2021年3月26日金曜日

「小学生と土器づくり」用あんちょこ? 成形の日編

 先月今月と二回に分けて小学生の土器づくり体験会を行ったことは記事にしました。

 今後似たようなことを行うかもしれない先生方(学校の先生もヤキモノのセンセイも)に多少は足しになるかもしれないし、何より自分のためにある程度まとめておきます。 

  私も初めてだったので、何をえらそーに言ってやがる!と自分でも思いますが、とりあえず「今回の条件では」と但し書きを付けたうえで、事故(何も作れない子がいる!とか、ことごとく壊れたり爆ぜたりしちゃう)の無いように70点以上で終わらせられる自信はありますよ!

 しかも俺は別にヤキモノの作り方教えて銭をもらう仕事は一切やってないので、ボランティアでしたし、この程度のことはただで教えますよ。えらいね!!


今回の条件

 小学六年生 20人+担任の先生1人(さらに興味があってうろうろ覗きに来てる暇な先生方)

  生徒のうち一人は自分ちの娘、さらに腕力ヒエラルキー元気者上位2人はうちの町内の子なので指揮系統はかなり思うがまま。

 講師サイド るつぼおじさん1人

       +その女主人1人(ど真ん中でお手本示す係)

  女主人(家内です…)は、俺よりはるか上級の作り手なのでお手本もバッチリ。

 場所も燃料もいくらでもあり、周りの住宅との距離も天文学的。

割り当ての時間は、成型日に授業2時限分、焼成日は朝から昼間まで半日ごっそり。  

 と、かなりの好条件です!


では

成形編

 準備するもの:なるたけ作業に支障がない範囲で最小限に

 なにはなくとも粘土!! 

 手づくねしやすく焚火にぶち込んでもそうそう割れにくいもの。『野焼き用粘土』なんて名前のものならそのままでOKでしょう。

 問題はその状態。この辺、あまり経験のない方は、粘土購入の際にメーカーやお店に確認しましょう。「届いた状態で使いやすい状態にしてもらえますか?」なんて言うだけタダだと思って聞いてもいいと思います。あんまり硬すぎたり柔すぎたりで売ってるのも見たことないですけど、即使いやすいとは言えない場合はかなりありますよ。普通使う人は練るの前提ですから。

 使いにくい場合どうするかってのは、経験者なら知ってるし未経験者じゃここで言ってもしゃーないので割愛。

 事前に一人頭の割り振りの分量に分けておけばOK!


大体の道具

 学校の授業で行う場合は、粘土細工用の道具は各自図工の時間用に持っていますので最悪おじさん手ぶらでも何とかなります。(ex筆洗いバケツ、作業板、成型ヘラ、雑巾の類など)


 専用に用意するといいもの

 ・新聞紙等の敷き紙

 基本的に作業板の上に折りたたんだ新聞紙を置いてそのうえで作業させましょう。ぶっちゃけジャンプ一冊で足りますが「俺はワンピースのページがいい」とかケンカになったり、うっかりエロいページが回ってくると教育上あれかもしれないので新聞で。凄十とか週刊ポストの広告のない日のにしよう。


 ・300㎜角ぐらいの布(各自二枚ずつぐらい

 平た~くしたものはこの上で作るとハンドリングに都合がいいのはご存じのとおり。そのほかにも汚れを拭いたり道具の水気を切ったり大量に出血したときに止血したりできます。便利。


 ・スポンジ(人数分+α。安物一丁を二つ切りしたのでOK

 まあ必需品ですよね。使い方は以下略で


 ・レジ袋のちっこいの(人数分

 今いじくってない土はこの中に入れときましょう。


 ・洗面器や小さいバケツ(グループに1個ずつぐらい?

 土のきれっぱしやカスを入れさせましょう。もったいねえし汚れになると厄介だしね。


 と、言ったあたりでプロのチョイスが効いてきます。経験者の型は自分の判断でいろいろ考えてみてください。


 自分(講師おじさん)が自分の分持ってればいいもの


 ・お手本用の何か(写真のはもうできちゃってますが、生でOK!

  やっぱり自分で頭の中に完成形を持ってたり、こういうのを作るぞ!という意識の高い子は少数派。まあ俺だってそうだったわな。おじさんこんなの試しに作ってみましたーっつって出しておけば、とりあえずの目標になるのでとっかかりにちょうどいいです。

 ほかに、ある程度以上きちんと作った器や人形的なものを並べとけばアイデアを提示しつつマウントをとれます(ここけっこう大事)、絶対やっておくべき!

 土器や須恵器の乗ってる図鑑や博物館目録?もいいけど絶対汚されそうだし、必要なら学校にあるだろうしでやめときました(笑。大きめに印刷して黒板に貼っておくのはいいアイデア、と今ごろ思いつきました。


 ・自分がいつも使ってるアイテム一式

 切り糸は絶対あったほうがいい。今回いなかったけど板に引っ付けちゃった子がいたら切りっ放してあげましょう。いつも通り首に掛けておきましょう。

 ゴムベラは、したり顔で講釈を垂れつつウロツクときに、机になびった粘土を無意識を装いつつハツって回ると手練れ感アップ。傷を均してあげたりね。

  カンナと適当なコテは、どうせ使いやしないんだけどハッタリが効きます。使おうと思えばいくらでも使えるし。黙ってシレっと置いておくのがミソ。

 ハバリとか、みんな大好きベルリンファイル(縫針を仕込んだシャーペン)はめちゃカッコイイ、メチャ危険な香り、メチャ秘密兵器感たっぷりで、男子の注目度爆上がりでした。修正してあげるときとかにチャチャっと使い勝手もいいしね。うかれた子供たちに触らせては絶対いけません。ヤキモノジェダイしか手にできない道具だ、とか何とか言うとエージェント感アップ(なんのこっちゃ

 ・型に使えるプラや紙のお碗(できれば複数

 どうしてもうまくいかない子のためのセーフティバルブとして用意しときましょう。土を厚手の丸板にして布ごと見込みに当て込めばきれいに器を作れます。空手では上手く作れなかった子がK.U.F.U.と技術で器用さやセンス、才能を克服できます。

 これは「粘土遊び大会」じゃあなくて「土器(埴輪等も可)づくり体験授業」なので、作れないんじゃあハナシのほか。工業技術が発展する意味みたいなものを感じられるはず。しかもオジサンすごいねってなるし。

 本当はゴム風船を膨らませてタタラを乗せて椀形にした後風船割れば絶対楽しいぞ!って考えてたんだけど、このご時世、息吹き込んでバンバンやるのはまずいよなあとカミサンに言われてボツにしました。確かになあ、チェッ

 あとは模様付けで勝負だ!模様や文字は文房具でいくらでも付けられます。その為の道具なんだから


  目的を見失い気味でしたが、こんなもんで何とかなりますよ。

 道具はあくまでもトラブルシューターとして活用する範囲がいいのかな。


 実作業

 基本的に好きにやらせればOKではあります。ポイントを押さえて口は出し過ぎないように。

 もし俺がこどもだったら口うるせーのが来たら教室から出ていきます(常習犯は語る)


・土に対して

 野焼き向け土の組織はザライ、可塑性粘土微粒子の割合が低い土です。目的上どうしてもそうなるわな。と、言うわけで、

 1・液性限界(WL%値が低い

 つまり、調合が粗い=比表面積が小さいので比較して少なめの含水量でもヘッタヘタのベッチョベチョのウッルウルになりやすいです。水はなるたけ使わせないようにしましょう。

 なんでわざわざ理屈っぽい言葉を使ったかというと、たまにはトーゲイ教室の先生じゃああんまり知らなそうな用語を言いたかっただけです(笑。他に塑性限界Wp、収縮限界Wsとがあって三つ総称してコンシステンシー限界といいます。


 2・肉厚目に作れる、というかつくるべき

 薄く作って強度(生も乾燥も焼成後も)が出るか出ないかは多少別の話ですが、粗い土ってのは轆轤でスイスイ薄く作って平気な土よりは厚く作るべき土です。実際今回使った土は乾燥強度高くはないです、どうしてもサクイ。

 よく言われるような「薄けりゃえらい!」というのは手わざの話であって(ほかに原材料費が下げられる、焼成費用も、ここ邪推)、焼造物が薄くて偉いかどうかは土の物性に依存します。(ケチの薄皿下手の厚皿ちょうどいいのが俺の皿、という言葉があるようです。もちろんウソ)


 分厚く作って焚火にぶち込んでも壊れにくい土ってのはそういう土です。また、同じように焼けてれば薄いほうが厚いものより強い、ということは絶対にありません。

 大体200~300g一玉で一個器を作る感じがちょうどいいかなと思いますが、肉厚は5㎜(最低線)~。10㎜前後ぐらいでもいいんじゃないでしょうか。

 作るも焼くも小ぶりなほうがアクシデントに強いです。どうせ焼成収縮はないし、乾燥収縮も調合が粗いので小さいです。

 薄いと作っててヘタるし、乾燥強度も低いのでハンドリング(ガキンチョのですよ!)が厄介。当然火の通りは薄いほうがいいけれどちょいとぶつけて割ってたんじゃあね。

 子供たち各々の作品を見回るとき、形状を見極めてちょうどいい分厚さ配分を意識してアドバイスしましょう。

 

 3・砂ッケの土は乾燥は早めです

 小さいパーツがあったり、とんがってる部分、口元等はすぐ乾いちゃうので作る段取りを先に重々注意しときましょう。見回りながらチェックとアドバイスを!


 濡らし過ぎないこと、肉厚の目安、小さいパーツや尖る部分は後から作る、といったあたりを。


 ・成形に対して

 特にこの部分は教室のセンセイや経験者(というかヤキモノ常習者)の方は自分流で結構です。以下は、学校のセンセイや保護者等向けかな。

 大体一通り道具や指の使い方の肝を抑えたお手本を見せます。上手かどうかはそうまで重要じゃないかも?


 1・一か所をぎゅっと押さないで、ゆっくり少しづつ満遍なく整えよう。

 せっかちな子やガサツキッズ(=いまだに俺)にありがちなのは、いきなり指先でグバッと押しこんで一気に薄くしちゃうパターン。


 基本的には、底の部分から円周に沿って壁を回りながら登っていって口元へ、というのを繰り返すのがセオリーかと思います。底をある程度(ここ重要「ある程度」ね)決めてから、何週回してもいいので心置きなく壁を少しづーつ薄くしながら形を決めていきます。

 とにかく、少しづつ、をキープできれば事件は起きにくいはず。 

 全体的に少々薄かろうが厚かろうが、ボコボコ肉厚差があるよりは器として綺麗で扱いやすいです。まあ売りもんじゃあるまいし細かいことは気にすんな(開き直った!


 2・口元は薄くしないで、むしろちょっと厚いほうがいいよ、ぐらいにさせましょう。出来れば丸目に作れればもっといいぞ!と。理由はさっき土のところで言った。

 

 3・平らに均したり、傷を消したり、大きく修正したりは、ある程度以上乾いてからのが吉

 この辺大概のキッズは無頓着なので放っておけばいいんですが、中に美意識の高い子や美術・工芸系に秀でた子がいますので、先に情報を仕入れておくか見回りながら手つきやフォースを感じ取って確認しておきましょう。そういう子は綺麗に綺麗に作ろうとして失敗しやすいので。

 形を作りながらやるのは我々(経験者)と違ってかなり難易度高いです。希望を聞いてタイミングと作戦を一緒に見計らいましょう。 

 ある程度乾いて(ドライヤーで少し乾かしてもいい)形もあんま歪まなくなってからいじくらせたほうがいいです。その間別のもん作らせとけ。

 

 機会が許せば、乾燥させた後刃物やペーパーでガリガリ整えてやってもいいわけで、貴重なものづくりキッズの作品は大事に!えこひいきと思われないように配慮は必要そうだ(笑


4・こここうするともっと良くなるぞ‼的な細かいアドバイスはするだけはする。

 例えば、底と壁の立ち上がりのエッジは薄く広がったりしないように丸めたりしとけ、とかいった形状のセオリー的なものは言ってもしゃーないかもしれないけど、

 ひび割れにはカスを濡らして指で優しく刷り込むと(少なくともとりあえずは)消えるぞ、とか、こう詰めて抑え込んでやると広がっちゃったところが治るぞ、みたいな技術指導に当たるものはちょっと手を貸してやるだけでOK。

 こういうのは本人じゃなくても周りの子が聞いて実践し始めます。なんかうれしい。


5・ぶっちゃけあとは自由制作で、自分でちったあしっかりしたものを作って見せる。出来ればいろんな形のものを。

 結構子供たちはマネしてくれます。こういうのは意外とみんな自分なりにうまく出来るもんです。今回はカミサンが真ん中でちっこい埴輪を作ってたんですが、気が散りボウズ共相当数がマネしてハニ丸君作ってそれなりにできてました。


6・うまく作れなかった子には、早く作って暇持て余してるような子を手伝わせて、プラ容器を使ったタタラ型押し作戦で最低一つきっちり作らせます。

 

 こんな感じかな?

 先生は、粘土で作って焼いて遊べれば、コロナ禍でイベント丸っと無くなった中、思い出になっていいでしょう。ぐらいだったかもしれんけど、俺は全員にそれなりにしみじみした土器作らせるつもりでした。何とか出来たよ。完全に買った土のおかげだけどね。

 

 生徒タイプ別、見回りのコツ?

 1・アートキッズやヤル気のある子のほうがいじくり過ぎてヘタらせやすいのでこまめにチェック!!

 頑張ってもっとうまく作ろうとか、作りたいものがかなり明確だったり、技術的な方法を見つけちゃったりして、かといって経験ないからさすがに水分量や成形体の構造的耐力までは気が付かず、器用さや熱意が裏目に出ます。さっきまでカッコよかったのに一周回ってきたらヘタってたりしてな~、一声かけておけばよかった、申し訳ない!

  まじめな子はとにかくいじくり過ぎちゃうね。ずーっと手にのっけて包んでたり。


 2・ガサツ系フィジカルキッズにはもうちょっとやってみろ!って言ってれば結構平気

 薄くし過ぎるのだけはだめだぞ!と言い含めたせいか、肉厚ガタガタで分厚いまま出来た~となるので厚いところを薄いところに合わせてみろ!とか言ってればまあ事故らない模様。

 大体雑極まりなくとも手が早いので、しくじっても土さえ補給してやれば次々やります。出来はともかくいっちゃん楽。あー俺を見てるようだ(笑

 その子との関係性や性格次第ですが、出来たーなんつって調子こいてるはずなので「それがお前の全力か!」とか鬼コーチみたいなセリフ言うと笑いにも落ちますし、意外にやります。な、ハルト。


 ただしガサツ系キッズが水使いだすとビッショビショにしそうなんでそこもチェック。だからさっき言ったじゃねえか!!


 3・なぜか、やたら土が早く乾く子ってのがいるようです。なんだろう、いじくり過ぎちゃうのか手があったかいのかね?

 彼もまじめな子で、目標があいまいで気持ちが固まらないまま作り始めるのが嫌なのか、玉パンパンしてるうちにカントリーマアムみたいになってました。とりあえず考えるときは触らなくていいぞと。

 

 とにかく、結局土器を作れない子を出さないこと、うまく出来てるのにこっちの口足らずで台無しにしちゃうことが無いようにってのを考えてみました。 


  とりあえず成形編はこんな感じです。


 あとは、焼成編ですが、それは後日。

 番外として土器から始まったヤキモノの技術が今現在どういう広がりとなっているか、という社会と理科を足したような話を20分ぐらいしましたので、その辺も記事にします。先生方にはそっちの受けもよかったし。


 


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