去年後半からはサッパリ連絡もよこさなかったくせに、ここんところの教室レスでヤキモノウェーブがどばっと押し寄せてきたんですかね?
「おい、鋳込みのシリーズの続きやれよ!おせえよ!何年かかってんだ!」とのこと。
先日の泥漿調整の記事はその流れで書きました。
型はとりあえずある、泥漿の調整のやり方も分かった、というところで、排泥鋳込み用素地の出発点としやすいおすすめ基礎基礎調合を紹介します。(基礎基礎調合とは、こっから自分なりに調整して使いやすくしていってみようぜ!ぐらいの意味)
もちろん、ただ調合例を羅列したんじゃあうちのHPの意味がねえ。一応意味っぽいものをくっつけていきますよ。
まず、一般的な、いわゆる陶芸のヤキモノ素地の組成についてですが、アルミナとシリカでできています(普通シリカがリッチ)。
そこにアルカリ、あるいはアルカリ土類金属の酸化物が適量混ざり込んでいます。で、この組成はまあそこら辺にある土だの砂だのはあらかたこうなっていて、人類の技術的な発展との帳尻が実に旨い事ピッタシきた結果、現在ほとんどを占めると思われる1200~1300℃ぐらいじゃね?というところに世界のあっちでもこっちでも収斂したと考えていいでしょう(多分)
この、大体勝手に混ざり込んでるナトリウムカリウムの酸化物(いかKNO分)が適量混ざり込んでるおかげでその辺の温度でちょうどよく焼成できるというわけ。
我々ファインの場合は単独では非常に焼結させにくい場合に(理由はそれだけじゃないけど主に)、何か母材の焼結を促進させる無機材料を混入させるんですが、これを焼結助剤と呼んでいます。
一般陶磁器に置いては、メイン材料である長石とか陶石とか粘土鉱物にこれが端から都合よい程度混じってる、つまり焼結助剤内蔵!便利(というか偶然にしても大変都合よい。)
シャンプーにリンスが混じってるのも大変便利ですが、それはシャンプー屋が気を利かせてくれたもの。掘ったその土にもう勝手に入ってるってのは地球が気を利かせてくれてるわけです(つまり、地球というのはヤキモノ屋のためにあるのです)
掘った土が使える使えないってのは、有機物分を除いた鉱物部分に関して言えば、おおかたは組成の違い自体ではなくて、粒度や粒形状を主な原因とした、捏ねたり焼いたりした時に機械的にどうなるかっつう性質によると言えるでしょう。違うかな?
アルミナ、シリカ、その他チョロチョロという組成は、長石も粘土鉱物(カオリンも含むよ)も一緒です。まあ言っちゃえば長石もカオリンも中身はいくらも変わりません。その他チョロチョロの部分、特に可溶性塩になるアルカリ酸化物の量の多寡ぐらいなもんです。買ったばっかりのコーラと気の抜けたコーラぐらいには違いますけど。
この辺の認識を叩きこんだら鋳込み泥漿用の配合例を考えていきましょう。出来合いの鋳込み泥漿売ってるんでそれがイイに決まってるんですが、鋳込みってのは、成形作業自体には個性や手癖が激しく出にくい成形方法です。だから舐められてるし。だったら、アコガレ!の俺の素地、にチャレンジしてみませんか?ロクロ用の坏土一から混練するよりは相当楽。釉薬自分で混ぜてんだったら労力変わらないです。
型の設計、釉薬のチョイス、焼成、で一緒のものにはそりゃならんといっても、ヤキモノの本質は素地の組織です。そこに俺作用が施されるってのは楽しくね?
窯自作する人より土掘ってくる人(そこまでせずともブレンドする人)の方が多いってのはつまりそういうことかと。
俺のこの記事読んでる以上あなたも、《全部出来合いで粘土細工さえしてりゃあ「陶芸やってますです(はあと)」では済ますつもりなんかさらさらねえ餓えた狼》ってことだと考えて極論承知で言ってますが(笑
紹介した配合のテストピース
どれがどれかは自分で試してみて!!
排泥鋳込み用基礎配合を、ヤキモノ材料屋で買えるもののうちからミニマムな順で考えてみました。せっかく鋳込みなんだから磁器で行くぜ磁器!
さすがにミニマムっつっても長石だけ、とか、硅石だけってんじゃあ、「せっかく砕いてくれたものをもう一回石に戻してどうすんだバカ!」と言われちゃいそうですが、実はヤキモノっツウのはそういうことですよ。
おすすめ基礎基礎配合①
長石:カオリンを1:1の同量比
〇〇粘土じゃなくて○○カオリンにしてください。この場合。
おすすめ基礎基礎配合②
長石:硅石:カオリンを1:1:2
硅石を入れることによってはっきりシリカが骨材として立ちます。
おすすめ基礎基礎配合③
長石:硅石:カオリン:蛙目粘土を1:1:1:1の等量比
粘土鉱物のうち半分を高可塑性材料に置き換えます。(蛙目でなくて木節等でもOK!)
で、これだけじゃお前本当に考えたのかよ!って言われそうなので、しょうがなくいろいろ試した結果の・・・
つくセラおすすめ配合としての④
長石 25%
硅石 15%
カオリン 50%
ガイロメ 10%
で、どうでしょう?
カオリンをちょっと減らして(3~5%)、その分長石と硅石やや増やし目にしてもいいっすね。大差ないっす。
④は、自分で考えたり試したりするのがやってられない人向けですが、だったら出来合いのスラリー買えよ!そっちのがイイから。と言っておきます。
では、①~③について、少量でイイから泥漿を作って焼成までやってみてください。
その際、以下を気にしてみて、好みを探っていってください。
A:泥漿のチクソトロピー性の大小。
B:着肉時間(ここはびっくりするほど違うはずので楽しみにしてみてください)
C:離型できる(もしくはしちゃう)までの時間
D:いじくってもヨレなくなるまでの時間、またヨレっぷり
E:完全乾燥してからの水分に対する性質
F:生体加工(シノギ等の切削、取っ手付けたりのアッセンブル)のしやすさ、タイミングの振れ幅
G:乾燥収縮はどういった具合か(収縮日だけじゃなくて、さっさと収縮するのかゆっくり収縮するのか、とか)
焼成の段階に入ってからは
H:普段とおなじ温度に素焼きした時の強度や吸水性
I:焼成での歪みやすさ
J:透光性
などなど
で、忘れちゃいけないのが余って保管しておいた泥漿の状態。
といったあたり。
この程度の単純配合だからこその違いを楽しめると思います。
それと、絶対やってほしいことが二点
一つは、離型するときに、完全に外れるまで待った場合と、多少早めにゴムハンでポンポコ叩いて外してみるという最低二種類。ヨレを起こさなくても焼成後のひずみに影響する場合があります。もし叩いた分がやたら歪んだようなら取扱いシビア君、と考えられます(焼き歪みのひどいのは本当に面倒)
もう一点は、決まった釉薬、できれば貫入が出やすい釉薬を同じ厚さでかけて、貫入の出具合の違いを確認してみましょう。理由も調整の仕方も見当つきませんが、違ってて不思議なんだよ~
一通りやったら、調合をちょっといじってみる。1割程度の増減や外掛け添加までならひどい事故にはなりません。ただし、中性(R2O3の式であらわされる)、酸性(RO2)の酸化物にしてください。塩基性(R2OやRO)のものはやめておきましょう。焼成温度がググッと変わっちゃう(多分下がる)ので・・・
簡単なのはカオリンや粘土鉱物の増減がわかりやすいかな。
俺はカオリン、あるいは硅石の一部あるいは全部をアルミナ(材料屋にあるうちで硅石ぐらいの粒度のもの)で置き換えてみるのをお勧めします。焼腰の強さや焼成温度帯、結構特徴が出てきますよ。
ジルコン(珪酸ジルコニウム)などは好みはともかく白さをアップできます。
たとえば庭や近所の土(ほんとに何でもいい)を掘ったくって水で洗って砂目を濾す。その細かい方を加えてみれば、ほんのちょっとで成形性に影響与えずに色もつくでしょうし、これぞまさにみんな大好きオリジナル(笑
ぜひ試してみてください。
粉末を泥漿にする作業やなんかは過去記事を参考にしてみてくれ~~。
素地試験におすすめの釉薬も一つ紹介しておきます。
長石 40%(いろんなのをブレンドしたりしてみて!)
石灰石 15%
カオリン20%
硅石 15%
タルク 10%
骨灰 2~3%
これはどんな土でも安定して食いついて、焼成温度帯も幅広く、釉掛け時の多少の凸凹はなめらかに落ち着く、しかも沈殿しにくい、光沢の透明釉です。
貫入しないようにタルク10パーもブッ混んだのに意に反して必ず貫入します。きれいな貫入が出ることが多いですよ。骨牌を2%ばかし入れた理由はなんか通っぽいからってだけですが・・・(多分安定性が上がってると思う)
この釉薬に酸化鉄(通称RIOちゃん)1.5%、あるいは酸化銅を1.5%加えると素地によって色味の出方の幅が広いので、新しい素地の試し打ちにぴったり。
そんな感じで四種類の素地のこの釉を掛けたものがこの辺
収縮の差や貫入の出方、色味が若干違うんですよって言いたかったのに写真じゃわかんねえな
結局いじくって気に入った高強度の素地と釉の組み合わせができました(4番にジルコニアの削りカスを外掛け5%混ぜたもの)
この色の組み合わせ、名前まだ決めてないんだよね~
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