2019年5月28日火曜日

かなり収縮します!ほとんどしません!緻密と多孔

 かなり焼成収縮の大きい材料を扱ってる最中です。
どのぐらいかというと…
左が生体(焼成前の乾燥体)右が焼成後のるつぼです
材質は都合によりナイショ

 ヤキモノ経験者でしたらずいぶん縮むもんだね、こりゃ!と感じていただけるんではないでしょうか。まっすぐ焼き上がってるんだからとりあえず褒めてください!(当たり前だろ!)
 通常ヤキモノは作ってから焼き上げるまでに収縮します。収縮する段階は工程中大きく二か所ありまして、一つ目は成形後の乾燥中、二つ目が本焼成時の最高温度付近。

左から原型、成形直後、一日経ったもの、破けたやつ
見にくいけどかなり収縮してますよ

左から成形直後、素焼き直後、本焼き済み
乾燥体と素焼き体は同じ大きさです


 乾燥時になぜ収縮するかは自由水分の内、収縮水(という言い方があるんですって)分が蒸発するにしたがって多分表面張力で粒子同士が引き寄せ合うことによっておこります。成形体内の水分には幾種類かありまして、
 1・組成に化合物として取り込まれている水分、
 2・粒子表面をきっちり覆って吸着している水分、
 3・その粒子同士の間に密に存在してる水分、
 4・さらに余剰な水分(余剰って言っても成形するのに必要なんですよ!)
 といったあたりのはず。
 このうち1と2は炉内に入ってある程度以上の温度、熱量を喰らわないとすっ飛んで行きません(この段階を「アブリ」と理解しています、俺は)。3と4が乾燥工程で蒸発する分のようです。3の分で収縮し、4の分が空隙になるといった理解でよさそうなんですが、あんまり詳しく突っ込まないでくださいね。こっちもアントマンじゃねえんだから直接見たことはないですからね。

 で、細かいコマゴマをすっ飛ばして進めますが、その空隙が埋まりだすのが焼成の最高温度付近(適正温度で焼成していれば)。粒子と粒子の接触面で熔化(言っちゃえばガラス化)する反応が起こり=粒界が形成されて、液相というんですが、その間の部分に粘性を持ったほぼほぼ液体化が起こります。でそのほぼほぼ液体の表面張力やらお互いもっと反応しようと引っ付きあうとかラブリーな感じの何やらかんやらでぐっと結果的に空隙が埋まる=引き付けあって収縮する、といった理解でよろしいかと。これがまあ焼き締りといわれてるものの正体の一つじゃないかな。
 気孔がほぼほぼなくなるまで焼き上げたものが磁器、そうでない=気孔がまだ残ってる状態なのが(とりあえず代表して)陶器、といえるはず。

 ですから陶器ももっとぐっと温度を上げる、キープをうんと続ける等々で理屈の上では磁器化(=気孔率ほぼほぼゼロ化)させることが可能です。
 が、おそらく多くの場合陶器(状態として炻器以下ですよ)は、いろいろ不純物が多く結果液相の粘度が低くサラサラ気味のために、気孔が埋まるかもしれんが同時にヘタったりアブクを吹いたりしちゃうことが多いと考えられそう(経験あるでしょ?)。この熔化、緻密化が始まる~ヘタル温度帯(熱量でイイよ)の高い低いがまあ一般的に耐火度とか、場合によっては適正焼成温度帯と言われてる性質だと思います。
 緻密化(高強度化)しつつもなかなかヘタラなければ焼成幅が広い!と言えるし、逆に熔化したが早いがとっとと腰砕け、なんて場合は温度幅にシビアな原料と言えます。
 陶器は焼き締め切らないことで適正な形状と強度を得ている、と言い方ができるかもですね。磁器は熔化が進んでもなかなかへたりにくいので器たりえている、と。まあいろいろ個々事情や都合はあるんだろうけど大まかにこうで合ってるはずだといっておきます。

 ヤキモノは焼成すると収縮する、というのは誰でも知ってることかもしれませんが、実はほとんど収縮しないものもあります。
 多孔質耐火物といわれるものの中に多いです。

 たとえばよく作るこれ
多孔質のアルミナるつぼ!
 
 アルミナに限らずうちで作る多孔質耐火物の定番調合ほとんどが(もちろん全部じゃない)ほぼほぼ収縮しません。場合によっては成形直後の大きさのまま焼き上がります。
 これは大きな、水が蒸発しようが(そもそも成形時の水分量も非常に少ないことが多い)焼成温度で焼結が始まろうがもびくともしないように粗い粒子サイズが密になるよう調合されているからで、簡単に言っちゃえば粗粒が突っ張ってる!という状態だと理解しています。お城の石垣みたいな感じ(多分)。これは反りに対してもかなり強い場合が多いです。
 もちろん粒界では焼結が十分に起こって「焼き上がって」います。これを死ぬほど使ったりうんと温度を上げたりすると、気孔を保ったままより緻密になっていきます(さすがに気が付くと多少やっぱり収縮してます!)
 
 なんてことを知っておくと
 1、教室で新人の若手女子に尊敬されるかも?
 2、実際モノに合わせて調合をいじくる際にも役に立つかも?
 3、ベテランおやじをノーガキだけで粉砕できるかも?
 腕前もないのにあんまりやると嫌われるので注意!まあ以前からの読者の皆さんはすでに同期のナタリーを攻略済みだと思いますが…

 そしてなにより。
 4・耐火物高いな!って言われなくなるかも?
 特注のカスタムなんだから理解してくださいよ!って感じかな(笑

 ウエーい!ヤキモノ屋って凄いね!ネ!
 だれか言ってください!


 昨日は暑さに脳がやられたのか(いや、脳は慢性的に患ってんですけど)ヘンテコ記事を上げてしまって何屋だかわかんなくなりそうだったので軌道修正して少しは利口そうな記事を書いてみました!

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