では、土器づくり体験授業アンチョコ。焼成編に移ります。
基本的には「安全に焚火しろよ!」という一点に尽きるといっては尽きるのですが、物を焼く、という点も重要。当たり前だけど。
前回同様、「俺たちの先生」ことイノウエセイジさんから多大なアドバイスをいただいて参考にしております。ありがとうございます。
今回は20人を5人ずつ4か所に分けて焚火をしました。その前提でお願いします。
事前準備?
・燃料が十分にあるかどうか
焼き足りなきゃ焼き足りないで楽しいイベントにはなるでしょうが、あり過ぎて困ることはありません。「裸土器の野焼き」に関して言えば過焼成ということありませんので。調達の方法は事情にお任せします。
・日付と時間の決定。予備日を必ず押さえておくこと!
一人で勝手に始めるならいざ知らず、多人数で集まる以上日程の事前決定は必須。しかし雨が降ったり風が吹いたりといった天候に関しては当日になるまで不明。必ずニ~三日分の予備日の設定をしておきましょう。
俺も風を吹かせたり雨を降らせたりは少しできるんですけど、止ませるってのははるかに難しいんですよね(不要な文章)。
作業時間は午前半日あればたっぷりです。9時スタートの11:30~12:00頃終了。お昼を食べて五時間目に取り上げ。って感じで十分でした。
・当日の服装の伝達
消し炭汚れは当然ですし、火の粉が飛んだり、においが付いたりと服装のチョイスは重要です。あと、ワンパク共がファイヤーソードとか言って戦いだすので(笑
汚れてもいい服装でお願いします、だけでは必ずしも十分ではないかもです。フリースなどの化繊のウェア、特にスポーティなシャカシャカ系ウインドブレーカ上下なんてのは簡単に穴開いちゃいますし、万一火傷になるような事故の際はより酷いことになるのでできれば避けましょう。
だからと言って無理して木綿の作業着上下なんてのをそろえる必要はありませんが…。今回は六年生の3月、ということでどうせもう着なくなる体操服で参加した子が多かったなあ。下の子にお下がり使う予定の方は気を付けよう
・道具
作業手袋 人数分
軍手でOKですが、グループに一人ぐらいは革手とか純綿の軍手を用意すると耐熱要員として活躍できます。赤熱してるレベルなら見てわかりますが、低温度の土器は見てその熱さが推し量りにくいものです。熱伝導は悪素材なので冷めにくいものでもあります。
トング グループに一つ以上、多いほうがいい
ゴミ拾うスチールのやつ。長いと火から遠ざかれますが、ハンドリングは不安定になりがち。短いのはその逆。持ち手にゴムや樹脂のコーティングが取っ手がハマってるものは熔かさないように注意しましょう。
バケツと水 多いほうがいい
説明不要ですね。ほかの使い道としては、真っ赤なブツを引き出して急冷するのを見せらたり、一滴落として「これが水蒸気爆発」なんてこともできます理科要素。手も洗えるか。
陣立ての立案
先述したように今回は20人を5人ずつ4か所に分けました。
土器に熱量を与える効率を考えればデカい火にすればするほど個数もたくさん焼けるし、焼けムラも起こらずいいに越したことはないです。
とはいえ、あんまりデカくてもどうせ温度はサチっちゃいますのでチョイ燃し過ぎかな?ぐらいで終了時間まで持ちそうな程度にグループ分けするといいでしょう。まあそんな見当つかないけどね、なかなか。
また、焚火のサイズがでかいとあぶねーわあっついわで結局大人が全部やることになるし、子供の中になんもすることがない遊兵がたくさん出ます。イベントの性質上、全員が何かしらの作業にずっと関わっていられるようにグループ分けは必須かと。
場所、人数、作品の量、燃料の量、そして大事な保護者の人数(目の行き届き加減)を考慮しましょう。
いざ焼成。
私はアウトドア派では全くなく、焚火にうるさいわけでもないので火付けの段取りやマナーやしきたりなんかはお任せします。
作品にどう熱量を与えるかっていう焼成管理についてだけ説明しますよ。
穴掘るかほらないか問題
単に「焼成の効率、しやすさ」のようなものを考えれば、深さ30センチほどの穴を地べた掘り下げて炉床(ベッド)を作るほうがいいんですが、どうするかね?という件。
今回は、掘らない、というチョイスをしました。理由は以下
1・掘るのも現状復帰させるのもめんどくさい。校庭のトラック上だしね。
2・出し入れが楽
3・作品の見掛け上の色味がどんどん変わるのが観察しやすいサイズにしたかった。
4・そんな立派なでっかい代物を焼くわけじゃないのでそれで十分。
陶芸趣味のいい大人たちがバッチシ作った作品をバッチシ焼き上げたい場合はでかい炉床作ったほうがいいのでそこはお好みで。
と、言うわけでとっとと薪を積んで火をつけましょう。
基本、焚火のサイズは人数作品の総体積に合わせてご随意に。というのも不親切ですな。
あとから都合に合わせて大きくも小さくもできるので、とりあえず径700φぐらいで積み上げて始めていいんじゃないでしょうか?時間分燃料が足りる(足りそうな)範囲でなるたけ大きめがいいのかな?という感じ。火そのものは何しろ強いほうがいいです。
作品と炎との距離で焼成は管理します。
まだ生もいいところ、常温状態から炎の中に突っ込んでもいいよ!というまでの間を「あぶり」といいます。具体的には、カラカラに乾燥してるように見えて、まだ組織内に残留してるわずかな水分と化学的に組成と結合してる(であってるよね?)水分がほぼほぼ無くなったんじゃねえの?という状態になるまでです。
水分が蒸発、分解するとき物は割れやすいです。事故を防ぐには何よりもゆっくり昇温させること。
あぶり始めは火から遠ざけて作品を並べます。フレイム(炎のメラメラ)には触れさせないように。具体的な距離は火の大きさによりますが、とりあえず30センチも離してぐるっと周囲に並べてみましょう。ちょっとした後、作品の炎側に触れてみてホカホカしてればOK。全然だったらもう少し距離を詰めましょう。
グルグル作品自体も回しながら少しづつ(例えば10分おきに5センチずつとか?数字は適当)炎に近づけていきます。
この時、テストピース(aka生贄)をいくつか用意して、皆の作品よりぐっと近い位置に並べて置いておきます。テストピースに何か起こらない限りは作品も平気、そこまで近づけられるというわけです。テストピースは、厚めでやや平べったいものだとセンシティブなので指標として役立ちます(握りつけた太いウンコかりんとうみたいなのを立てただけでも十分です)。
繰り返します「あぶり工程」はゆっくりと、3時間のうち1時間ぐらいかけてもいいと思います。全然あぶれてないんじゃだめですが、慎重で悪いことはないです。
ここで、祈ります(必ずやること)
少しづつ近づけていって、あぶり具合を見ます。もう火にぶち込んでも平気なのかどうなのか。これは、温度の数字よりは作品の表面の色味で判断するのが実際的です。
何とも生気のない(個人の主観ですが)白っぽい感じになります。全体がそうなるように。
そうなったころには多分炎側に黒くすすけたところも部分的に出てきてたりするんじゃないかな。数分前にはテストピースがぶち込んであるはず。それは弾け割れたりしたでしょうか?もし平気なら作品もいけるはず。少なくとも小一時間経ってると思います
よーしもう突っ込んじゃえ!
あとはもう特に難しいこと考えずに時間までガシガシ燃やしましょう。
もう注意点は、薪を乗せるときにボンボンぶん投げるガサツなキッズが絶対いるのでそれだけ。火さえ十分燃えてれば位置や向きをあれこれいじくりまわすこともないです。壊すもと。
変に熾きや炭の中に埋めるとかえって生焼けになったり青ビョウタンな焼き上がりになったりします。赤熱してるとこが見えなくなっちゃうしね。
ぶっちゃけこれだけ知ってれば十分です。
あとは火傷しないように時間まで焼成したらそのまま放置。時間をおいてのち、作品を取り出したら(うっかり触らないこと!あっついよ)火の始末をしちゃいましょう。
掃除がすんだら作品チェック。水洗いするなり、そのままでもいいし、無事終了です。
では、ここからがつくセラらしくお得な裏技コーナー
1・アルミホイルの包み焼(焼き芋方式)
作品をアルミホイルでくるんで焼成します。
蒸気乾燥と同じく、あぶりの最中内部で蒸気圧が上がるので割れる率が下がります(理由はたぶん。経験的に正しいけど裏付けはナシ)
ただ包んだだけだと焼成後の色味がアダムスファミリーみたいになりがちなので、炭素源として?そのまま、あるいは湿らせた(ビショビショはいけない。絞って)新聞紙やおがくずなどの可燃物と一緒にくるんでもヨシです。
難点は、焼成中の作品が観察できなくなること
2・塩水、あるいは重曹水溶液等を作品に吹きかけてから焼成する。
少々甘めの焼きでも若干焼結反応が促進され色味も健康的(これまた主観)になります。
できれば焼成の数日前にたっぷり吹きかけて乾燥させると作品表面に細かい結晶が浮くので(うっすらとだけど干し柿みたいになる)よりベターです。
まあドーピングっつうか日サロみたいなもんだね。
他にも例えば、にがり(塩化マグネシウム)等の塩化物の可溶性塩でも効果が期待できそう。
炭酸ソーダ系(重曹やセスキも)は解膠剤としても使用するようなものなので、あんまりどっぷり湿らせたりすると崩壊しちゃうかも気を付けてください。含侵(どぶづけ)させるのは危険そうなので不可(やったことはないです)
スプレー掛けが簡単ですが、どうせなら濃くしたいので飽和水溶液を使うのをお勧めしときます。
効果がハッキリ大きいのは塩水ですが、一応塩素系ガスが出る等危険要素がないわけじゃないので、先生や保護者とよく相談してからのがいいかもね。
まあこんな感じです。
この記事も前回同様、今後気になる部分等あれば書きましや訂正しながらアーカイブとして価値を高く出来ればと思ってます。
次は、成型当日の作業前にどんな話をして授業感を出したかって話でこのシリーズは終了の予定。
土器制作はもしかすると細々とではあってもライフワーク化しそうなほど気になってます。
0 件のコメント:
コメントを投稿