2020年10月8日木曜日

炭酸バリウムと炭酸ストロンチウム

いや、雰囲気出してみただけで炭酸バリウムじゃありません。
探してくるのめんどくせえ。


  なんだか最近秋と春が目減りしてきてるようで、ついこないだまで暑くてユデダコになってた気がするんですけど、気づけばずいぶん寒いっすね。

 

 土鍋の季節も近いなあといったところで、俺たちのイノウエ先生のこんな動画がアップ。


 じゃあ週末まで雨みたいだしリハビリ代わりに久々土鍋でも作ろっかな!と土鍋の注文受けたわけでもねえくせにやる気パワー猛チャージ。テレビショッピングかよ!焼酎でも貰ったか?みたいな終わり方ですが気合は入りました(笑


 そんななか、賢治の里、みちのくは花巻の陶芸家ウジサキフサジさんのコメントからヒントもらってちょっとネタにしてみます。


 なんだっつうと、今炭酸バリウム入手しにくいよねって話。今って言っちゃうところがオッサンだよね。ずいぶん前からです(笑


 炭酸バリウムに限らないんですが、バリウム化合物は毒劇物件ですからいろいろ制約があると。

 炭酸バリウムのSDSへのリンク

 あ、健康診断で飲まされる造影剤の「バリウム」は珍しく(確か唯一なのかな?)毒性のないバリウム化合物ですから安心してね。名前は硫酸バリウムっつってなんか相当やばそうだけど。


 主に釉薬材料として長い間使われてきた炭酸バリウムですが、その安全性の観点から使わない方向、炭酸ストロンチウムに置き換えが勧められてる状況です。

 炭酸ストロンチウムは今のところ毒性が確認されず、それでいて第二族元素酸化物として炭酸バリウムと性質がよく似ています(そうです)。

 代替品と言っちゃあかわいそうだけど、炭酸ストロンチウムが使われるようになったのは比較的新しい話だそうで、まあバリウム塩の代替品としてヤキモノ界デビューなんだろうね。

 炭酸ストロンチウムのデータシートのリンク

 何の規制もないのでさっきのサイトではあつかってないです。現段階では安心のはず。

 もちろんストロンチウムだからって放射性物質としてバリバリ散らばっちゃったものとは全然違いますよ。金属と酸化物、炭酸塩、同位体元素、等々がどういう意味かよく確認してくださいね。早合点したりヨードチンキ飲んだりする前に。



 バリウムやべーのあぶねーのとぱっと燃え上がる前に、いくつか確認しときますよ。(というかとっくの昔に燃え上がった後ですよ!)

 1・買えないわけじゃない。資格と許可取ってる材料屋さんなら扱ってますので身分証明書出して我々でもパッと買えます、実は。量の制限がある程度。

 ではありますが、身分証明書提示ってことは「店側に追跡の義務がある?」「使う側(買う側ね)も取り扱いについてわかってる」という前提の儀式に他ならないんじゃねえの。一応そのぐらいの責任を伴うと、形式的ではあっても。


 2・基本的に粉末材料として取り扱う側(つまり我々作陶者)にとっての健康被害の話です。溶出云々の使用者に対する安全性問題とごっちゃにしないように!

 

 で、安全性云々の話はどの立場からにしろ今回の趣旨ではないので語りません。その先は自分でよく考えたうえでヨロシク!と言いたいんですが、一言だけ。

 たいしたことないという考えの方も危険であるという考えの方も、お互いを尊重しあいましょうってことです。

 

 ・普通に買えるレベルではあっても毒物なのはハッキリしています。だからある程度の法的規制があるわけです、世界的に。

 ・しかも我々が扱うのは大変表面積が大きい微粉末です。被爆のしやすさは岩石、クリンカー状態に比べて跳ね上がります。

 ・多分通常レベルでの被ばくであれば、後々の病状症状の原因としてはっきり指摘できないような場合も多いと思うんだよね。青酸カリやトリカブトじゃねえんだから。

 ・たまに釉薬作る程度じゃ体内で何とか排泄したりの処理ができる、問題ないはずなので心配ないとの論調(データ付きでも)。これはバリウム塩に限らずいろいろな面で多分事実だと俺も思うけど、だからって気にしてる人に言うようなことでもないです。

 俺も昔ノロウイルスを摂取後一週間ぐらいで体内から撃退しましたけど?


 信じてる人はセサミン食えば若返るし、壺買ったおかげの幸せに包まれます。心配してれば必要以上にダメージを追います。

 放射線にしろその他の自然毒物にしろ日常的に摂取・被爆しちゃう分もそりゃありますが、それは言ってもしょうがない。日常生活で摂取する分以外は無きゃ無いほうがいい余分、過剰分なのも事実です。

 同じウイルス食らっても無症状の人もいれば亡くなる方もいる。個々人体質的リスクもあるかもしれないしね。

 ビーガンだっつってるやつに平気だからこの肉食ってみろつってどうすんのって話ですよ。

 個々の判断を尊重!

 もちろん単純な事実誤認で、言ってわかる相手なら説明すればいいし、やばいレベルの危険事象の場合には身を投げ出して説得してください。口開いてないアサリむりやりほじくろうとしてるとか(笑


 はい。結局長くなっちゃったけどここまでは前置き!!






 数少ない経験ですが、炭酸バリウムと炭酸ストロンチウムで比べてみた知見など記しておきますので参考にしてみてください。参考にならんと思うけど。


 実際使い勝手はよく似ていると感じます。

 アルカリ土類酸化物としては、カルシウム、マグネシウム、と同じ役割ですが、釉調はこの二つよりも全然バリウム釉に似ています。

 まあ釉調についての話なんでね、何とも主観的な話にならざるを得ないんですけど。


 欧米の(ってまた大雑把なくくりだな)書籍によれば、単純に同量を置き換えるより、ストロンチウムのほうが2割3割増しぐらいでほぼほぼ同じ感じ~、という話を読んだことがありますね。自分で試してもそう感じました(俺の場合結構雑ですが)

 モル質量で比べると

 炭酸バリウム 197.34g/mol

 炭酸ストロンチウム 147.63g/mol

 なので、まあ関係あるのかどうかわかんなけど確かに3割増しだわ。

 

 炭酸バリウム使った釉薬のほうがより強く反応性を見せる傾向がありますね。

同じ族(周期律表の縦の列、この場合左から二列目)でいえば、原子番号のでかいほう(より下段)がより強いアルカリ土類特性を示すらしいっす。アルカリ土類としての性質ってのがどういうことなのか、詳しく知らんけど、たとえば酸化物になった時の水和性はカルシアよりも酸化ストロンチウム、酸化バリウムのほうが激しい、とか。その二つ見たことも聞いたこともないや。

 実際ベリリウム、ラジウム(この辺は俺ファインでも全然扱ったことないっす。どっちもやばい系。毒性、放射性。いくら積まれも断ります)省いて四つとはいえ、

 マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、の順でなんか反応性(感覚的な話。単に融点がぐっと下がるってのとはちょっと違う)高いような気がしますよね、釉薬材料としても。


 実際試してみたのがこれ。ずいぶん前のだけどね~。  

上部がBaCO3使用、下部がSrCO3。重量比同量

 上下ともに同じ調合でBaCO3とSrCO3の違いだけ。重量比で同量なのでモル比はさっき示した程度の違いがあるので比較になるのかどうかですが…。色は酸化第二銅を外割1.5%です。

 よく言われるとおり、BaCO3使ったほうが色味は派手目に出るのかもね。溶け具合も多少勝ってます。


 石灰石に比べて、比率増していったときにできるマット調の作りやすさ安定性は良好と感じたのを覚えてます。マグネシアのほうが上だけど。まあこの辺は組み合わせた材料で大きく変わりそう。


 軽く大雑把に比べると、

 炭酸バリウム 健康被害の危険性あり(事実)

        同グレードなら価格は安い(事実)

        発色は強くて際立つ(とされている。主観)


 炭酸ストロンチウム

        安全性は担保されてるようす(現状確からしい事実)

        価格は高い(事実)

        名前がなんかカッコいい(どうでもいい)



 判断してみますと、確かにきわめてよく似ているが、好みの釉の調子を細かく、特に発色の好みを追求するにはやはり別物。ってところ。そもそも元素が違うんだからな、当たり前。


 自分の場合、使うんだったら炭酸ストロンチウムを使います。以下理由。

 A・もともと炭酸バリウムを使っていて代替品じゃうまくいかねえんだよなあ~なんて困ってるわけでもない。

 B・炭酸バリウム使えば100%バッチリなんてわけないし、1からやってくんならストロンチウムだって一緒。

 C・発色がいいなんてのも極論すれば主観だしね。もしかするとノスタルジースパイスが多少効いてるのかもよ(と思い込む)

 D・よく考えたら俺、原色っぽいの作る気あんまりないわ

 E・歴史の浅い材料使いこなせるならそれはそれでチャレンジング(この言葉なんか笑える

 F・名前がかっこいい(またそれかよ

 G・炭酸ストロンチウムはまだあまってるけど炭酸バリウムは買い足さないとほとんど持ってない

 H・偉そうなこと言ってるクセに、実はずぼらで出鱈目、防護にも杜撰なので浴びても平気なほうがいいわ(笑


 といったあたりかな。

 でもバリウム使いたくなっちゃうんだよね~今後どう規制が進むかわかんねえしな~将来若いやつに自慢できるのかもな~(笑

 修行してた会社の古株は今は無きトリア(酸化トリウム=ThO2=これはヤバイ!)のるつぼ作ってた経験があってね。古株研究者からもトリア何とかもう一回使いたいんだけど~なんて言われたことも何度もありますよ~

 

 あ、そうそう、土鍋の釉薬は目止めになる程度に薄掛けすりゃあ経験上ではなんでもOKっすよ。


 なんか本論のほうが主張のないうっすい内容になっちゃったなあ~

 






 

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