2020年10月23日金曜日

園芸用土VSヤキモノ屋 テストピースの作成

  先日紹介した園芸用土ですが、まずは胎土としてどうなのか、面白半分にいじくってみましょう。

 園芸・農業と陶磁器、どちらも「土に強いこだわりを持つ」ことにかけては二大ジャンルといっていいでしょう。他は知らないけど。


 かくいう私はその片一方の端くれ。粘土じゃ野菜は育ちませんが、園芸用土を焼き固めるぐらいはできるはず。何言ってるのか全然わかりませんが。


 用意したものはこちら

 皆さんご存じ、赤玉土と鹿沼土です。

 この両者、どちらも鹿沼市産。また、同じ売り場の隣にあった「黒土」という腐食分の多い園芸用土も鹿沼市産でした。日本の園芸、農業をただ一市、アンパンマンのように体を切り取って支え続ける鹿沼市。年々体積や平均標高が減り続けているに違いありません。

 鹿沼市には足を向けて寝られませんね。



 そして道具は、厚手のビニール袋、

 綿棒にちょうどよさそうな太さのVP塩ビ管

 ザルとボウル

 ゴム手袋

 虫よけスプレーです。


ビニール袋に入れた土を塩ビ管でゴリゴリでつぶします。
せっかく団粒化しているものを粉砕するのは気が引けますが、気持ちいいです。

つぶしました。
粒隗ごとの鉄や水分の含有量が色の違いに表れています。

適当なざるで篩います。
こうすることで可及的均一に混ぜ合わせることができます。

篩いました。
右が原料分、左がいらない分です。

いらない分はラズベリーの株元に捨てておきました。
本来の仕事を思い出したように、イキイキしています

赤玉土、鹿沼土ともに造粒作業が終わりました。
 当たり前ですが両者ともに、粘土らしい可塑性はほとんどありません。
 軽くて、吸水、保水力が高く、凝集粒子としてカッチリしていながらフワフワでもあります。多分ですけど、これで鉢植えや盆栽、ポット苗なんかを育てたらうまくいくんじゃないかという気がします。


 テストピースの円板を成形しました。 

 単味100%で3つずつ、さらに、もう少しやきものらしくなるかと思って蛙目粘土を20%混ぜ込んだものを2つづつ作っておきました。焼成したら思いのほかボロボロになって、「やりきれない気分で即実験終了」になるのを防ぐ意図があります。


 また複数作っておくと、うっかり壊してしまった時の予備にも、焼成温度を変えてみたりすることもできます。素のまま焼いたものと釉掛けしたものを比べることもできます。

 


成型密度の違いも試してみました。我ながら手が込んでいます。
(ほぼ同量でも右はより高圧なので薄い)





鹿沼土100%です。
左のはめんどくさくなったのでダマのまま叩き込みました。
色の違いは数日前に試しで作ったので乾いているだけです。
ちょっとほわほわしてて軽いです。焼成後の強度がちょっと心配です。

鹿沼土80:蛙目粘土20%です
見た目何ともイイ感じです。
 蛙目粘土は成型助剤として大変優れているのを感じ取れました。よく締まって密に成型できました。

 

赤玉土100%です。
こちらは単味でもよく締まりました。
ひびが入って見えるのは、試しにダマのまま叩き込んだせいです。
右の二つは粉砕後の原料を使っているので均一です。

 赤玉土80:蛙目20

 これはもうほとんど耐火物を作ってる気になるほど、普段の作業と違和感がありませんでした。誰にも請求書を切れないのがウソみたいです。

 

 これらのテストピースは、週末予定している1000度の焼成に入れてみようと思います。

 もし、その後もうまく焼けるようならば、この令和の時代、栃木県に新たな窯業名産地「鹿沼焼」が誕生するかもしれませんね。特別縁もゆかりもありませんが、鹿沼のためにここは一つ頑張ってみようという気がしてきたような気がしないでもありません。


 ただしこのままでは、コネコネする以外成型法に引き出しのない方は何も作れないことになってしまいますね。

 

 鹿沼純度は下がりますが、蛙目粘土をもっと加えてみます。

 ほぼ1:1まで加えると、タタラ打ちや土器なんかにはちょうどよさそうな具合の可塑性を得ることができました。
黄色い鹿沼土粒がそこかしこに見えています。
食べた翌日のトウモロコシの胚芽みたいですね。


箸置きなど作ってみました。
写真にはありませんがトウモロコシうんこ鹿沼土でも試作してありますので、ご安心ください。

 轆轤にかけられるようにするには、もっと可塑性原料を増し入れたりするよりかは、スタンプやミル、ジョークラッシャー、あるいは水簸といった工程や設備が必要になりそうです。

 この後、SF小説のように電気のない世界や工場なんて稼働できないような世の中になってしまうと、轆轤の水挽のみでぽんすこモノを作る、なんてことは、地域や環境に左右される、誰でも簡単にできることじゃないってのが想像できると思います。じつは轆轤というのは、ものすごく産業的な設備でありシステムでもあるんですよね。大袈裟ですけど。

 次は、鋳込み成形でテストピースをつくります。 

すでに溶いてあった蛙目粘土単味の泥漿を加えて練ります。

 赤玉土分の解膠剤も必要でした。鹿沼土はシリカ分の割合が非常に高く、実際酸性が若干強めなそうなのでファインシリカ用の解膠剤が必要かも?と思ってたんですが、現状粒子径も粗いし関係なかったです。杞憂に終わりました。よかった。



石膏型のヘリで離型するかどうか確認します。

あっさり剥がれて泥漿は準備OK。
 さすが全人類80億人のうち、上位数%に入るほどの鋳込み上手です。

 

 めっちゃ小さくてしょぼいですけど焼成試験用のテストピースができました。時間がかかって面倒なので、一個だけしか作っていません。

 

 こういう何やらわからないもので鋳込み泥漿にする場合は、ph値を測定することが必要なことがあります。離型したりしなかったり、成形体が乾燥や焼成でバラバラになったりならなかったりする場合、実はうまくいく泥漿ph値の範囲があったりします。

 今回は前頭葉の指示に何となくしたがったら上手くいきましたが、取れるデータは全部取るのが初めの一歩にはお勧めです。


 では、今日はここまで。

 来週何の音沙汰もなかったら「ああ…そうだったのか…」と、窓から見える夜景にグラスを傾けてください。




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