方式だと、棚板とブツの底面との不平衡を均一な密度で埋めることができ、荷重をなるたけ均等に分散して広く面で受け、クッションにもなり、エアの通りも確保できます。
証拠写真出せないのでどのぐらい効果があるのか見せつけられないのが残念ですが、この方法で、800㎜Φ×10㎜tの円板を3枚重ねで焼成して成功したことがありますよ。
以上です。
これらをやってなおかつ毎回底が割れるようだとすると、
・そもそも上手に成型出来てない。おぬしにはまだ早い(笑
・そもそもその土の焼き腰の限界。
・まだ理由はわかんないけど何かが悪さしてる。
って感じだと思います。
実際、プロの皆さんみんなそうだと思いますけど、窯詰だけで一晩余裕で話せますよ。
こんなんで為になりましたかね?なーんか言い足りないこともいっぱいある気がするんですが、実際窯詰のKUFUなんて、その品その時の都合で変わることも多いので大雑把な話しかできないんですよね。
質問が具体的なら場合によっては細かく話せるかもしれないけど、原因も推測なら、KUFUと結果の因果関係も結果論からの推測しかできないんですよ。正直な話。
でもその推測が自分なりに理にかなってるかどうかが結構大事で、その意味でも化学的だったり熱力学的だったりの知識はいくらあっても荷物になりません。
ま、俺もあんまりないんだけどさ。何とかやっていけてますので、参考にしてみてください。
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