2020年6月29日月曜日

ジルコニアタンマン管

 もう上半期が終わりってのもびっくりです。
 ジルコニアのタンマン管。
 


 ありがたいことに少しづつでも忙しくなってきました。
 

 今月中に是非面白ヤキモノ記事にできたらなあ、と思ってるのをちょっと忘備録的に記しておきます

 ・捨てるような土や排水から超微粉を分離して、磨き仕上げ、テラシジレッタ、焼結強度や吸水率改善などに使いましょう。みたいな記事
 ・電動ロクロの天板を外せばメチャ精度のいいトルクフルなシャフトが回るんだから何かに利用(アタッチメント式便利シッタのカギはココにありそう)しないと損なんじゃないか。ロクロを工作機械化する、みたいな記事
 ・吉田崇昭さんに盗まれたみんなの宇宙を取り戻す。みたいな記事(笑
 ・無料のネット碁会所のチャット機能を利用してヤキモノの質問に答えられる限り答えますから相手してください。みたいな記事(これはウソかな~
 などなど、とはいえ、予定は未定で雑草もめっちゃ生えるしいろいろ雑用も忙しい時期だしなあ~

 質問はいつでも受け付けていますよ!直接のコメント、メールが恥ずかしい方は、インスタやフェイスブックからDMしてくださいね~。溜まってる質問にも答えたいんですが、私程度のレベルではうっかり答えにくい難しいのばっかりなんで困ります。いや、俺がじゃなくて答えを読む人が(笑
 

 できれば「ヤキモノディストピアシリーズ」を始められるものなら始めたいなあ。


  
 

2020年6月25日木曜日

梶田絵具店の動画が面白いからもう知ってるふりするのはやめますみたいな話

 最近恐ろしいことに、梶田絵具店さんがユーチューブに動画をあげています。これがすげえ!マジ分かりやすい!こんな動画出されちゃったら俺なんかが知ったかぶって説明できるふりする必要ないわけです。
 最近増えてますが、ヤキモノユーチューバーの皆さんも良かったですね。そういった話はこっちに聞いて!って自信を持って振れますから。

 百聞は一見にしかず。皆さん是非ご覧になってください。

 一瞬リモートのど自慢かなんかがはじまったのかな?といった趣のご夫婦がイチャイチャしてるんで、ワタクシのように夫婦仲の冷え切った中年男には心の奥の傷を細いピンセットでひっかかれたような痛味もあって釉薬どころじゃねえんじゃねえかと気が気でなくなっちゃうんですが・・・内容は本当に素晴らしいです。

 HPのデータにはお世話になってるけどまだ買いものしたことなかったんで罪滅ぼしに宣伝しときます!
 慌ててポコポコ動画出すようなことしないでも、じっくりこのレベルの説明していただければ私を含めたタダでいろいろ知りたい皆さん大助かりです!!


 このうち三角座標の動画がわかりやすくてスゲエ!とパチーノが感激


 これに感化されたパチーノは、自分でやりたいらしい。というか今までやってなかったのかよ!初めに教えたじゃんか!

 何しろこの動画さえみちゃえばいいので、もう今回はふざけますよ

 三成分系
 基本的には
 長石、石灰石、カオリン
 長石、石灰石、硅石
 
動画で分かったように、化学の知識もへったくれもなく機械的に配列すればすぐやっちゃえますよ

  長石も大きく分けてソーダ長石かカリ長石(正長石)か(ほかにリシア長石等)
   それぞれいろいろな名前のもの「○○長石」がありますね

  石灰石を灰、タルク、ドロマイト、炭酸ストロンチウム等に 

  カオリンはもっと言えば粘土鉱物ですね。
   ○○(主に地名)カオリン、木節やガイロメといった粘土、黄土でもいいかもな
  硅石は純シリカから○○硅石(主に地名)といろいろあります。
  簡単に言っちゃえば手持ちのでOK!

といった三種類の原料を混ぜ合わせると割合によって釉薬(たりえるもの)になるわけです。
 で使いやすいイイ釉薬が作れる上手いバランスの所を見つけましょう。
 チョウ・ユンファとレスリー・チャンとティ・ロンをうまい具合に混ぜ合わせると「男たちの挽歌」が作れるのに似ているのでジョン・ウーになったつもりでこだわってみましょう

 
 ほかにも
 海と風と虹と
 ジョゼと虎と魚たち
 セックスと嘘とビデオテープ
 部屋とYシャツと私
 愛しさと切なさと心強さと
 俺とお前と大五郎
 
 あたりの三成分系がおすすめ(ウソ

 



 手っ取り早いのはなんつっても二成分
 2成分系
 長石と陶石
 長石とドロマイト
 等々思いつくまま混ぜちゃえばOK.

 長石と灰
 灰とダイヤモンド
 罪と罰
 天と地と
 王様と私
 高慢と偏見
 うしおととら
 以下無数
 アンとマン、はよく読むと一成分なので注意


 四成分系
 だとグッと幅が広がる上に釉薬の使いやすさがググッと高まりますが、割り付けが難しいのと試す数がハンパない。
 三成分までである程度狙いを絞ってからでもいいのかも?
 長石、石灰石、カオリン、硅石が基本です。 
 酒と泪と男と女
 ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ 
 ヤギと男と男と壁と、はよく読むと三成分系なので注意
などなどありますが、このネタはもういいよね

 おもいついちゃったんだよね~

 こういうのって直接商売にどうこうってんじゃなくても、マッドサイエンティストになったような気がして大変楽しいです。

2020年6月24日水曜日

鋳込み用素地のワイルドサイドをほっつき歩く

 ここ最近、友人のパチーノ(仮名:会う気にならないほど遠い地方都市住まい:同級生のオジサン:陶芸教室に通いだして二年:ここはすでに俺のシマ発言=狂人)が、このHPに対しての不満を連発してきてます。
 去年後半からはサッパリ連絡もよこさなかったくせに、ここんところの教室レスでヤキモノウェーブがどばっと押し寄せてきたんですかね?
「おい、鋳込みのシリーズの続きやれよ!おせえよ!何年かかってんだ!」とのこと。
 先日の泥漿調整の記事はその流れで書きました。

 型はとりあえずある、泥漿の調整のやり方も分かった、というところで、排泥鋳込み用素地の出発点としやすいおすすめ基礎基礎調合を紹介します。(基礎基礎調合とは、こっから自分なりに調整して使いやすくしていってみようぜ!ぐらいの意味)




 もちろん、ただ調合例を羅列したんじゃあうちのHPの意味がねえ。一応意味っぽいものをくっつけていきますよ。

 まず、一般的な、いわゆる陶芸のヤキモノ素地の組成についてですが、アルミナとシリカでできています(普通シリカがリッチ)。
 そこにアルカリ、あるいはアルカリ土類金属の酸化物が適量混ざり込んでいます。で、この組成はまあそこら辺にある土だの砂だのはあらかたこうなっていて、人類の技術的な発展との帳尻が実に旨い事ピッタシきた結果、現在ほとんどを占めると思われる1200~1300℃ぐらいじゃね?というところに世界のあっちでもこっちでも収斂したと考えていいでしょう(多分)

 この、大体勝手に混ざり込んでるナトリウムカリウムの酸化物(いかKNO分)が適量混ざり込んでるおかげでその辺の温度でちょうどよく焼成できるというわけ。

 我々ファインの場合は単独では非常に焼結させにくい場合に(理由はそれだけじゃないけど主に)、何か母材の焼結を促進させる無機材料を混入させるんですが、これを焼結助剤と呼んでいます。
 
 一般陶磁器に置いては、メイン材料である長石とか陶石とか粘土鉱物にこれが端から都合よい程度混じってる、つまり焼結助剤内蔵!便利(というか偶然にしても大変都合よい。) 
 シャンプーにリンスが混じってるのも大変便利ですが、それはシャンプー屋が気を利かせてくれたもの。掘ったその土にもう勝手に入ってるってのは地球が気を利かせてくれてるわけです(つまり、地球というのはヤキモノ屋のためにあるのです)
 掘った土が使える使えないってのは、有機物分を除いた鉱物部分に関して言えば、おおかたは組成の違い自体ではなくて、粒度や粒形状を主な原因とした、捏ねたり焼いたりした時に機械的にどうなるかっつう性質によると言えるでしょう。違うかな?

 アルミナ、シリカ、その他チョロチョロという組成は、長石も粘土鉱物(カオリンも含むよ)も一緒です。まあ言っちゃえば長石もカオリンも中身はいくらも変わりません。その他チョロチョロの部分、特に可溶性塩になるアルカリ酸化物の量の多寡ぐらいなもんです。買ったばっかりのコーラと気の抜けたコーラぐらいには違いますけど。

 この辺の認識を叩きこんだら鋳込み泥漿用の配合例を考えていきましょう。出来合いの鋳込み泥漿売ってるんでそれがイイに決まってるんですが、鋳込みってのは、成形作業自体には個性や手癖が激しく出にくい成形方法です。だから舐められてるし。だったら、アコガレ!の俺の素地、にチャレンジしてみませんか?ロクロ用の坏土一から混練するよりは相当楽。釉薬自分で混ぜてんだったら労力変わらないです。

 型の設計、釉薬のチョイス、焼成、で一緒のものにはそりゃならんといっても、ヤキモノの本質は素地の組織です。そこに俺作用が施されるってのは楽しくね?
 窯自作する人より土掘ってくる人(そこまでせずともブレンドする人)の方が多いってのはつまりそういうことかと。
 
 俺のこの記事読んでる以上あなたも、《全部出来合いで粘土細工さえしてりゃあ「陶芸やってますです(はあと)」では済ますつもりなんかさらさらねえ餓えた狼》ってことだと考えて極論承知で言ってますが(笑

紹介した配合のテストピース
どれがどれかは自分で試してみて!!





 排泥鋳込み用基礎配合を、ヤキモノ材料屋で買えるもののうちからミニマムな順で考えてみました。せっかく鋳込みなんだから磁器で行くぜ磁器!
 さすがにミニマムっつっても長石だけ、とか、硅石だけってんじゃあ、「せっかく砕いてくれたものをもう一回石に戻してどうすんだバカ!」と言われちゃいそうですが、実はヤキモノっツウのはそういうことですよ。

 おすすめ基礎基礎配合①
 長石:カオリンを1:1の同量比
 〇〇粘土じゃなくて○○カオリンにしてください。この場合。 

 おすすめ基礎基礎配合②
 長石:硅石:カオリンを1:1:2
 硅石を入れることによってはっきりシリカが骨材として立ちます。

 おすすめ基礎基礎配合③
 長石:硅石:カオリン:蛙目粘土を1:1:1:1の等量比
 粘土鉱物のうち半分を高可塑性材料に置き換えます。(蛙目でなくて木節等でもOK!)

 で、これだけじゃお前本当に考えたのかよ!って言われそうなので、しょうがなくいろいろ試した結果の・・・
 つくセラおすすめ配合としての④
 長石 25%
 硅石 15%
 カオリン 50%
 ガイロメ 10%
 で、どうでしょう?
 カオリンをちょっと減らして(3~5%)、その分長石と硅石やや増やし目にしてもいいっすね。大差ないっす。

 ④は、自分で考えたり試したりするのがやってられない人向けですが、だったら出来合いのスラリー買えよ!そっちのがイイから。と言っておきます。

 では、①~③について、少量でイイから泥漿を作って焼成までやってみてください。
 その際、以下を気にしてみて、好みを探っていってください。

 A:泥漿のチクソトロピー性の大小。
 B:着肉時間(ここはびっくりするほど違うはずので楽しみにしてみてください)
 C:離型できる(もしくはしちゃう)までの時間
 D:いじくってもヨレなくなるまでの時間、またヨレっぷり
 E:完全乾燥してからの水分に対する性質
 F:生体加工(シノギ等の切削、取っ手付けたりのアッセンブル)のしやすさ、タイミングの振れ幅
 G:乾燥収縮はどういった具合か(収縮日だけじゃなくて、さっさと収縮するのかゆっくり収縮するのか、とか) 

 焼成の段階に入ってからは
 H:普段とおなじ温度に素焼きした時の強度や吸水性
 I:焼成での歪みやすさ
 J:透光性
 などなど
 で、忘れちゃいけないのが余って保管しておいた泥漿の状態。

 といったあたり。
 この程度の単純配合だからこその違いを楽しめると思います。
 
 それと、絶対やってほしいことが二点
一つは、離型するときに、完全に外れるまで待った場合と、多少早めにゴムハンでポンポコ叩いて外してみるという最低二種類。ヨレを起こさなくても焼成後のひずみに影響する場合があります。もし叩いた分がやたら歪んだようなら取扱いシビア君、と考えられます(焼き歪みのひどいのは本当に面倒)

 もう一点は、決まった釉薬、できれば貫入が出やすい釉薬を同じ厚さでかけて、貫入の出具合の違いを確認してみましょう。理由も調整の仕方も見当つきませんが、違ってて不思議なんだよ~


 一通りやったら、調合をちょっといじってみる。1割程度の増減や外掛け添加までならひどい事故にはなりません。ただし、中性(R2O3の式であらわされる)、酸性(RO2)の酸化物にしてください。塩基性(R2OやRO)のものはやめておきましょう。焼成温度がググッと変わっちゃう(多分下がる)ので・・・

 簡単なのはカオリンや粘土鉱物の増減がわかりやすいかな。
 俺はカオリン、あるいは硅石の一部あるいは全部をアルミナ(材料屋にあるうちで硅石ぐらいの粒度のもの)で置き換えてみるのをお勧めします。焼腰の強さや焼成温度帯、結構特徴が出てきますよ。

 ジルコン(珪酸ジルコニウム)などは好みはともかく白さをアップできます。

 たとえば庭や近所の土(ほんとに何でもいい)を掘ったくって水で洗って砂目を濾す。その細かい方を加えてみれば、ほんのちょっとで成形性に影響与えずに色もつくでしょうし、これぞまさにみんな大好きオリジナル(笑
 
 ぜひ試してみてください。
 粉末を泥漿にする作業やなんかは過去記事を参考にしてみてくれ~~。

 素地試験におすすめの釉薬も一つ紹介しておきます。

 長石  40%(いろんなのをブレンドしたりしてみて!)
 石灰石 15%
 カオリン20%
 硅石  15%
 タルク 10%
 骨灰  2~3%

 これはどんな土でも安定して食いついて、焼成温度帯も幅広く、釉掛け時の多少の凸凹はなめらかに落ち着く、しかも沈殿しにくい、光沢の透明釉です。
 貫入しないようにタルク10パーもブッ混んだのに意に反して必ず貫入します。きれいな貫入が出ることが多いですよ。骨牌を2%ばかし入れた理由はなんか通っぽいからってだけですが・・・(多分安定性が上がってると思う)
 この釉薬に酸化鉄(通称RIOちゃん)1.5%、あるいは酸化銅を1.5%加えると素地によって色味の出方の幅が広いので、新しい素地の試し打ちにぴったり。
 
 そんな感じで四種類の素地のこの釉を掛けたものがこの辺
収縮の差や貫入の出方、色味が若干違うんですよって言いたかったのに写真じゃわかんねえな


 結局いじくって気に入った高強度の素地と釉の組み合わせができました(4番にジルコニアの削りカスを外掛け5%混ぜたもの)

 この色の組み合わせ、名前まだ決めてないんだよね~











 
 
 





 



 
 

2020年6月20日土曜日

アルミナボート・オーダーの際の注意点も!

 アンマリにアンマリな面白半分で不謹慎なネタ記事をトップにしておくわけにはいかないので、キチンと今週焼き上がったファインセラミックス耐火物の写真をデデンとアップしておきます。
 


 アルミナ多孔質のボートです。るつぼと言おうが焼成容器と言おうがセッターと言おうが、呼び名はどうでも構いません。
 横倒しの炉心管の中央まで突っ込んで使う場合はボートって呼ぶことが多いなあという記事は最近も書いたかな?
 まあそんな製品です。

 このボート、発注の際にちょっと確認しておいた方がイイことがあるんですよ。

 数年に一度「入れたいところまでまで入らない事件」というのが勃発します。
 皆さん、お使いの試験炉の炉心管内径に合わせてご希望の寸法や形状を指定していただいたり、要望を受けて俺の方でこんな感じでどうですか?と提案したりするわけです。 
 管の内径には±誤差がありますし、ボートの方もしかり、それで輪切り断面方向の寸法にについては十分注意してクリアランスとるんですが、意外と見落としがちなのが長さ方向の寸法。
 
 横型の炉心管は使用を繰り返すうちに、どうしても湾曲して垂れさがったり捩れたりしてきます。あるいは、結構なハードプレイ(ぎりぎりの高温域まで上げてキープめっちゃ引っ張るとか、ガス、蒸気がきっついとか)をすると、いっぱつだったりもするかも?

 この手の装置は、試料を置きたくなるような測温が安定してる部分は結局中央部の案外狭い範囲だったりするので毎回毎回、ど真ん中に熱間荷重受けてることになりますから炉心管さんも大変な虐待うけてんですよ。長ーいのに両端受けてるだけでステーもブラケットもなかったりもしますからね。
 そこまで装置に詳しくないから、この辺これ以上話すとどっかの声だけはカワイイ法務大臣みたいに藪蛇だったりトンチンカンになっちゃいますので細かい状況の説明はできませんが、とにかく炉心管は痛みます。

 で、曲がった炉心管に長いボートがつっかえちゃって通らない、なんてことがあるようです。この事故?ってのは、時の流れは残酷に二人を引き裂いた、みたいなもんです。誰も悪くないのに。
 頑張って入れたけど帰りは出てこなかったなんて話も以前聞いたことあります(笑

 短いボートにしとけばスーッと入るし、もっと長い間炉心管使い倒せた筈!なんて状況ありませんでしたか?
 ここで「ウンウン」と頷いてる経験者も結構いると見た!


 な~んてことにならないように、設計する時は内径のクリアランスだけじゃなくて、長手方向の通りの確認もした方がいいですよ!まあポンポン新品に交換できるようならそりゃいいんですけどね。
 
 

2020年6月19日金曜日

NHK《大化の改新》再放送 ヤキモノ屋の期待に応えず!!

 NHKのドラマ「大化の改新」
 2005年放送されたものの再放送が先日ありました。ビデオに撮っておいたものを今日石膏流ししながら鑑賞。
 当時はスルー。
 
 時代劇、歴史モノ大好きですし、戦国と幕末だけが歴史じゃねえぞ!と強く思ってるクチなので、絶対見たい題材のはずなんですけど、そん時は多分予告観てショボ!とでも思ったんでしょうかね。その前にあった聖徳太子のもダメだったしなあ。よく覚えてないや。

 なぜこの学術的を旨とするHPでこんなドラマ好き奥様ブログみたいなことを書いてるかといいますと・・・ 
 
 乙巳の変(蘇我入鹿謀殺!)に始まる大化の改新ですが、その数年前、そこに至るまでの血なまぐさい政争の流れの中で、実は、我々ヤキモノを生業とするすべてのものにとって、絶対に見逃してはいけないシーンがあるはずなのです(例によって著しい個人の見解です)
 
 エラそうに言っておきながら俺も当然大雑把にしか知らないので超大雑把にうろおぼえで言うと、

 毎回皇位後継問題ってのはあるわけです。
 ずっと山背大兄王(聖徳太子の息子さん)は大王になる気満々。
 マツリゴトを牛耳ってる蘇我入鹿にとってはそれじゃあ都合が悪い!息のかかった大王を立てたい。
 アレ?今回はなんか山背大兄推しの豪族連も結構強力になりそうっぽい。
 もう山背大兄殺ッちまおーぜ!
 
 というわけで、入鹿は斑鳩宮(山背大兄王のヤサ)に手下の豪族を差し向けて襲撃!出入りになります。
 山背大兄敗走~追いつめられて自害という流れなんですが・・・

 大戦ってわけじゃないけど、斑鳩宮の戦いが結構なハードバトルだったみたいで、山背大兄が自らダンビラつかんで大奮戦。攻め込んだ豪族の大将一人に討死が出るレベル(。そういや父聖徳太子も聖人君子の代表みたいなイメージですけど若いころは戦争して物部守屋ぶっ潰してます→で蘇我氏強大化→一周まわってこの状態。ほんと権力って嫌ですねえ。
 
 その返り討ちにあって戦死した豪族の親分ってのが土師娑婆連(はじのさばのむらじ)さん。
 連ってぐらいで高級豪族ですから、この人のこの時点ではすでに政治家なんだと思いますが、「土師氏」ってのはもともとは古墳を作ったり、祭祀用の土器=埴輪を発明して作ってた技術集団の親方の氏族だそうですよ。つまりヤキモノ屋の親方と言って差し支えない(相当あるけど無い!)!

 ヤキモノ屋という技術集団の大親分は昔は、皇室、豪族の古墳や葬送儀礼にかかわる重要ポストについていて、この事件のように皇位継承争いに関わって聖徳太子の息子ぶっ殺しに行くような立場にあったということなんですよね(返り討ち喰っちゃったけど)。話の流れ上いろいろ曲解がひどいですがそう思っといて差し支えない!!

 そのヤキモノ屋の親玉たる土師娑婆連さんが山背大兄王と組み打って壮絶に討死する脚色大盛りシーンを、我々ヤキモノ屋はグワッッと目を見開いて見届けなくてはいけないのです!!
 見事散って見せろ!
 
 ストーリー上取って付けたような葛藤に苦しんだ入鹿は、ついに斑鳩宮に軍を差し向ける!斑鳩宮に蘇我の軍勢がなだれ込む!(ココの火矢を射掛けるシーンだけはすごくよかった!)
 ストーリー上うっかり騙されて不意を突かれた形の山背の大兄!
 弓だか太刀だか覚えてないけど手に取ってオノレ入鹿と憤怒の形相!大乱戦の庭内に我こそ山背と走り込む!
 
 が、

 期待したシーンありませんでした(笑
 どころか土師娑婆連さんすら特に描かれませんでしたとさ

 何だこの記事?



 当時は土師のほかにも木工、金属、織物、建築等々といったモノを作る職域の集団がの氏姓制の中にたくさん組み込まれてます。昔はモノ作ってるやつらは尊敬されてたんだよ。と深夜に遠吠えをしたくなりますな。別に権力も尊敬もいらないけどさ

 まあ今で言ったら経団連でトヨタとかがデカい顔してるみたいな感じなのかなあと思うと心底どうでもいいかって気もしますが(笑

 
 
 






 ドラマの方は、まあ予想通りというか、顔面圧力の高い豪華キャストが歴史バラエティ番組の再現ドラマに出てる!!的なシロモノでした。いろんな意味で。仲代達也とか原田芳雄が出てるんだけどさあ。
 せっかくの役者陣を揃えながら心情と状況を全部台詞とナレーションで説明するという朝ドラみたいな親切設計。歴史博物館のロビーで流れてたら面白いかも!

 言いたいことは多々あれど、天下のNHKを通った脚本にド素人の俺が文句を言えるはずもなく、とはいえ、どうしても一つだけ。
「大化の改新」と言っておきながら、乙巳の変まで。
 せっかく岡田准一を中臣鎌足にしておきながら、クッソダサい伝わりにくいアクションと愁嘆場でお茶を濁したように入鹿を暗殺したところで終わり、全然「大化の改新」じゃないじゃん!!ナレーションで「その後…」とか説明してたけど。大化の改新ってのはその後の方なんだよ!

 そのクライマックスの乙巳の変成功に至る流れも突然すぎて全然わかりませんでした。
 事実上の最高権力者を大王の目の前でぶった斬る!なんて日本史上でも稀にみるエクストリームなバイオレンスイベントですよ。
 どのぐらい凄いシーンか、というのは、考えてみてください。不謹慎覚悟で言いますが皇居で、アベシンゾーが、陛下の見てる前で、なぜか手を組んだアヤノミヤとエダノにぶっ刺されるなんてとてもじゃないけど考えられないでしょ。

 そんな誰が蘇我のスパイかもわからない中超綿密な極秘作戦たてなければ絶対できないんだからそれだけでも超一級のサスペンスができるはずなのにそこ描かないんですよ。もったいねえ。トム・クルーズとかチャン・イーモウにでも話して聞かせてやれば相当面白いの作りますよ!これ。
 
 では、クライマックスをご覧ください。


入鹿、異変に気付く!
武装集団のうち左の槍持ってるのが中大兄(のちの天智天皇)

イルカ、クーデター軍にとっ捕まる!
 

蘇我入鹿の大臣、討ち取ったり!


 

2020年6月16日火曜日

吉田崇昭さんの素数文がいかに恐ろしいかを長々語る

 
 個人的にちょっとしたきっかけがあったので、無駄話をば…
 以下は個人の作家の創作活動について、現物を手に取ったこともないくせに、ネット上の写真を見たこっきりで「俺が勝手にしゃべってるだけ」です。何か不快、不都合や事実誤認やオカシな何か、が文中にあったとすれば、あたりまえですけどそれは全部俺の責任です。御本人にももちろん作品にも無関係ですのでヨロシク。



 ヤキモノ屋に限らず、モノ作る人間にとって文様(とりあえず模様といってもいい)というものとの対峙からは逃れえませんよね。
 俺は無地だ!なんも描かねえし立体的加飾もしない!
 私なんてシンプルなんとかモダン!(筆者注:笑)

 なーんて人は、特になんもないように見える模様という選択をしてるわけです。ジョン・ケージなんか「音が出ないという音楽」なんつうクッソヘリクツを捏ねました。すげえ。
 イブ・クラインはただの青一面。

 これは芸術にとどまらず、
 禅や哲学系だと「無はすなわち有」だったり、
 「動いている矢は止まっている」といった運動法則(違います)
 真に受けても役に立たないということで役立つコンサルタントやマーケティング屋、
 アベ・シンゾーに至っては、まだ各家庭に行き渡りもしない実存無きマスクが、流通を回復させたとやらで、ほらお店にマスク並んだでしょ?マジか?社会・経済においておや!
 真なるは逆説なり 

 アレ?なんの話だっけ?
 

 人が人工的に構築したなにかに狙って模様を付けるってのを文様と仮に定義します。
 そうなると、カイラギや、縮緬ジワ、ロクロ目や手跡、削り跡、なんかも狙っちまった以上文様っちゃ文様。

 まあここではそういう広義の話は置いておいて、作ったもんになんかルールのある形で模様を描いたり彫ったりしたよ!ってのを文様としておきますね。バカ話が際限なくなっちゃうんで。


 そんな文様のうち、俺のヤキモノ屋人生、心胆をもっとも寒からしめたのが素数文です。俺の心胆を寒からしめたところで何がどうだってのは無視。
写真は勝手にインスタから借用しました。

 素数文、ってのは福岡の陶芸家、吉田崇昭さんの持つ最恐の必殺技。
 吉田さんは、みんな大好きイノウエ先生の動画でも登場してオジサン二人でイチャイチャしてました。動画も必見なので是非探してご覧くださいね。

 御本人のサイトはこちら。
 吉田崇昭 喜器窯
  インスタグラム

 

 ご自身がどう思ってるかは別として、俺が考えるにこれは史上最高レベルの必殺技、オリジナルホールドです。史上最高とか簡単に言っちゃってますがマジです。これは本当に困る!!(褒めてます)
 俺が知ってるうちで、なんつうマッスの狭い話かと思えばさにあらんのですよ。

 面識もなく、作品現物も拝見してないんですがこの素数文のヤバさはずっと語りたくてしょうがなかったんですよね~。このHPでも過去にコメントしていただいたり、インスタでもたまにやり取りしていただいたりしたんですが、ご本人ナイスガイなので怒られないと思って行くよ~
 吉田さん。勝手にごめんなさい。
 問題あったら記事も写真も消しますのでおっしゃってください。
 
 追記:快く許可いただきました!!ありがとうございます!!


見てくれよ、この雄弁な模様を!!
真ん中が23ってのは意味があるんでしょうか?気になる!
追記:23が好きなんだそうです。
誕生日が23日、マイケルジョーダンの背番号だし、とのこと。


 ここではデザイン、文様としての見かけの部分、意味について語ります。磁器だ、とか染付だ、とか言った部分、製品そのものや製作工程上の特徴については語れません。さっきも言ったように、そもそもまだ現物すら拝見してないんですよ。これ欲しいよなあ~。

 
 ヤキモノの型式?としては、
 磁器の染付、という伝統あるストロングスタイルで、形状も機能的で丈夫な珍奇さを狙ってない正攻法ですよね。材料的には釉も呉須も素地も澄み切ってない、古式感、庶民用感のある色味のちょっとくすんで淡いように見受けられますよね。白も青もキンキンのお貴族仕様じゃないタイプ。今はかえって少数派なのかな?(この辺動画と写真みただけで勝手に言ってますからね!勝手に)

 で、肝心の文様
 文字(漢字でもその他ABCでも仮名でも)を模様にするのは、普通にあります
 紋、模様をランダムに、あるいはランダム風にコンポジションする。これも普通
 数字を使う 多分珍しいけど無い訳がない

 そして、言葉や字、存在として素数なんてものはみんな知ってるもので、素数と聞くとコーフンする、なんて人はごまんといます。

 つまり、普通にあるものを使っただけなんですが、これが考えれば考えるほど、とんでもないことになっています。

 文様というものは、きれいだね!以上の意味があるものとないものがあります。良し悪しではないですよ。
 言い方が悪いかな?抽象と具象というと言葉のカロリーが高すぎる気もするけどそういうこと。

 線や面、色、などを幾何学的に、あるいはルールは無くとも割り付けただけのものは、アブストラクト、抽象的な文様。意味は無いです。意味があったらに抽象にはならねえからな。直線だったり三角形だったりな時点で抽象じゃない気もするけどそこはボンヤリさせといてね。
 そこから何かを感じるやいなやは(実は作家の思惑が仮にあったとしても)個人の勝手に属します。多分。

 対して、桜の華とか、動物、風景などが書いてあれば、読み取ったり感じ取ったりする質や量は個人の勝手になるかもしれませんが、架空のものだとしても具体的に意味や定義みたいなものが存在しちゃいます。桜は桜だし、カンフー少年はカンフー少年ですよ。で、もっと言えば物語が存在します。曖昧な言葉使うのもらしくないんだけどそういうこと。

 まあもちろん中間もあって、伝統的幾何学様式にはわかりやすいかどうかはともかく、麻の葉、立涌、青海波、等々そもそも何かを見立てた(とされる?後付かもしれないけどな~)みたいなもんが多分洋の東西を問わずにたくさん。
 麻の葉なんて、赤ちゃん産まれたらおくるみこれですからね。丈夫にすくすく育ってね~なんて。そういう意味や物語を知らずに麻の葉を使うデザイナーはいないはず。でもまあとりあえず幾何学連続模様です。


 で、描かれてるのが数字だとどうなるか。
 数列だったら意味がある、もしくは意味を読み取ろうとしちゃう。4649の類かな?とか、一日の自殺者数だとか、このお碗って何個目なのかな?とか、意味=物語があるんじゃないかって感じる時点で意味=物語が存在しちゃうよね~。
 公式や数式だったらハッキリと意味を持ちます。難しくて知らないようなのでも。


 数字が単独でばらけて配置されてれば、数の大小、という意味があるもののそれだけなら限りなく意味がないと言えます。もちろん文字なのでその文字そのもののデザインや描かれたサイズに何か印象はあるけど物語とまでは存在しない。この辺、数学者なら、とか、7に死ぬほど愛着をだいてるとか、人にもよるでしょうが。

 それが素数となると我々一般の数学ムズイ、理系キライ人種にすら俄然意味を持ってくるのがミソ。それこそ人によってはその物語無限大ですよ。漢数字なのもキモで、地域性や文化的アイデンティティが立ち上がるし、非漢字圏の人でも数字と聞かされればすぐ意味が分かる。文化的属性にかかわらず、世界のだれもが素数に対する感覚、認識、定義すら共通のはずです。数というのは共通言語なので。

 無限の物語性を持つのに限りないほど無意味にも見える、誰が見ても何が描かれてるのかよくわかり、かつランダムでアブストラクトな模様にも見えるってのが心の底からすげえ。(何言ってるか自分でもわかってませんが)
この辺の抽象具象に関しては言葉のあやで、美術的にとか言葉の定義や語釈がどうかってのはあんまり気にしないでね。  
 と、ここまでいかにこの文様が面白いか記したつもりですが、光あれば影アリ。同時に『吉田崇昭の素数文』がどれほど世の中を最悪のディストピア、真っ暗にするか、ということも記さねばなりますまい。いいですか、そろそろ例によって話が無理やり飛躍しますからね。真に受けないでくださいよ!いや、人によっては真に受けろ


 多分ですよ、素数をコンポジして模様にする、ということ自体、世界のクッソ長い数学とヤキモノの歴史上なかったわけはないんですよ。
 青花に字や詩を死ぬほど書きまくってきた中国ではとくに。素数なんてのも古代ギリシャ以前から世界中の数理にこだわりあるオジサンが気付いて打ち震えてたに違いないでしょ?でも確かに手元の図鑑いくつか見ても素数文なんてないっすね。その辺でも見たことない。
 (これは、たまたま伝世品がないだけとか、田舎窯の田舎品だったから埋もれたとか、そんな偶然の理由じゃない恐ろしい何かがあるに違いないんですよ。このくだりの続きは有料です。うそ)

 そういや見たことねえなあ、やったらオリジナルじゃね?と発見したのかどうか、とにかく素数大好き吉田さんが自分の器に書き付けてバシバシ作りました。ここまではまあよしとしましょう。
 追記:素数文誕生のコマゴマした秘話を教えていただきましたが、あんまりにも面白い上にもしかするとどっかに被害者が出るので俺からはナイショにさせていただきます。とりあえず、素数は好き、俺はヤキモノ屋、だったら文様にする、という流れに関しては間違いないです。

 問題は吉田さんがれっきとした実績ある陶芸家だって所です。あっちこっちで個展したり卸したりして、もう誰が見ても『吉田崇昭の素数文』になっちゃいました。だってほかにやってねえんだもん。歴史的に細々とはいえたまに見るよ、なんてこともないみたいだし。
 趣味オジサンが教室で作ってニンマリ!なんてのとはわけが違わあ。
 
 もうプロのヤキモノ屋にとって素数を散らすという文様は少なくともカネとって商売で作れるようなもんじゃなくなっちゃったんですよ。
 まあコピーだのパクリだのってのは突き詰めれば似てる似てないって話なわけですけど、素数には似てるもへったくれもないんですよね。素数は素数。だってそもそも定義のある概念なんだもん。
 
 この辺、有名な誰々の作った形に似てるとかそういう話じゃないです。俺なんかは所詮器なんてものは特に形状に関しては機能的な制約から結果的に収斂したにしろ、丸パクしたにしろ、どうしたって似ると思います。集合知ですから。特に機能性を重視した種類の実用品はコマゴマした部分除けばそりゃ似ますよ。

 ルーシーリーがはびこってるとか鼻でわらう人もいますけど、あの形がだめだったら世界は相当狭いぜよ。あの形が本当にルーシーの「発明」だとすれば、それはルーシーリーが偉すぎる!古代の○○土器や桃山陶、李朝とかといった集合的存在にたった一人で並んじまったんだからね。そのアコガレが自分の器にどうしてもにじみ出てきちゃう、なんなら見た目丸パクだとしても俺には人のこと言えないし、一概に非難できないです。


 とにかく整理すると、桜の花びらは誰が描いてもコピーもへったくれもほぼほぼないのに(まあ似せ方の程度はあるけど)、なぜかもっともっと普遍的しかも概念的存在であるはずの素数が、核融合的遷移の結果、個人のオリジナルデザインになっちゃったんです。

 動植物ならちょっと書き方違ってりゃあいくらでもやれるのに対して、この素数、技法もへったくれもなく、鉄絵で描こうが釘でひっかこうが、釉彩しようが、アラビア数字で描こうがローマ数字で描こうが、素数であることの意味合いがデカすぎて、まあそういう謗りは免れますまい。

 福とか、豊とか書いてある皿だの碗だの結構みかけるんですが、福田豊って名前でずっと生きてる俺でも「その字、俺の字だから」とか言えないわけです。
 だのに数字に制限が付いた。

 いうなれば素数の個人所有。
 いいですか、概念を個人で独占してるんですよ!歴史上これほどまでに強大で戦慄すべき独裁権力があったんですかね?
その資産価値たるや天文学的を通り越して那由多とか恒河沙みたいな難しい漢字のアホ小学生しか知らないあれレベル。まさに浜の真砂の一粒のこらず!

 しかもですよ、良く想像してください。別に素数じゃなかった時のことを!真に恐ろしいのはココから。
 単に数字がいくつか書いてあったら?
 等差数列でもフィボナッチ数列でも、本当に無秩序なバラマキですら「あ、吉田さんぽーい」とか言われちゃうに決まってます。まあこのくそ文章を読んでしまった以上、あなたももうそういうことなんだよ!

しかも四って!素数じゃねえじゃん!
くそう…隙なしか…
追記:40台の素数の10の位が見えてるんだそうです。
 
 話をワイドスクリーンバロック的に広げると、素数(数でもいい)という概念は、単なる数理ですから全宇宙にあまねく等しく存在しているはずです(少なくとも同じような物理系の中ではきっと)、『太陽を盗んだ男』(大傑作:主演はジュリー)といっても所詮被害は太陽系レベル程度。素数(数でもいい)を個人所有した以上、被害を受けるのは全宇宙です。全宇宙!(被害ってなんだよ)
 PS:そんなことまで考えてないです。とのこと(笑

 『宇宙を盗んだ男』この二つ名を授けます。
 今日の結論としては、 素数文、まじヤバい!


 
 このネタ、現物を見てご本人に確認してから、と思ってたんですが見切り発車しちゃいました。すみません。追記:繰り返しになりますが、ご快諾いただきました。ありがとうございます。

 ヤキモノ初級者の友人から「お前(俺ね)の作ったもんなんかつまんねえからどうでもいいよ。なんか有名なのコピーしてみてくれ!写真見せたら作れる?」みたいなひどいメールを受け取っちゃいましてね。コピーについて考えてました。
 コピーってのは仁義道徳の部分はさておいて、技術向上したり新しい手筋をおぼえたり、考えに広がりが出たり、とても楽しいんですよね。ものの見方も深くなると思います。

 
 土や釉薬はもう真似るも何もどうしようもない。完コピこそってのももちろん分かりますが、まあ普通はコピーを通じて自分が出てくるのを楽しむもんですから手持ちのでいいんじゃない?

 となると形。マネるのは練習次第だし、だからと言って作り方の手順なんてもんは自分でうっかり見つけるからこそ面白いわけ。あーそこはそう作ってるのか!って知るのも本当に目が開いて楽しいですけど、いろいろ考えながらやるうちに結果的に別物だけど新しいの出来た!なんて横道にそれて進むのも大好きです(根気がないので俺は大体こうなる)
 じゃあ、作るところは記事にすることねえなと。 

 じゃあ、文様は?となれば、これこそコピーのコピーたる核心ではあるまいか?(とりあえず良し悪しは不問)と思い至って、趣旨はだいぶ変わりましたが記事にしてみました。
 もしコピーして遊ぶシリーズをやるのなら、犯罪性?が低いようにコピー元から意味と技法をスライドさせて結果的にコピーには見えない、みたいなものを作るのは楽しいのかもな。と思いました。その点もう数字つかうのは無理!みたいな(笑
 丸コピもそれはそれでいろいろすごいよね?と思ってる自分もいますが…誰にとってどこまでがコピーとか難しいし面白い。
 何をどこまでズラすと『吉田崇昭の素数文』の影響を感じなくなるか、って実験するのも楽しいかも。
 

 
 


今右衛門のカンフー少年



ジルコニア容器

 です!

 うちは基本るつぼ屋ですので、使用温度に対する耐性、炉内雰囲気や溶湯との反応性、熱間での強度、といった部分が材質の選定基準になって耐火物を製作することが多いので、そこら辺に対するジルコニアの強さとメインに付き合ってるわけです(変な文章)

 が、とにかく外からくる物理的な力に対して強くて割れにくい!=靱性がデカい!=世間一般でいうところの堅い!というのが売りの一つで、この製品のように常温使用の耐衝撃性、耐摩耗性を求められる容器や部品という使用法も一般的。

 削りカスや残渣を釉薬の呈色材として使用すれば、土台の土が何だろうととにかく白くできる!みたいな使い方もしています。しかも貫入がぐっと減るおまけつき。


 とにかく堅い、とにかく白い、とにかくど根性、ジルコニア便利!

 また、うちの製品とは無縁な部分だと、高温で半導体になる(できる?)であるとか、根性やガッツとは無縁の機能性材料でもあります。ジルコニア凄い。

 とはいえ作る側からするとジルコニアってのは実は癖の強い材料で、ここでコマゴマとは話しませんが、俺みたいな海賊零細でも普通にバシバシ作っちゃえる、って事実の過去には原料メーカー、製作サイドの職人、無機材料研究者の死屍累々がかなりの標高の山になってるらしいと師匠のじいちゃんたちからよく聞きました。いまだに部分的にはメチャ難しい材料だと思ってます。

 温度勾配には結構シビアで、うっかりするとワンパンKOされることも多いガラスのチン。ジルコニアかわいい。 








 

2020年6月14日日曜日

おススメツール 研削編

「おススメ道具、研削ツール編」ということで紹介します。
 (ほかに何編があるんだ?と言われてもさっぱり考えてないですけど)

その名はタジマのアラカン

 特に石膏使う人には鉄板でお勧め!!
 写真で分かるようにロング、ショート、細い奴、と三種類あります。

 本職の建築屋さんが何に使ってるのか知りませんが、多分ボードヤスリじゃないのかな?
 用途として、木材、板金の粗仕上げや面取り、サビ取りやペンキ剥がし、とのことです。まじか?俺の身の回りで考えるとサスガに粗すぎる…

 とにかく石膏の面取り、粗削り粗均しに超ピッタリ。 
こんなん生姜を下すように一瞬ですよ。
これで粗く形を作ってからペーパーの番手を変えながら整えるというのがやりやすい。


 掃除は真鍮のブラシかけてこれまたパパッと。水でじゃぶじゃぶ洗っちゃいます。
 切れ止みにくいし、少々なまくらでも石膏ごとき楽勝。石膏用は独立してから一回替えたか替えないかレベルの長寿命。

 替刃の種類も
コンベックスしてるのとまっ平の二種類。


このサイズが超おススメ。

 これ、生の成形体の削りにも便利ですよ。
 刃は製品の成形用と石膏等荒仕事用に分けた方がイイです。


こういう使い方が長年のお気に入り。

 もちろん整え直してもいいですし、このまんまのマチエールで焼いちゃってもいいです。
素地剥き出しで焼いちゃえばこんな感じ。


釉掛けすればこう。

 私は、ヤキモノは彫刻(合ってますか?立体の像って意味です)でもあると思ってるので(触って、口つけて、使える彫刻!)、器を持ってもらった時に指先や掌に感じる質感というのを大事にしたいと考えています。ヒビヒビのザラザラにしたりするのもその一環。もちろん滑り止めとか言う意味も考えてますけど、手だけじゃなくて触覚を通じて心にも引っかかってほしいよね。みたいな感じで。
 これは手早くその目的を達成できる手口なので便利、自分の中では鎬の一形態としてとらえてずっとやってます。それにこうしとくと多少の歪みをごまかせるんだぜ(笑

  



 タジマはコンベックスやカッターの刃も愛用してます(でも軸はNTカッターだったりして)、工作や、特に建築関係ではなくてはならないメーカーの一つ。最近国内生産じゃないことが多くてそこはちょっと残念ですけどまあ会社がデカいんだろうなあ。
 タジマはちょっと高いけど間違いないって品物が多い会社ってイメージ。名前もまあ堅実なのばっかりだと思ってるんですが、これは「アラカン」ですからね「アラカン」

アラカンっツウ名前の由来がこっちなのか、
アラハンだっての


こっちなのかはわかりませんが、この名前けっこう好きです。映画ファンなので。
俺にとってのアラカンは鬼寅親分。
野球中継が雨で中止になるとよくやってました。


 堅実な製品を作る信頼の会社ってのはたくさんありますよね。伝統も実績もある結構デカい会社のいい製品のしかし「頑張ったネーミング」「がんばったデザイン」ってのがいまいち、すでに古臭いSF感あふれるビミョーなことが多い気がするんですが、その理由は、決定のハンコを押すのがもうかなりのオッサンだから、ではないかと…
 まあ6070の役員連中がやたらヒップでホップだったりするのもそれはそれで社員の皆さん心配だべな。
 

 今注目してる木山拓さんのYOUTUBE。福岡で活躍中の青磁の作家です。イノウエ先生がらみで知ってプチハマり中。
 その木山さんが先日アップしたのが以下の動画。
何?今シッピキの作り方流行ってるの?
 俺も先週やたらシッピキの縒り方の閲覧が多いのでって記事をあげたばかり。その後も留まるところ知らず毎日毎日シッピキの記事が閲覧されてます。シッピキ来てる!
 とりあえず『切り糸・シッピキ特集』というタグも作ったので半笑いでご覧ください。
 
 この動画内で丁寧によりの掛け方を説明されてるので、シッピキストの皆さんはこれを観てください。まあ、世界最速は俺だけどな!(しかも世界でもっともジョン・ウーな縒り方も新たに開発したのでそのうち動画作ります)
 
 何はともあれ、この木山さん。まあ腕がいいのもびっくりですが、癖の強ーい中年のオッサンばっかのヤキモノYOUTUBE界にぶらっと現れた朴訥なハンサムなんで、かなり貴重な逸材。なんかユーチューブユーチューブした細かい編集したりとか、やたら達筆にベラベラしゃべれるようになんてならずに、この感じで突き進んでいただきたい。とテメエ勝手な希望を述べておきます。
 と、いうより、是非世界の青磁の進歩・発展にいそがしくて動画なんかとってる暇ない!となるべき逸材とみた!

2020年6月11日木曜日

イットリアるつぼ

 久々にファインの製品を紹介。
 イットリアのるつぼです
 50φほどです
 


 まあ普通のるつぼです。
 イットリアは希土類酸化物ですが、単に量的に言うとそこまで希土ってほどでもないみたいです。まあ実情なんか知らんけど。
 特殊、というか特別な部類に入る材料だとは思いますが、癖が強ーいってほどでもないので比較的扱い易い方だと思います。いや、そんなこともないかな?




 ワタクシ、伯夷・叔斉が如く、竹林の七賢が如く、たとえ餓死しようともそれまで山菜でも雑草でも食えばいいっちゅう思想(というか、男子たる者アコガレ!=かっこだけでも真似たい、そうなった理由はどうでもいいや)が、ティーンネイジャーの頃からそもそもあるんで、覚悟も準備も常日頃できてるんですが、マジでそうなったらそりゃキツイはキツイわな。

 ボチボチと各大学研究所、公立の所が「通常」に向かって動き出しそうな雰囲気。
「新しい生活様式」とやらをお上からブン投げられるなんてディストピアSFみたいな世の中まっぴらごめんですが、深山竹藪に逃げ込む前に新しいだけじゃなくて前よりいい日常は作っていかなきゃならないっすな。子孫のために。

 今回のパンデミック以前なんてものがそんなにいい社会、生活かって言うとそう思わないところがゴマンとあるので、元に戻すべきところと元に戻しちゃいけないところ、ってのは選り分けたい気分。
 それこそコロナのせいでもなんでもして、きっかけなんか何でもいいから、そもそもクソだった部分は取り戻しちゃいけない元日常にしちゃおうと。
 アメリカのデモなんかはそんな動きが自然発生してると思ってます。人間捨てたもんじゃないはずだ!
 
 個人的な問題は、逃げ込む竹藪が減ってそうなところかもな~
 
 いや、整理整頓できないのをなんとかしないと…先に進まんわ



2020年6月7日日曜日

鋳込み泥漿の濃度(流動性)調整について

 写真の無い記事です。すみません。

 前回記事では、切り糸の縒り方、作り方の記事の閲覧が多いんだよなあ~ってことで、誰も真似する気になれない「世界最速の糸の縒り方」を紹介しました。動画の内容はいい年こいてバカ丸出しですが、糸に手早く撚りをかける理屈は分かっていただけたと思います。

 他に閲覧数が多いのが、「排泥鋳込みシリーズ」「石膏流すシリーズ」でした。

 この感染症騒ぎの中(友達が、今地球は「コロナ雰囲気」と言ってました。ヤキモノ屋病ですね)、講座や教室に行けないし、自宅にロクロが無くてもできる成形法、ってことだったんですかねえ。



 直接質問もいただいてて、鋳込み泥漿の調整について知り合い含め3件ありました(本当は4件だったんですが、一人は某ファイン屋の若手の方だったんでそれはノーカン。会社の電話からいい度胸だよ君は!すばらしい!でもまずは仲間と自社の伝統を尊重し給え!俺より絶対レベル高いはずだ!)

 というわけで、排泥鋳込み用の泥漿について基本的な考え方のようなものを紹介します。
 何作るかとか、どんな土なのかとか、そんな都合でそんときそんときですから、具体的な数字をあげて語れないのは申し訳ないんですが・・・。

 鋳込み泥漿、なかなかゼロから一人で試してみても難しいのかもしれません。個人的にはロクロに比べて能率的だとは全然思わないんですが(ほとんどの場合むしろ逆)、かなり産業的と思われている成形方法なので、いわゆる陶芸教室なんかでは扱われなかったり、先生が仕込んで出来上がってるのを黙って使ってちょろっとやる程度なのかも? 
 確かに何でもそうですけど先輩と一緒にやりながら覚えるのが一番いいのは間違いないです。

 ただし、最初に知っとけばそれだけでちったあ役立つ、地図のようなものはあると感じているので、興味のある方はご覧ください。

 では、つくばセラミックワークスが誇る「SAS(Slurry Analysis Service =泥漿分析機関)」による大体こんな感じ表、をご覧ください。
見にくいので右クリック、新しいウインドウで開く、してください。

 ある一定の坏土の量に対して、右側が水分量(含む解膠材)多めつまり薄い、左側が水分量少な目、つまり濃い、という割り付けになっています。
 緑の文字は、そういったスラリー(=泥漿)物性に対する表現の仕方、内側の黒い文字がその場合に出くわす不都合の代表例、を記しています。

 やっぱ、写真がないと寂しいので最近作った鋳込みの製品を




 
 で、ちょうどいいって何よ。って所ですが、ちょうどいいスラリーの特徴、こうであって欲しいということをここに並べてみます。
 
 必ずしも大事な順ではないかもしれません。
 1・確実に離型する。これは絶対。

 2・着肉が均一に仕上がる。

 3・着肉時間が適当。
    遅すぎるのも早すぎるのも良くない。
      数字で時間を示すのは難しいのですが、
      粒子の細かい結晶水の残っている粘土鉱物が多いと遅くなる傾向です。

 4・偏析しにくい。
   偏析というのは配合されている各素材が、組成や粒度ごとにバラバラになってしまう状態。
 5・使ってるさなかでもどんどん流動性が悪くなってしまう。
  チクソトロピックな性質が強いとこうなります。

 6・離型までの時間ができるだけ短く、
  離型後だらだらとヨレっぽい性質を残さない。
  これもチクソトロピーに関連

 7・使ってる最中の沈殿、分離が起こらない方がイイ
  頻繁にかき混ぜるようでは成形体にエアが混じります。

 8・かき混ぜても泡立たない。もしくは泡の収まりが早い

 といったところでしょうか。

 ほかにも、焼成終わるまで、や、保管、等々というロングスパンで考えると・・・
 ・いつも収縮が安定している。
 ・泥漿状態でも径時変化に強い。
 ・焼成歪が小さい。
 という性質だけでなく品質管理に直結する点。
 また。
 ・オキニの釉薬との相性がいい。 
 ・簡単に安定した原料が手に入る。
 ・できれば安い。
 ・臭くない
 ・人体、健康への攻撃性が低い
 等々あげられるかもしれません。

 まあその辺は今回は置いておきます。
 単に、いいスラリー=成形に都合のいいスラリー
 ということで~す。

 泥漿調整の基本、つってもいろいろ流派や流儀があると思いますので、俺がやってるパターンで説明します。

 解膠材に何を使うかでも変わるんですが、原料の乾燥重量に対して有効成分が0.3%~0.5重量%(以下w%)というのを基準としましょう。
 つまり、原料に対して0.5w%の解膠材を使ったら、もう水分以外は加えない、ということです。
 ただし、水分は原料の重量に対して45w%を超えるようでは行き過ぎな気がします(あくまでも一般論だけど)

 逆に、決まった量の原料に対して水30w%使ったもの、35w%、40w%といった具合に準備して、そこにそれぞれ解膠材を測りながら投入し混練、具合のいい泥漿になった割合を選ぶ。という方法もありえます(特に使ったことがない解膠材にたいしては)。

 そこで先のいいスラリーの条件を一番満たしているものをチョイスすればいいわけです。
 まあ一般陶磁器の坏土はそもそもナマモノ、というか組成的バラつきの大きなものですし、気温や水温、湿気など季節や環境によっても変わりますし、何も違うことしてないのにこないだまでとなんか違~う、なんてことも結構あります。大体そんなときは心の中で原料メーカーのせい、ということにして精神の安定を図っています(笑。ごめんね!

 慣れてくれば水ガラスぐらい目分量でやっても致命傷負わないようになりますよ。自分の中で基準の振れ幅が会得できるまではこの方法で慣れてみてください。
 水分量と解膠材の量を測り、良く混練し、一晩おいて試してみる。なんていうのをいつも同じようにやってれば、そのうち勘でできるようになります(多分。
 あ、言っときますけどファインの時はポットミルのボールのサイズまでキッチリ揃えてますよ。鋳込む直前、最後の調整は勘に基づく現物合わせですけど(読者のほとんどは実験室の先生なので強調しておきます!!)

 ここまでお分かりいただけたでしょうか?

 では、よくあるいい泥漿の言い伝え、的なものにメスを入れておきます。
  これね、これ

 切れずに細く糸を引くように流れるのがいい泥漿。
 これは正解です。まあほとんどの場合正解です。
 ただし、こうじゃなくても全然OK!むしろそっちの方がイイって場合もあります。

 こういう物性を示す泥漿にするのが目的なのではなく、使いやすいいい泥漿は、糸を引くように流れる性質を示すことが多い傾向がある、程度に捉えましょう。あと糸を引くってのは比喩ですよ。細ーくなっても途切れずにつーと流れるってことです。チェーンソーオイルみたいに本当に糸を引いていたらそれは解膠材多過ぎです!
 とにかく、あなたとその土にとって、作りやすくて実際出来も良かった時の泥漿の状態がいい状態です。当たり前ですけど。
 
 で、その状態が一応理想的な泥漿の状態であるとして、その理由。
 なるたけ少ない水分量で=粒子同士の間隔が密で良く絡み合い、でも流動性が高い状態であるといえます。
 無きゃ無いでイイ、実際焼けばその分無くなる物体=水が必要最小限に近いということは、素地ボディが緻密に成形できる=いろいろ強いということが一つ、
 でそれの流動性がイイってんだから、均一な肉厚で細かいところまで細密に写し取り、もちろん素地そのものの部分な粗密のばらつきが少ないということになるんだと考えられます。
 均一に、密に、強く成形できる、ということでこれは焼成しても優れた「組織」が作れるわけです。理屈の上でですが。もちろん実際も正しいはず。

 これが基本的な考え方ですのでぜひチャレンジしてみてください。これ以上細かく話し出すともうグダグダ間違いなしですけど、ここまでは間違ってないと思いますよ(笑

 個人的には、排泥鋳込みの場合に関しては、ちょうどいい範囲のうち、流動性の高い若干薄目のスラリーが好みな気がしています。

 水分量を少なくしてできるだけ濃い方がいい。という言い方もよく目にし聞きますが、成形できる限り濃きゃ濃い方がいいという風には考えない方がいいと感じています。
 むしろ、偏析したり分離したり成形体がラミネーションしたりしない、成形作業自体や工程管理に支障がない限り、あんまり濃いよりは薄めの方が扱い易いと思いますよ。

 濃いとチクソトロピー的性質(止まってると粘度が高くなり、速度がないと流動性が上がらない)が強く出過ぎて扱いにくくなるんですよ。とにかく作業に支障がない限り出来るだけニュートン流体に近い挙動を示すように調整したほうが扱い易いです。
 それでも釉薬なんかと比べるとかなり濃厚な感じなのでそういう言い方になってるんじゃないかな?

 参考にしてみてくださーい。




 では、ここからつくセラ的無駄話。
 この鋳込みの、均一に、方向性や粗密のばらつきがない、というのが鋳込みの強さですが、同時に弱点でもあると思っています。

 それは焼成歪みに現れるんですが、そうなるとロクロ成形との違いをラミネーション視点から比較解説しないといけなくなるので、もうだいぶ長いし別な機会に譲ります!

 でも、ここまで来るともう興味ある人は少ないかな?



 こんな細かい話をここまで読んでくれてありがとうございます。
 お礼に、このご時世、あんまり辛気臭いのは嫌だけど、気を抜くわけにもいかない、ということで、そんな今にぴったりの本(文庫本)を紹介します。 


 左がそれ、先月文庫版が出た『ホット・ゾーン』
 エボラをはじめとするフィロウイルスを調べたり封じ込めたりって話。ノンフィクションのドキュメンタリーです。もとは結構古い本なので今現在の科学的検証がどうなのか知りませんが、小説として読んでものすごく楽しい(とあえて言います)。お風呂で読んでてお湯の中に落っことしたの初めてですよ。ぶわぶわになっちゃった。

 右はとっくに読んだ本引っ張り出してきました。
 『ワールド・ウォー・Z』
 ゾンビパンデミックを生き延びた人や壊滅した町はどういういきさつだったのかってのをドキュメンタリー、ジャーナリズムの手法で描いたフィクション小説。作者のマックスブルックスはメルブルックスの息子さんなんだって!映画ファン必読!
 もちろん映画もヒットしましたし俺も好きですが、この小説版の方がハッキリ上です。
 世界中の各村、各町に取材をした体、という原作の一番いいところが、映画版ではなくなっちゃってます。ブラピが主演じゃゾンビに食われたりしないよな~!
 でも嘆きの壁をよじ登るゾンビの大群、とか、ブラピとゾンビのだるまさんが転んだ、とか、ペプシ最高!とか見どころは多いっすよ!(抜け作な部分も大変多いけど)

 小説として素晴らしいノンフィクション、ドキュメンタリーとして素晴らしいフィクション。どっちも有名な作品ですが、読んで無い方いたら是非!

 以上、普段らしさを出すために、無駄話を入れてみました。



 
 



  今週、なんでアホ部分が少ないかというとですね、
 大変実績ある陶芸家で、ヤキモノブログとしていろんな意味(作品や写真が素晴らしい、文章が簡潔で巧み、技法解説が惜しみなくダダ漏れ、最近連発しているシンゾーディスが痛快、社会人を全うしてるので常識人、等々)で頂点としか言いようのない、桃青窯三崎さん(リンクの必要なんかないですよね)に、この下品が三つ揃えを着たような駄文が読まれている、という穴があったら入りたいような事実が発覚しまして、挙句の果てには、うちの工場を覗いてみたいなどというお言葉をいただき、たとえリップサービスでも嬉しくて、真に受けてその日に備えて畳を備後表に取り換えようかと舞い上がっております。が、予算不足でしたし、格からも年齢からもこちらから伺うのが筋、是非ご都合を見計らって突撃したい!!

 御存じない方も少ないと思いますが、是非リンク先を訪ねてみてください。素晴らしいので私からは何も説明することはありません。あ、でも、何が何でもアベセーケン支持!!みたいな人はやめといたほうがいいですよ。

 そんなわけで三崎さんに読まれてもいいように自分としては大変上品な記事になりました。
まあ、普段からたとえ話がオタクすぎてわかりにくい、連体修飾節が長すぎて読みにくい、なんていうお叱りも多いんですけどね。
 今後も上品かどうかは、わかりません!

2020年6月5日金曜日

 縒り糸、シッピキの作り方 達人編

 今回は8割おふざけですので、あんまし真に受けないように!新作映画を劇場に見にいけれない期間が長かったので・・・

 なぜか、なぜか、ここ一か月ほど、かなり以前の、「糸の縒り方を紹介した記事」がやたら閲覧されています。ほんとになぜか毎日毎日、

 その記事、初心者用です。クリクリ捻じりに捻じれば糸に縒りを掛けられますよ。というメカニズムのみ紹介したようなもので、こんなこと言ってはこのご時世怒られますけど、糸を縒って二重にする程度のことをネットで調べなきゃ分かんないような人に向けたものなわけです(質問くれた人ごめんなさいね)、そんなん近所の年寄り捕まえて聞いた方が100倍速いよ!とまあそのぐらいです。
 

 で、超初心者用とはいえ一番縒りの調整も適切に掛けられるし、丁寧で間違いのないやりかたを紹介したんですが、たとえ、藁で止め縄結ったことないようなティーンエイジャーでも、ラジオやIPODのイヤホンすぐ縒れちゃうし、経験的に理屈は飲み込みやすいはず。
 で、そんな中、知り合いから、こんなかったるいやりかたしてるの?なんて小バカにされちゃいましてね。実際あのやりかたも素材によっては多く使いますが、普段俺好みの柔らか素材の場合はどうしてるか。
 

 普通はですね、皆さんご存知のように、そんなもんなにか錘になるようなものに片一方を結わえ付けてクルクルぶん回してから、こんがらがんないようにピンと張りつつ真ん中から折りかえせばいいんですよ。そう、もちろんこれが普通の縒り方。

 でも結構それもかったるいんですよね。
 つくばセラミックワークスの誇る秘密工作課「Q」機関が世界最速(未公認)のやりかたを紹介いたします。
 もう一度言いますよ、
 世界中のヤキモノ屋が切り糸に二重の縒りをかけているわけですが、俺が世界最速です!(未公認)
 
 

 問題は非常に簡単です。
 糸をものすごい勢いでクルクルできる「何か=高速糸縒りマシン」、を見つければいいわけですね。身の回りのもののうち、切り糸を安全に引っかけられる、最速の回転数を出せる「何か」、しかも、いかにも見かけボンクラ感のある感じだと最高ですよね。
 
 そんなわけで、「高速糸縒りマシン」をわが「Q」機関は開発し、長年使い続けております。最後までご覧いただけば分かるように、この「高速糸縒りマシン」は、ちょっとした手遊びにも最適でございます。

 
 死ぬほど暇な時で結構ですので、気がむいたらアホ動画をご覧ください。


 
 
 動画は糸の縒る方法のみに特化しています。不親切なのか単にとり忘れたのかは内緒ですが、端っこを何に結わえ付けるのかなんかそれぞれ自分で好きなの使ってください。俺はタイラップで作った輪っかに通しています。
 木製の棒なんかだと水に浮くので、無い無いと思ったら忘れたころ再製した土の中から氷漬けのキャプテンアメリカみたいに発掘されるんだよなあ~。みたいなことは減るでしょうね。
 土練しててなめし皮とかスポンジのキレッパシが出てくるとホント笑っちゃいますよね。ひどい時にはボロボロになっちゃってロクロするまで気が付かないこともありました。

いま思いついたんだけど、ミニ四駆のモーターの方が絶対速そうだなあ。手持ちの電動工具の中ではトリマーが最速なんだけどさすがにRPM20000は速過ぎて怖いし。
 


 

2020年6月4日木曜日

小さな蓋物 お客様接待コーナー

 業務連絡的なものでネタ切れを補ったりして。
 たまにやってるお客様対応を公開してるあれです。

 小さな小さな、というほどまでではありませんが小さな蓋物(すべて当社比)
 外径で48φほど(個体差あり)
 磁器素地はアルミナとジルコニアの(削りカス等)がたっぷり入ったとうぜん「オリジナル調合」(モノは言いようだよね、こういうの)
 釉薬は外側がごく少量の酸化銅で還元じゃないのに青っぽくなるウソ青磁(お客様へ:ウソ青磁です、本当の還元で鉄青の青磁ではありません。ご注意ください)、見込みは飴釉で、この容積で言ってもシャーないですけど食品安全性の高いものです。もちろんどっちも「オリジナル調合(笑)」です。
 

 今回うちとしては不思議な経緯でして、私はせっかく撮った写真のゴミ捨て場代わりにインスタにポロポロ投稿したりもしてるんですが、心底びっくりしたことに突然「これ買います!」みたいな大変奇特な方が現れたんですよね。まあ、残念というか安心というか知ってる方だったんですが(笑
 で、今作ってる中のあるのでそれ待って選んでくださいよ、という趣旨です。
 四つあるので選んでくださーい。何だよ、どれみても変わり映えしねーな、というのも写真のせい(ココ注意)でありますから、その場合はこっちで俺が好きなのを選んで送ります。

 一つ目 
 
見込みは全部一緒です



 二つ目
 

  
模様をゴテゴテにし過ぎて、盛り上がりすぎてる部分があります


 三つ目 




 4つめ



 



 なんでこんなんメールで直接勝手にやれよ!みたいな真似をこのHPを使ってやってるのかというと、私普段は大学や公立の研究所の研究室相手にファインセラミックスを受注生産しておりますが、一般陶磁器を所望する個人のお客様相手にも大変優しいユーザーフレンドリー(私が直接この目で見た馬のうちで最も美しさを感じた小柄な牝馬の名前ではない)作陶屋なんですよ、ということをこの不況の折にアピールしておこうという魂胆です。


 滅多に品物もアップしないままこっそりやってるハンドメイド通販サイトからご注文いただいたお客様(当然見知らぬ個人の方)に対しても、ほかの在庫がある場合だったり、作ってる最中や予定がある場合はその旨お伝えして選んでいただけるようにしています。その場合は、直接だったり、そのサイトのメッセージ等を通じてやり取りしてるんですが、こんなことしてるんですよ。数が多くて情報量がデカかったりする場合や、とても表に出す訳にはいかねーような場合はもちろん直接やり取りですけどね。当然ファインも。

 
 通販というのはもうどうしようもなく写真見た印象と記された寸法重量のプロフィールのみで買うしかないわけで、私のようにスマホのカメラで何の技術の持ち合わせもない写真ではそりゃ度胸いりますよね。アマゾンとか見てると自分が明らかに買い間違ってるのに激オコレビュー(めんつゆだと思ったらコーラでした、星ひとつ!)とかあってマジこわいし。

 すてき写真だとしても、悪いんじゃないけど俺の思ってたのと違うんだよなあって。もしかしたらそれはAVのいわゆるパケ写詐欺みたいに感じられる場合もあるかもよ(AVのパケ写である必要はないけど実感がね、ほら!特に男子!)

 また、私の場合は、貫入モノや天目や飴釉に白をかぶせてドロンと流すスタイルが多いので、こうなると個体差が激しくて、在庫何個!とか一概に言えないわけです。

 何しろ俺自身ヤキモノに限らず何を買うにもできれば手に取って選んで買いたいですよ。たとえば上州屋に行けばシマノの釣竿なんて同じにしか見えないもんでも同じ型の同じ長さ何本か振って選ばせてもらえるでしょ?野球のグラブだって同じものが三つあったら左手を突っ込んでポケットの位置がしっくりくるのを選びますよね。
 ヤキモノの場合、直接機能ってよりも見た目の問題が大きいとは思いますが、もしかしたら急須なんかは「試し注ぎ」なんてできないもんでしょうか?なんて思ってる方もきっといるはず。

 うちの一般陶器の製品なんて所詮雑器もいいところで「作家様(そんな言い方していただかなくても結構ですよ~)」の「作品」ではないわけで、ごくなんてことないヤキモノでもヤキモノはヤキモノ屋から買ってくださいよ!と、せめて無印やフランフランやニトリからユーザーを取り戻せたらヤキモノ屋の未来は幸せだろうなあ、という程度のものですが、それでも少しでもお店で選ぶ感覚に近づけないかな~と考えてる次第です。
 今のところとりあえずとはいえ店で触れない場合このやりかた自体は悪くないっポイ、と感じています。(お客が引きも切らないようなところは知りません)