2020年3月27日金曜日

石粉粘土を焼成しちゃいけない理由はない・・・はず その1

この写真は無関係です・・・


 石粉粘土ってご存知ですか?
 イシコなのかセキフンなのか、そもそも読み方からしてよくわかってないですが、とにかく、これを使って見事なオブジェやらアクセサリーやらフィギュアやら作ってる方がたくさんいらっしゃいます。
 それが100円ショップで売ってたんで手に入れてみました。

もう使っちゃった後でキッタナイけど

「粘土」って部分ももちろんですが、そんなのはアブラだろうがジュシだろうがコムギコだろうが別になんとも思わないけども、何より『石粉』ですよ。このワードで俺のスパイダーセンス(別名ピータームズムズ)がビンビンに!!

 石の粉と聞いて何とかしてやろうと思わないようじゃあヤキモノ人としてどうなのよ?普段からそこらの石コロでもいいから砕いて練って、焼いたり溶かしたりしたくてたまんない病を罹患してるはず。 それがもう始めっから「粉」ですよ。成形したり焼いたりしないでどうすんの?
 それが良く考えたら超割高だけど、100円で、仮にどう失敗しようとそう苦しくない価格で、好きな形に作れるようになってんだから。


 とっとと断わっておきますが、そのままで焼成せずに済むようにできてるものをわざわざ本焼きして「陶芸気分(笑)」を100円ショップ素材で味わっちゃおうというバカを絵に描いて額縁にあつらえたような企画ですよ。期待しないでね。
 こんなこと書き始めた以上はお分かりでしょうが、焼成したらカチカチに焼き固まった!ってのは保証しますので、ご興味ある方はどうぞ。

 
 初めに理屈っぽい話から始めます。うちはつくばセラミックワークスですので、なんかその辺の凡百の陶芸家どもでは発信できないような切り口が必要ですからね(とはいえおふざけ企画なのでエビデンスは取らないよ)

 で、まず、これはどういうもんなんだ?ってのから始めます。 

 パッケージ裏面には材質欄があり、そこには
「石粉・水・パルプ・合成糊剤・防腐剤」とあります。
 石粉はなんつう石の研磨屑なのかわかりませんが、とにかくセラミックスです。
 パルプ、これは紙の粉(というか繊維)でしょう。いじくった感じは紙粘土っぽいです。
 合成糊剤、単純なごく当たり前のもの、例えばPVAならPVA(アラビア糊とかの成分ね)って書くんじゃないかと思いますが、おそらくこれは高分子の水溶性樹脂で、可塑剤、糊剤、湿潤材、増粘剤、etcな性質を発揮するものでしょう。

 つまり、石の粉末と紙繊維を骨材に、マトリックスが遅乾性自硬化樹脂でつなぎ、湿潤状態で捏ねれば成形(細工)しやすく、乾けばカッチカチに固まって必要強度を持つ(しかしまだ細工しやすいよ)、モデリング等々に適したように作られた不定形材料、みんな知ってる言葉にしないとわかってもらいにくいので、油粘土とか樹脂粘土と同じく土粘土(あるのかそんな言葉?)じゃないけど、手づかみ式造形用不定形材料を指すいわゆる「ネンド」である。
 といって、ほぼほぼ差支えないと思います(きっとそうだよね?、差支えるよ!って方は教えてくださ~い)

 あーわれながら理屈っぽい。

 紙繊維がなんで必要かって言うと、それがあることで強度アップできるからです。この場合で言うと、パックリ踏ん張りなく割れ切れたりするのを防ぎやすくなります。石膏像に麻ほぐしたのを入れるのと一緒、土壁に藁混ぜるのと一緒、炉材にムライトの針状結晶を生成させるのと一緒です。紙繊維なんで多少ですが。


 しかも多孔体にできます、成形~乾燥後の絵の具のノリがいいんじゃないかな?重量を大幅に軽くすることにも一役以上買ってます。
 もちろん本来の用途ではありませんが、焼成すればパルプ自体がイグニッションロスするので、ある程度以上管理された気孔率を得ることもできます。パルプフィラーを混ぜ込んで気孔率を確保した多孔質チューブ焼成体をかつて製作したことがあります。


 で、さらに、おそらくですが、石粉+バインダーのみでは密過ぎでカチカチすぎて、硬化させた後の精密な仕上げ細工がしにくくなっちゃうのも防げるんじゃないかな?適度な硬さを保つというか・・・

 長くなりましたが、それがこの「石粉粘土」と思っておきましょう。お願いします。


 と、なると、石は焼成すれば残るはずですが(温度とかどう残るかはまだ不明)、その他の水、パルプ、バインダー、防腐剤は100%じゃないだろけど焼け飛びます。つまり、成形材を適切な温度で焼成すれば、石粉と石粉が強度を持って焼結できないような状態にならない限り成形体が焼造物となって残るはず。
 どうせ100円だ~紙粘土に毛が生えた程度でいいだろう!なんて理由で実はあんまり石粉入ってない!とか、合成糊剤の焼け飛び方がダークフェニックス!とかだと、サノスに指パッチンされた人類の約半数みたいにボロボロ崩れるやもしれませんが…

 問題の何の粉なんだよって点ですが、とにかく白い石材を切断や研削研磨した際の粉末切子なんじゃないでしょうか?大理石とか石英とか大谷石とか、ひとっつも素材が不明なのがあれですけどね。まずは素焼きの温度辺りから試してみればいいじゃない!ぐらいの気楽な感じで。炉材にダメージを与えないように座布団(土で作った台の上に載せる)は絶対ですよ。

 もっといろいろ面倒な話をしようと思えばできるんですが、読者のみならず私も飽きてきたんで、そろそろ作り始めますよ!
 改めて確認しますが、このダイソーの石粉粘土は、SK7~8で焼成できます!!


 まずテキトーにこんなものを作ってみました。
 ただのおせんべいですが、1000℃で焼成しました。
  


 形は保ってますが、非常にもろいです。
 カッターでも爪でもシャリシャリ削れます。しかし形状は保ってますよ。
 色は真っ白ではなく、よくある白土の素焼き後の色、黄色っツウか赤っツウかの薄い色です。

 これを1250℃で焼成してみます。といっても一番上の棚板の上、今回の場合、おそらく1200℃行くか行かないかぐらいじゃないかな?いちいちコーンなんかの熱量計は付けません(遊びなので)
 
 ほかにも多少は面白そうなものを作って焼いてみたいですよね?
 その際、この粘土の特性を考えてみます。
 パルプフィラーが充填されてることによる超多孔質、時間はむっちゃ遅いですけど乾燥後そのまま割れも歪みも崩れもせずにきっちり自硬化する性質を考えると、肉厚差に対して非常に優れていると考えられます。

 簡単に言えば無垢の人形みたいなもんでも、トゲトゲだらけのものでも乾燥も焼成も通常の「土粘土(ヤキモノ用ね)」に比べて楽勝で焼けそう。なイメージ。実際耐火物でも超多孔体だったり、ファイバー混入物なら分厚いの作りやすいんですよ。そうじゃなかったら耐火発泡煉瓦の値段もっと高いと思います。

 という中、結局オジサンはこんなものを作ってみました。

黒い色絵の具?化粧土?でちょっと塗ってみました。

 化粧土とか下絵の具、というよりは正確に言うとウォッシュなんですが、ウォッシュってのが対応する日本語がないんだよなあ。その辺はまた気が向いた時に記事にしますね。
 配合は、マンガンオキサイド 5
     庭の黄土の水簸物  4
     適当な透明釉    1以下
 で、それを雑味水で溶いたものです。たしか・・・


じゃあ本焼きしますよ!

けっこう縮んだなオイ!
というか、全然迫力ねえな
 
  これ(ストームトルーパー 厚さ約25㎜)無垢ですよ、しかも作った日の晩にもう焼いてます
  つまり、樹脂の乾燥が全然足りないのに焼いちゃってもある程度平気!

 多孔性のものでよくありがちなんですが、化粧土(正確にはウォッシュ)は吸われちゃってますね。光沢感は一切ありません。
 ちゃんとしたガラス質を形成する釉薬(マットでもいい)じゃないと目止めの役には立ちませんね。

 しかしきっちり焼成できてます!是非話のついでにやってみてください。できれば、いわゆる陶芸ではセオリー無視の建て付けのもので試してみてください!肉厚は均一でないと割れちゃいます!焼けません!!ってのも相当なところまで無視できるかもよ!



 なんで釉薬使わなかったんだって言うと、第二弾第三弾とだらだら続けられるようにしたかったので、これをクリフハンガー方式といいます(笑


 次はもう少しちゃんと釉薬まで考えて手順を踏んで作ってみますね。


 そして、付け足しでは100斤で買ってきたセスキ炭酸ソーダの飽和水溶液を釉薬の代わりに使うネタをご紹介。


上の小壷の口元テカってますよね?土は赤津貫入土
下のは赤土に化粧土、火色?が出てます。

これは黒御影土の小鉢に


キチンと素地表面にガラス質を形成します!
これいじり甲斐がありそうなんですよ!




 
 
  

2 件のコメント:

  1. 私も焼いたらどうなるか興味がありました。家庭用のオーブンでは焼けませんか?

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    1. 気づくの遅れて放置しちゃってました。すみません!

      家庭用のオーブンでは焼けません、というか、少なくとも「焼成」にはなりません。温度帯的に樹脂分(おそらく)が燃えるだけじゃないかな~と思います。詳しくないのですが、「オーブン陶土」みたいなやつは、熱硬化性樹脂で固めてるんじゃないかなーと思います。

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