2018年12月18日火曜日

熱電対について、とか、かも? 

 イノウエセイジさんのブログに興味深い熱電対の動画が上がっていました。

 と、言うわけで、俺も尻馬に乗って熱電対についての記事を上げることで人気発信者お二人のおこぼれにあずかれるんじゃないかという魂胆です。まあ、実は前から記事にしようと骨子を下書きしといたものを仕上げてアップするわけなんですがタイミング的に先を越されたよチクショウ!って感じ。

 ブログで紹介されてる橋本さんに関しては、二年ほど前に「俺が一方的に大ショックを受ける」というマイディザスターにあっていまして(リンクはその時の記事、その品の作者が実は橋本さんだったんです)、そのあとは見たくないけどつい気になる!気になるけど見たくない!状態でブログの発信をついつい見ちゃってはちょいちょい大ダメージを受ける。友達にハシモトって北海道の人知ってる?似てるね!とか言われて大ダメージを受ける。「こんなのでこういうの作ってくれないかなあ!」って写真見せられたのが橋本作品で大ダメージを受ける、しかも付き合いの関係で断れず(背に腹は代えられず?)バッタモンこさえて小遣い銭を稼ぐといった体たらく。嫌い嫌いと言いつつしっかり見てるというできそこないの少女漫画の登場キャラみたいな心理状態です。
 あ、もちろん橋本さんには1㎜の罪もありませんよ。非難するつもりも1㎜もないですよ、当たり前ですが。あー、でもウラミとネタミとソネミはあわせて500㎎ぐらいあるかも(笑
 
 とりあえずご本人から許可をいただいたので動画をリンクします。
札幌の橋本忍さんの熱電対動画
なんだよ本人までかっこいいじゃねえかよ・・・ 
 


安定の面白さ、おなじみ福岡のイノウエさん
 

 話は熱電対です。
 自分は実は陶芸用炉の熱電対はいじくったことないんで、実は保護管や絶縁管の材質に違いがあるのかもしれませんがR型ということでウチで使ってるような1500内外の高温用炉でも一緒ですので、「同じ」という前提で話を進めます。
 追記:のちに聞いたら保護管同じなわけないじゃーん。とのこと。まあ常用温度で1500℃と1300行くか行かないかですので、ハイアルミナとムライト系という違いがありました。保護管の持ちはどんな雰囲気で焼くか、にもかなり左右されます。やたら強還元連発だったりすると、酸化オンリーに比べて大分痛みが早いわけですね。言われてみりゃ当たり前ですね。傷みが早いのではないか?と思ってる方は保護管の耐火度やグレードを上げる選択肢もあるかもしれません。熱電対一式の価格に比べれば保護管+絶縁管でそこまで値段差ないですよ。

 もうあらかたお二方の動画で知っとくべき内容は語られてますので、いつものようにとくにそこまで知る必要ないくそウンチクとちょっとしたなにかを語れればそんでいいかなって感じでいきますね。お二人が言及されて無い部分を補足してみたりして「いやあ~ナイスカバー」的な自己満足に浸りたいと思います。

 実は先日パチーノの教室で熱電対を交換したって話を聞いてたんですよね。測れなくなったんで、簡単にまるっと一式取り替えたようです。そんなことあるのか!と驚いた次第で・・・。
 一式セットで売ってるっていうよく考えれば当たり前のことにも今気づいたような状態。自分はバラから組み立ててますし、そうするのが当たり前って環境に始めっからいたんで気にしてなかったです。
 
 まずは熱電対の本体!「これが熱電対」
これが「2万円以上する(時価)針金」ことR型熱電対だ!


 各0.5φの白金+白金ロジウム線。先端で溶接されています(右の矢印の部分)ここが測温部分になります。つまり、熱電対は正確にいうと「保護管内でこの先端部分がある部分の温度」がわかるようになってるわけです。まあ実際は問題ないですけど、保護管の材質や大きさ形状によっては計測温度にラグがどうしても発生してます。特に火入れの初期段階、炉内温度に保護管温度が追い付くまでのタイムラグはかなりあります。そのために多くの電気炉(内のサイリスタや温調機)にはソフトスタートといって「あれ?温度上がってないな?バンバン熱かけろ!」つって電気が流れすぎないような=まだぬるいからってヒーターが赤くなっちゃうような事態にならないための機能が設定されています。
 これが古かったりすると指定温度に達したかどうかだけでリレーが電流量ほぼほぼマックスでONOFFバチバチ切り替わるだけの昇温構造だったりしてヒーターは赤いしモワモワ熱い空気出てるのに温度計はまだロクスッポ動いてない!なんてこともあります。単に電流量の強弱とかナイフスイッチで切りかえるだけだったり。


 下の矢印は切れた部分。
 こんな状態になったら「中身だけ」取り替えます。切れた線を下取りしてもらって差額で買います(価格は時価)。なんでこんな状態のまま持ってるのかっていうと「カミサンに追い出されたときに当面の資金にするため」という冗談を言うためですね。
 この熱電対、言われてみれば当たり前なんですけど地価のやたら高いところでセレブ相手に商売してる「○○貴金属」みたいな、むしろ女性の方がなじみのあるような会社だったり、各中小個人の宝飾屋に地金を卸してるような会社が作ってます。

 この白金白金ロジウム線を絶縁管といわれる細いパイプに通します。先端(測温したいたい場所)以外が接触することを防ぐわけですね。
 これが絶縁管
通称「豚ッ鼻」
これのいいところは二本まとめて通せるのですっきりしてる、捻じれたりしない(しずらい)ってところですね。ただし溶けたりぼろけて線とくっ付いちゃったりした場合に壊しにくい気がして自分は…

通称『一つ穴』それぞれ孔径0.4φ(0.3φ線用)、0.8φ(0.5φ線用)、2φです

 単線用のこっちにしてます。こっちなら溶け着いた場合にペンチでこじってバラバラにするのがたやすい。
 これは通常はアルミナ(あるいはアルミナシリケート。ムライト系)製で、セラミック(やきもの)の持つ「耐熱性が高い」、「絶縁性に優れている」という二つの特性を利用した耐火物ですね。
 
 橋本さんの動画で、「四節棍みたいになってるなあ」みたいなことおっしゃってましたが(言ってない)これは規格が100㎜だからですね。多分世界的に。日本のメーカーもドイツのも100㎜です。(200もあるけど内外径同じで3倍近い価格です)
 製造方法は押し出し成型といって、土練器の先端に口金付けて丸棒だけでなくてパイプとかチャンネル、アングルを作るのと一緒です。堅~く絞りだす紐作り器です。
 アルミナには可塑性がないので可塑剤を添加して押し出せるように調整した坏土を土練器から絞り出して作ります。

 この細さで300も400も作れる技術はないことはないんでしょうが(実用見たことはない)、折れる、焼くも乾かすも面倒で高くつくでいいことないです。材質にもよりますが100Lなら1本何十円からあります。
 ちなみに、相談があるって言われて車で30分かけて打ち合わせに行ったら「このカタログのこれが40円だから一本売ってくれ」って言われたことがあります。もちろんもうそことは一切付き合いありませんが。



 でこれが保護管という、やはりこれもアルミナ製の片封じ管に入ります。形としてはうちの読者おなじみの?タンマン管がやたらと長い、みたいなものです。(るつぼと保護管では作り方が違うのでこれをるつぼに!とかは考えない方がいいみたいですよ)
 保護管は先端もう透き通ってきちゃってそろそろ交換ですね。3年に一回ぐらい保護管を交換してます。ソケットは独立してから同じもの。絶縁管の交換は開けたときにむき出しになるような割れ方してなければそのままでOKかな?下手にいじると切っちゃいそうで怖い。

 保護管も絶縁管もアルミナ純度99.7とか6の高耐火度のもの使ってるんですが、それでも1500℃毎週焚くと2年でボロボロになってきます。

保護管はうちでは10φのを使ってます。陶芸炉は17φが多いのかな?お二人とも太いですよね。うらやましいね。

 先端がぴったり合う保護管に絶縁した本体線を入れたらソケットに両端を通して保護管とソケットを組み合わせます。
 スリーブとソケットはねじ込み式と押しネジ併用が多いと思います。スリーブと保護管は接着、というより現場では石膏かアルミナセメントを隙間に突っ込んで固定します。 

 ソケット部、つまり端子部はこんな感じ
 オレンジの矢印のように両側に一本ずつ線を通して押しネジ(向こう側で見ずらいけど)で固定。この時、極性プラスとマイナスがあることを確認します。ケースにもプラスマイナスと刻んでありますし、保障導線固定ネジも色が変わっています(左は黒っぽいでしょ?)、プラス側は熱電対線の先端にも赤いしるしが付いています(見えずらいけど白い矢印のところ)。補償導線も被覆が赤白に分かれていてプラスマイナスがありますので合わせる(熱電対と同じようにR型の場合確か、銅+銅ニッケルと芯材が違う)。

 さすが理系の研究室などでは電気オタクの一人や二人いるもので自分たちでちゃっちゃと繋ぐわ直すわやっちゃうものですが、熱電対のトラブルの相談で行ってみたら極性逆につないでるケースが過去にありました。付け直すときに間違っちゃったみたい。

 すぐ直せるトラブルで多いのは、保障導線のネジがゆるんでるってのも多いようです。滅多に動かさなくてもなぜか緩むのでたまにチェックしてみよう!頻繁に動かす人はなおさらですよ。
 
こんな表示(温調機は理化工業製)になったら外れてるか切れてるかですね。

 まあ大体、必要ない知識はこのぐらいですかね~。
 あんまり細かいこと書くと材料屋さんとか窯屋さんから恨まれちゃいそうなんで切り上げます(笑

 
 またお二人が言われていた先端の位置をどのぐらいにするか、に関してですが、5センチも入っていれば足りる用ですね(ただし、熱電対の本体線の先端が)。
 実作業上問題なければ構わないんですが(例えば素焼きなんか実際のところそこまで関係ないよね)、5センチの時と10センチの時、あるいは炉内中央部まで差し込んだ時でかなり炉内の温度が違います。

 うちの炉でいうと中心部と5センチ程度出してる通常バージョンでは、1250℃MAXで焼成した場合、コーンで1番は違います(現在温度によっても分布は変わる)。もちろん棚の組み方でも大きく変わりますが、温度分布にはどうしてもバラつきがあるので、もし、熱電対の差し込み加減で焼成のバラつきや何かを感じた場合は、炉内温度分布を拾い出すことをお勧めします。
 例えば5センチ出してる状況で、もう5センチ押し込んでみる。とかが可能ならばそれでもいいんですが、焼成中は品物にぶつかってなかなかそうもいかないですけどね。
 熱電対二本挿し、三本挿しなんて言う窯もあります。これは孔開けれてもう一本熱電対挿せば可能ですが・・・
 
 と、言うわけで、「温度分布」をみるアイテムは温度計以外にもあります。 
  リファサーモ。窯の隙間のあっちこっちに置いといて、焼成後、寸法を測ってその収縮の差で調べるもの。コーンより正確です。焼成中に覗き込んでもさっぱりわからないので、コーンと違って「現在の温度(熱量)が何となくわかる」ではなくて実際上がった温度と温度分布をみる専用かと。温度帯によって何種類もあります(俺のはH型)。
 コーンとちがって及原さん(俺にオシャクリパクられた先輩)が若いころにやったという、早く帰りたいときに火見孔から棒突っ込んで「やわらかくなってるコーンを無理やり倒す」などという暴挙をする余地を与えてくれません。
 興味のある方はこちらのホームページで(コーンの倒し方じゃ無くてリファサーモね)


できればマイクロメーターとかデジノギでキッチリ測る!
 赤と黄色はオルトンコーン

話ついでにオルトンコーンも。
ゼーゲルコーンと使い方は一緒です。いかにもアメリカンな雑な作りで価格も安いです。しかも「何度の時何時間キープの熱量」みたいな指針が二種類あるので指標に使いやすく、俺は普通の陶磁器作るならゼーゲルコーンより好きです。
 台作らなくていいので楽だし、とはいっても棚板とくっつかないように注意!

 長くなってきたのでこんなところかな?

ゼーゲルコーン探してて出てきた羊羹
賞味期限がやばい!
 


 とりあえず、あれ?温度おかしいかも?と思ったら、端子の緩みを確認してみてください。






 

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